ラッキーバンク・インベストメントに対する行政処分勧告


昨日、証券取引等監視委員会は、ラッキーバンク・インベストメントが法令違反を行ったとして、同社に対し、行政処分を行うように、金融庁に勧告しました。

同社は、ソーシャルレンディングを行う二種業者(金商業者)であり、貸金業者を兼業していますが、ソーシャルレンディングを行う二種業者は、昨年来、立て続けに行政処分を受けており、うち1社は、金商法に基づき、登録取消し処分という、金商法上最も重い行政処分を受けています。

証券取引等監視委員会の公表によると、同社が行った法令違反は次の2点です。

1 同社は、同社のサイトで、貸付先である不動産会社の審査を慎重に行っていると宣伝していたが、実際には、審査が不十分であった。このことは、投資家に対する、誤解を生ぜしめるべき表示(金商法違反)である

2 同社は、同社のサイトで、貸付金の担保としている不動産の評価額を掲載しているが、当該評価額は、正式な評価を行ったものではなく、対外的に公表できないものだった。このことは、投資家に対する、誤解を生ぜしめるべき表示(金商法違反)である。

2の指摘については詳細がわかりませんが、おそらく、不動産の評価額が、鑑定業者が評価した価格でなく、社内的に算出した価格だったという指摘ではないかと思われます。

一般に、「ソーシャルレンディング」とは、クラウドファンディングの一形態で、投資家(個人投資家)から資金を預かる二種業者(貸金業者)が、最終的に、不動産会社などの事業者に資金を貸し付ける仕組みです。

お金の流れはこうです。

個人投資家が二種業者(貸金業者)に金銭を預ける → 二種業者(貸金業者)が投資家から預かった金銭を事業者の資産を担保に事業者に貸し付ける → 事業者が事業を行い二種業者(貸金業者)に元利金を返済する

個人投資家と二種業者(貸金業者)の関係は、二種業者を営業者、個人投資家を匿名組合員とする匿名組合契約の関係です。匿名組合契約で集めた資金は、営業者の財務諸表上、預り金となることから、二種業者(貸金業者)は、個人投資家から預かった資金を不動産会社に貸し付けることになります。

したがって、ソーシャルレンディングを行う二種業者(貸金業者)は、個人投資家に対し、受託者責任を負います。

「受託者責任」とは、投資家から金銭を預かる者が投資家に対して負う責任で、具体的には、投資家に対する忠実義務と善管注意義務を指します。

忠実義務に違反する行為とは、例えば、投資家の利益よりも自社の利益や自社の関連会社の利益を優先する行為、善管注意義務に違反する行為とは、例えば、受託者責任を負う者として当然に期待される程度の高度な貸付け審査を行わない行為を指します。

ソーシャルレンディングは、受託者責任を負う者が貸付け事業を行う仕組みですが、受託者責任を負う者が貸付け事業を行う仕組みは、ソーシャルレンディングの他には、銀行の融資以外に思いつきません。

銀行融資のお金の流れは以下の通りで、ソーシャルレンディングと同じです。

預金者が銀行に預金という形で金銭を預ける → 銀行が預金者から預かった金銭を事業者の資産を担保に事業者に貸し付ける → 事業者が事業を行い銀行に元利金を返済する

以上から、ソーシャルレンディングは銀行融資と同じ仕組みであることがわかります。したがって、ソーシャルレンディングを行う二種業者(貸金業者)は、受託者責任を負うことから、不動産会社などの事業者に対する貸付けに際し、銀行の融資(与信)審査部門と同等の高度な与信審査体制と与信審査能力を備えることが求められます。

一般に、貸金業者の審査(基準)は銀行よりも緩いため金利が高いわけですが、受託者責任を負う貸金業者は、受託者責任があるがゆえに、一般の貸金業者とは異なり、銀行の与信審査と同等の高度な与信審査を行うことが求められるところ、同社の与信審査は、銀行の与信審査と同等のものではなかったようですから、行政処分勧告の対象になるのは当然かもしれません。

「金融業者の貸付業務のための社債の発行等に関する法律」という法律があります。

この法律は、貸金業者が、貸付金の原資として社債を発行して資金調達をすることを原則として禁止する法律です。

貸金業者は、本来、銀行借り入れを唯一の資金調達手段とするため、受託者責任を負いません。貸金業者は、受託者責任を負うことが想定されていないため、同法において貸金業者は、原則として投資家から資金を集めることが禁止されているのです。

以上からわかるように、ソーシャルレンディングは、法律で受託者責任を負うことが想定されていない貸金業者が、受託者責任を負って貸し付け事業を行う、法律上、例外的な仕組みです。

