売買の媒介・取次ぎ・代理


<売買の媒介・取次ぎ・代理>
有価証券の「売買」とは、自己の計算で自己の名前で行う取引のことをいいます。要するに、「自分の財布」で「自分の名前」を取引相手に示して行うことが、売買です。金融商品取引業界では、「自己取引」といったり、単に「自己」といったりします。

売買の媒介、取次ぎ、代理は、「自分の財布」か「自分の名前」のいずれか一方か、両方が、「自分」でない場合の取引です。金融商品取引業界では、自己売買に対して、「委託取引」といったり、単に「委託」といったりします。

<売買の媒介>
売買の「媒介」とは、「他人の財布」で「他人の名前」を取引相手に示して取引を成立させようとする行為を意味します。ここで大切な点は2つあります。

1つは、媒介者は、売買の両方の当事者に取引を成立させるために行動するに過ぎないという点です。別の言い方をすると、売買の条件を決めるのは、売買の当事者であって、媒介者は単に当事者間を走り回って、取引を設立させることによって、手数料を稼ごうとしているだけだということです。

もう1つは、売買の当事者の一方のみのためにすることが原則だということです。商法に「仲立人」という営業者が定められていますが、仲立人はお見合いの仲人と同じで、両当事者のために取引(結婚)が成立するために走り回ることが前提となっています。商法では、仲立人は取引が成立したときに、両当事者に取引内容を記載した書面を交付しなければならないとあります。

一方、金融商品取引業者の行う媒介は、当事者の一方のみのためにすることが原則です。ですから、取引が成立したときに作成しなければならない「媒介に係る取引記録」という法定帳簿は、取引当事者の一方の名前を記載することが前提になっています。法定帳簿につきましては、別の機会に詳しくお話します。

金融商品取引業者が媒介を行う際には、誰のために、つまり、取引当事者のどちらのために媒介をしようとしているのかをはっきりさせることが大切です。誰のために媒介を行ったかによって、「顧客」が誰なのかが変わってくるからです。詳細は、別の機会に説明しますが、金融商品取引業者は、「顧客のために」金融商品取引業を行った場合、「顧客」が特定投資家の場合には、一般投資家に移行できる旨を告知する義務がありますので、当事者のどちらのために金融商品取引業を行っているかを明確にする必要があります。

金融商品取引法の媒介者も、不動産の媒介者のように、両当事者のために奔走してはならないわけではもちろんありません。このときには、媒介に係る取引記録はそれぞれの当事者に関するものを作成する、つまり、2枚作成するのが原則です。なぜなら、媒介に係る取引記録には手数料を記載しなければなりませんが、金融商品取引業者は、媒介に係る取引記録の中で、どの当事者からいくらの手数料をもらったかを明らかにしなければならないからです。

<売買の取次ぎ>
売買の「取次ぎ」とは、「他人の財布」で「自己の名前」を取引相手に示して取引を成立させようとする行為を意味します。他人の財布でも金融商品取引業者自身の名前しか取引相手に示さないため、実際の当事者が取引相手にはわかりません。顧客の株券の売買注文を受けた証券会社が、証券取引所など取引所金融商品市場に発注することが取次ぎの典型です。商法に「問屋」という営業者が定められていますが、証券会社の取次ぎは問屋であると説明されます。

<売買の代理>
売買の「代理」とは、「他人の財布」で「他人の名前」を取引相手に示して取引を成立させる行為を意味します。媒介と違うところは、媒介者は単に当事者をつなぐだけで、取引条件を決定する権限がありませんが、代理人は取引条件を決定する権限がある点です。

<要注意!(中級レベル)>
代理人は、取引条件を決める権限があります。株券や不動産信託受益権などの有価証券の売買を考えてみますと、銘柄、売買の別、数量、価格を決定する権限が代理人にはあるということです。ところが、この行為、実は、投資運用業にほかなりません。第一種金融商品取引業や第二種金融商品取引業の登録を受ければ、「有価証券の売買の代理」ができるという規定になっていますが、原則として、投資運業業の登録を受けない限り、ここまで完全な代理はできないことに要注意です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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