なお、ソーシャルレンディングを行うために、二種業者となろうとするものは、金融庁(財務局)の審査を受けなければなりませんが、ソーシャルレンディングを行っている二種業者は、金融庁(財務局)の審査を通っていますので、ソーシャルレンディング自体が、法律上、問題なわけではありません。

ソーシャルレンディングを行う二種業者(貸金業者)は、法律が想定していなかった受託者責任を負っているのですから、貸付けを実行する際には、同じく受託者責任を負って貸し付け事業を行う銀行の与信審査部門と同等の高度な与信審査体制を整備し、与信審査を行うことが期待されます。

したがって、ソーシャルレンディングを行う二種業者(貸金業者)は、例えば、銀行の与信審査経験者などを社内に配置することが求められると考えます。

ソーシャルレンディングに投資しようとする人は、ソーシャルレンディングを行う二種業者(貸金業者)が、銀行の与信経験者を採用するなどの措置を講じているかどうかを確認してから投資をすることが、自衛手段の一つになると考えます。



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ブロックチェーンラボ(Blockchain Laboratory Ltd.)事件


2018年2月13日、金融庁は、マカオに本拠地を置くブロックチェーンラボ(Blockchain Laboratory Ltd.)が、資金決済法に基づく登録を受けずに、国内の利用者を相手に仮想通貨交換業(仮想通貨の売買の媒介)を行っていたことについて同社に警告を発すると同時に、金商法に基づく登録を受けずに、国内の投資家者からICO(Initial Coin Offering)で金銭を調達したことについて同社に警告を発しました。

この警告を理解するためには、資金決済法の規定と金商法の規定を理解する必要があります。

まず、資金決済法違反について。

資金決済法は、仮想通貨交換業を行う者に対し、資金決済法に基づき金融庁長官の登録を受けることを義務付けています。

ここで、仮想通貨交換業とは、仮想通貨の売買(仮想通貨と金銭の交換)や売買の媒介、仮想通貨と他の仮想通貨との交換や交換の媒介を行う行為を意味します。

仮想通貨交換業を行う者のことを「仮想通貨交換業者」と呼びますが、仮想通貨交換業者は、資金決済法に基づき登録を受けなければならないところ、同社は、仮想通貨交換業者としての登録を受けずに、仮想通貨の売買の媒介を行っていたことから、警告を受けたものです。

なお、報道で、仮想通貨の売買を行うところを「仮想通貨取引所」と言っているのは、この仮想通貨交換業者のことで、仮想通貨の売買等を行う者については、正しくは、仮想通貨交換業者と呼ぶべきところ、マスコミは、誤解から、仮想通貨取引所と呼んでいます。

事件について金融庁が公表している情報が少なく、同社のどの行為が仮想通貨交換業に該当したのかはっきりしませんが、同社は、国内の利用者を相手に、仮想通貨の売買の媒介、つまり、国内の利用者が仮想通貨を金銭で買い付ける(売買する)行為の媒介を行っていたということです。

ここでも、報道の誤解が目立ちますが、仮想通貨を売買する者は、仮想通貨の「利用者」であって、「投資家」ではありません。資金決済法は、JR東日本のスイカのような決済手段を規制する法律であり、スイカの利用者は(当然のことながら)「利用者」であるように、仮想通貨の売買を行う者も「利用者」です。

別の言い方をすると、日本の現行法は、仮想通貨に関しては、利用者を想定しているのであって、仮想通貨の売買で利ザヤを稼ぐ投資家の存在を想定しないということです。この結果、仮想通貨交換業を規制する資金決済法は、仮想通貨の利用者を保護する法律になってはいますが、仮想通貨の投資家を保護する法律になっていない(仮想通貨の投資家を保護する法律は、現在、日本に存在しない)点に注意が必要です。

次に、金商法違反について。

金商法は、仮想通貨の場合と異なり、「投資家」を保護する法律ですが、投資家から金銭を集める行為を規制し、投資家から金銭を集めて事業を行う者に対し、金商法に基づき、金融庁長官の登録を受けることを義務付けています。

投資家から金銭を集める行為は「自己募集」と呼ばれる行為で、自己募集を行う者は、金商法に基づき「第二種金融商品取引業」(二種業務)に関して登録を受けて、第二種金融商品取引業者(二種業者)にならなければなりません。

また、自ら金銭を集めるのではなく、投資家から金銭を集める者のために、代わりに、投資家を集める行為は、「募集の取扱い」又は「私募の取扱い」と呼ばれる行為で、このような行為は、やはり、二種業務であって、二種業者として登録を受けている者でなければ合法的に行うことができません。

投資家から金銭を集める行為のうち、大衆から広く金銭を集める行為は、特に、「クラウドファンディング」と呼ばれます。

ICOのうち、投資家から金銭を集めてトークンを発行する行為は、仕組みがクラウドファンディングであることから、金商法の適用を受け、二種業者でなければ合法的に行うことができません。

金融庁の警告の内容と報道によれば、同社は、ICOで国内の投資家からドルを集めていたということですから、同社の行為はクラウドファンディングであり、同社は二種業者でないことから、金融庁が警告を発したわけです。

最後に、ICOは、一律、二種業務であるかどうかについて触れておきます。

金商法は、投資家から「金銭」を集め、事業を行い金銭を増やして投資家に還元(配当)する行為を二種業務と定めています。

したがって、金銭以外のモノを集める行為は二種業務ではなく、また、投資家から金銭を集めただけで、集めた金銭を増やして投資家に還元(配当)しないのであれば、投資家から金銭を集めても、二種業務ではありません。

事件について金融庁が公表している情報が少なく、正確なとことはわかりませんが、同社の場合、投資家からドル(金銭)を集め、ドルを仮想通貨で運用して投資家に還元(配当)する行為を行っていたことから、同社が行ったICOは、二種業務と判断されたようです。

一方、ICOで、金銭ではなく仮想通貨を集める行為は、「金銭」を集めていないので、金商法の文言上は、二種業務ではありません。ただし、2017年10月27日に、金融庁は、ICOで、金銭相当の仮想通貨を集める行為も、二種業務であるという趣旨のコメントを公表しています。

資金決済法に規定する「仮想通貨」とは、金銭(法定通貨)と交換できるモノと、金銭と交換できる仮想通貨と交換できるモノです。したがって、資金決済法が想定する仮想通貨は、いずれも、金銭相当と認められる可能性があります。

以上から、ICOで投資家から仮想通貨を集める者やICOを行う者に代わって投資家を集める者は、二種業者として登録を受けることを検討すべきだと思います。

なお、ICOを行う者(資金調達者)が、投資家を集める行為を自ら行わず、投資家を集める行為を二種業者に100%委託している場合、資金調達者の行為は、二種業務ではありません。ですから、ICOを行う者は、二種業者を探して、二種業者に投資家を集める行為を100%委託すれば、自らは二種業者として登録を受けることなく、資金を調達することが可能です。

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コインチェック事件と金商法


2月5日のメールマガジンからの抜粋です。


コインチェック事件が、金商法の理解を深める良い材料になっていますので、今回は、コインチェック事件を取り上げます。

仮想通貨交換業者として登録申請中であるコインチェックを起点とした仮想通貨の流出事件を契機として、仮想通貨の代名詞のようになっているビットコインの価格が急落しています。

昨年12月に1BTC200万円以上の最高値を付けたビットコインですが、今日現在、80万円台と2か月で60%下落しています。

事件を踏まえ金融庁は同社に対し業務改善命令を出すとともに、オンサイトの検査を実施したようですし、取引参加者が多いビットコインの急落で大損を被った投資家もいるかもしれません。

仮想通貨は資金決済法の規制を受け、仮想通貨交換業者(報道では仮想通貨取引所と呼ばれていますが、非公式・不正確な表現)は登録制となり、一種業者並みの内部管理体制の整備が求められています。

仮想通貨の取引を行う個人投資家の保護を考えた措置でしょうが、有価証券の売買と異なり、仮想通貨の売買に関しては、投資家を保護する必要がないと考えます。

有価証券の売買に参加する投資家を保護するために、金商法によって有価証券の売買が規制され、売買の仲介者である金商業者が厳しい規制を受けるのはなぜでしょうか。

投資家を保護しないと取引参加者がいなくなり、資金需要者が資金を調達することができなくなる結果、日本経済が破綻するからです。金商法第一条に規定されている通り、金商法は、国民経済の健全な発展に必要不可欠な法律であり、有価証券の売買に関しては、投資家保護が必要なのです。

一方、仮想通貨の売買は、投資家が保護されない結果、投資家がゼロとなっても、困るのは仲介業で手数料を稼ぐ仮想通貨交換業者だけです。仮想通貨交換業に関する法律は、仮想通貨交換業者保護法でしかありません。

法定通貨の場合と異なり、仮想通貨の発行量は決まっていること、貴金属の場合と異なり、法定通貨の代替となる決済手段ではないことから、理屈では仮想通貨の価値が上がることはありません。

したがって、仮想通貨を買い付けて値を上げる行為は、以前に買い付けた者にお金を上げている行為に等しいわけですから、仮想通貨市場は本来成り立たないはずです。それでも市場が成り立っている唯一の原因は消費者の人気です。人気投票の参加者を保護する法律を作る必要性を感じません。

もっとも、仮想通貨取引を規制する資金決済法では、仮想通貨の投資家は保護されません。資金決済法は、JR東日本のスイカなど、決済手段の「利用者」を保護する法律だからです。スイカに投資する人が想定されないように、資金決済法では、仮装通貨に投資する人が存在することを想定していないのです。(この点についても、報道は不正確)

仮想通貨で資金調達をする仕組みを、ICO(Initial Coin Offering)といいます。

有価証券の発行で企業が資金調達を行う行為であるIPO(Initial Public Offering)の条件は、株価が上がると企業の資金調達は容易になります。発行市場が流通市場と繋がっているからです。

仮想通貨は違います。ICOの場合、仮想通貨が値上がりしても発行条件に影響しません。発行市場と流通市場が遮断されているからです。

仮想通貨の売買によって資金調達が容易になる企業はないのですですから、仮想通貨の売買に関し、投資家を保護するために特別な法律を設ける必要はなく、消費者保護法で対処すればよいのです。

なお、ICOを取り締まる法律は、今日現在、日本に存在しません。ICOに関しては、投資家を特別に保護する必要があり、ICOに関する特別な規制が存在しないことは問題です。

ちなみに、規制が存在しないことも一因で、ICOで投資家を欺く者が後を絶たないようで、金融庁は、ICOに対し、金商法を適用して規制しようと試みています。

なぜ、ここで、金商法が出てくるかというと、ICOは、クラウドファンディングだからです。ですから、金融庁の試みはわかりますが、であれば、金商法第2条第2項柱書を改正し(この改正がICO規制の肝)、ICOに関しても、有価証券取引同様、金商法を正面から適用すればよいと考えます。



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2018年のコンプライアンス

2018年1月4日のメールマガジンの抜粋です。



大発会に日経平均株価が大幅に上昇しました。調べたことはありませんが、私の記憶では、大発会に大幅上昇すると1年を通じて上昇し続ける傾向があります。

株価は上昇し、不動産の価格は高値を維持し、賃金は上昇しと、平成に入り初めて本格的な好景気に入ったという印象があります。

好景気には、いずれの会社も営業に注力し、顧客層を広げ、収益の最大化を目指すのが常道ですが、昭和の好景気と平成の好景気との大きな違いは、経済活動において「コンプライアンス」がキーワードになっている点です。

私が、証券取引法のコンプライアンスを初めて担当したのは今から26年前ですが、当時、「会社で何を担当しているのですか」と尋ねられたとき、「コンプライアンです」と回答すると、全員から「コンプライアンスって何?」という反応をされました。

現在では、就活中の大学生が「会社に入ったらコンプライアンスを担当したい」という時代なので、コンプライアンスが社会に根付いていることがわかります。

コンプライアンスとは、一般に、法令等遵守活動を指しますが、従来、金融行政においてコンプライアンスといえば、行政当局の期待を満足させる活動でした。

1998年に当時の橋本内閣が行った日本版金融ビッグバンの中で、金融システム改革法が作られ、現在の金商法の原型ができたわけですが、このときまでの金融行政は通達行政であり、大蔵省内の上意下達文章である通達を遵守することが、現在でいう金商業者に求められたコンプライアンスでした。

実際、1997年まで、コンプライアンス担当者である私の仕事は、通達を解釈し、社内に通達を浸透させることでした。

1998年以降、通達行政は廃止され、代わりに金融庁(当時は金融監督庁)が「ガイドライン」を発信し、このガイドラインが現在の「監督指針」になり、金商業者のコンプライアンスといえば、金融庁の監督指針と証券取引等監視委員会の「検査マニュアル」を遵守し、当局による法令、監督指針、検査マニュアルの解釈に従うことを意味するようになりました。

実際、1998年以降の私の仕事は、当局の意向を正確に読み解き、当局の意向を社内に反映させることでした。

あれから、ちょうど20年となる2018年、金商業者のコンプライアンスは、大きく変容し、金融庁が推進する「顧客本位」が、コンプライアンスのキーワードになっています。

ですから、2018年以降、金商業者のコンプライアンス担当者にとって最も重要な仕事は、金商業者の業務運営が顧客本位になっているかどうかをモニタリングすることです。

顧客本位というと、必ず、「当社は、投資家に迷惑をかけていないから大丈夫」といい始める金商業者が現れます。特に、不動産系の金商業者の中には、この発想をする人が多いです。

まず、顧客本位の「顧客」とは、取引先ばかりでなく、金商業者の業務で影響を受ける者一般のことです。

例えば、ファンドであれば、ファンドの投資家ばかりでなく、投資家が機関投資家であれば、投資家に金銭を拠出している者も顧客です。

また、忘れられがちですが、実際には投資しなかったけれども、投資を検討した者も顧客です。金商法が取引規制ではなく、勧誘規制であることから、当然です。

さらに、顧客本位の業務運営といったとき、顧客の利益を重視することが大切ですが、ここで「利益」とは、金銭的な利益のみを指すのではなく(顧客が儲かれば良いのではなく)、顧客に過大なリスクを取らせない体制を構築するとか、金商業者や金商業者のグループ会社と顧客との間の利益相反を起こさない体制を構築するとか、そういった顧客の「潜在的な不利益」を回避する金商業者の行動から導き出される顧客の総利益のことです。

このことを短文で表現したものが、「顧客本位の業務運営に関する原則」です。

以上から、2018年の金商業者には、好景気に乗って営業に注力しつつ、潜在的な取引相手を含めた顧客の真の利益とは何かを追求し、体制整備を進めるなど、それにかなうコンプライアンス活動を実行することが求められ、当局のモニタリングにおいても、この点が重視されると考えます。

2018年以降、金商業者のコンプライアンス活動の重点が、従来の当局検査や内部監査のように、個々の法令違反行為を発見する活動ではなく、顧客本位に反する行為・状態を起こさない体制を整備する活動に移ることに注意が必要です。



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コンプライアンス・リスク管理


11月20日のメールマガジンからの抜粋です。



金融庁が「平成29事務年度金融行政方針」で「コンプライアンス・リスク管理」について言及しています。

コンプライアンス・リスク管理とは何でしょうか。

「リスク」は「危険」と訳されることが多いですが、「不測の事態が生じる可能性」のことです。

コンプライアンス・リスクというと、「検査で指摘されるリスク」と誤解する人がいますが、コンプライアンス・リスク管理とは、「コンプライアンス上の問題が発生してしまったときに生じ得る不測の事態を想定し、予め対応策を講じる活動」のことです。

従来のコンプライアンスとコンプライアンス・リスク管理の違いについてお話しするために、レピュテーション・リスクを例に取り上げると、従来のレピュテーション・リスク管理は、企業の評判が傷つくことがないようにするための事前法務活動の一つでしたが、コンプライアンス・リスク管理の文脈でレピュテーション・リスク管理といえば、レピュテーション・リスクが顕在化したときに生じ得る不測の事態を想定し、予め対応策を講じておくリスク管理活動を指します。

一般に、リスクとリターンはトレードオフの関係にあり、企業活動においては、リスクと収益がトレードオフの関係にあります。リスクを冒さなければ収益を生まないということです。

私は、現役のコンプライアンス部長時代から、コンプライアンス・リスク管理を「将棋」に例えて説明しています。将棋で最も強い形は、何もしない、最初のコマを置いた形です。ここからコマを進め、王将・玉将が相手にとられるリスクにさらされる中で勝敗が決まるのが将棋です。

企業活動も同じで、企業で最もコンプライアンス・リスクに強い形は設立したときの形、何もしないときです。ここから事業を行い、企業がコンプライアンス・リスクにさらされる中で収益を上げるのが企業活動です。

したがって、企業がコンプライアンス・リスクにさらされるのは当然であり、コンプライアンス・リスクが顕在化したときに企業が受けるであろうダメージを企業の「損失額」という数字で計測し、計測された損失額を上回る収益が期待できる場合には、リスクを冒すというのも、コンプライアンス・リスク管理の一つの考え方です。

こういうと、「ということは、コンプライアンス・リスク管理って、儲かるなら、法令違反をしてもいいってことか」と言い出す人が現れそうです。

ここでしている話は、法令や諸規則を遵守することは当然の前提であり、コンプライアンス・リスク管理を将棋に例えたように、コンプライアンスを強調するあまり、完全防御をすると、企業活動が必要以上に制約されてしまい、企業がまったく収益を生まずに潰れてしまうおそれがあるという話です。

コンプライアンス担当者が、何でもかんでも、OKを出してしまうのは大問題ですが、コンプライアンスを完璧にしたいがために、役職員の行動を必要以上に制限したり、役職員を委縮させてしまったりしては、企業の損失額(逸失利益)が多き過ぎる場合があります。

コンプライアンス担当者は、「コンプライアンス・リスクと企業収益は、トレードオフの関係にある」という視点を失わないことが大切だと考えます。



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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。


JSL行政書士事務所
Tel: 03-5533-8785

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所
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お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

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