金融庁の解釈に対する雑感


今日は休日ですので、雑感です。

内容は金融庁に解釈の変更を求めるものです。ちょっと応用問題になっていますので、若干読みにくいかもしれませんが、金商法を片手にご覧頂くとスーッと入ってくる内容です。

<自己募集該当性>
金商法施行前夜に公表された平成19年7月31日の金融庁パブリックコメント回答で、金融庁は、次のコメントに後のように回答しています。

コメント
金商法第2条第1項の有価証券の自己募集(同条第8項第7号)について、自ら勧誘を行わず、金融商品取引業者等に勧誘を委ねた場合は、金融商品取引業に該当しないとの理解でよいか。

回答
金商法第2条第8項第7号イ~トに掲げる有価証券の発行者が、その取得勧誘(同条第3項)を第三者に委託して自らは全く行わない場合には、「有価証券の自己募集(私募)」(同条第8項第7号)を行っているとは認められず、「有価証券の自己募集(私募)」に係る金融商品取引業の登録を受ける必要はないものと考えられます。

金融庁の解釈は、例えば、匿名組合契約において営業者が出資持分を発行しようとする場合、営業者が投資家に対する取得勧誘行為を一切行わず、二種業者に全部委託すれば、営業者の行為は自己募集(自己私募)に該当しないから、営業者は二種業者として登録を受ける必要はない、という内容です。

でも、出資持分の取得勧誘行為を二種業者に全部委託した営業者が出資持分を発行する際の行為は募集又は私募ではないと解釈すると、二種業者が出資持分を投資家に取得させることを目的として営業者から取得しても、二種業者の行為は「有価証券の引受け」(金商法2条8項6号)に該当しないことになってしまいます。なぜなら、(買取)引受けは、発行者の募集又は私募に際し行われる取得行為だからです。

また、発行者である営業者から出資持分の取得勧誘を全部委託された二種業者が投資家に対して行う取得勧誘は、募集(私募)の取扱いではないことにもなってしまいます。なぜなら、募集(私募)の取扱いは、募集(私募)を行う発行者のために行う取得勧誘だからです。

つまり、営業者は自己募集又は自己私募を行っていないと解釈すると、二種業者が出資持分を、投資家に取得させるために取得する行為も、投資家に取得勧誘する行為もいずれも金商法2条8項に規定がないので金融商品取引業ではなくなり、二種業者によるいずれの行為も原則として行為規制が適用されないことになります。

これはおかしな話ですよね。

<本来的な解釈>
確かに、取得勧誘行為を二種業者に全部委託した営業者は、直接的には投資家に取得勧誘を行っていません。でも、二種業者を使って、間接的に、投資家に取得勧誘を行っていますよね。頭は営業者、口は二種業者というだけの話です。

従って、取得勧誘行為を二種業者に全部委託した営業者であっても、営業者は出資持分を発行するに際し、自己募集(自己私募)を行っているのであり、二種業者として登録を受けなければならないのです。

これが本来的な解釈であり、本来的な解釈に基づけば、取得勧誘行為を二種業者に全部委託した営業者が発行する出資持分を、投資家に取得させるために営業者から取得する二種業者の行為は(買取)引受けに該当し、有価証券の引受けは第一種金融商品取引業ですから、二種業者にはそのような取得行為は認められないという条文通りの結論になり、二種業者が営業者のために行う投資家に対する取得勧誘行為は募集(私募)の取扱いであるという、これも条文通りの解釈ができます。

金融庁は解釈を変更するか、現在の解釈を変更しないのであれば、現在の解釈のもとにおいても二種業者による取得行為や取得勧誘行為は行為規制が適用される金融商品取引業であるとする根拠を示すべきだと考えます。

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有価証券の自己募集


金融商品取引法は、有価証券の募集と私募を金融商品取引業としています。一般的に「自己募集」と呼ばれている行為です。ただし、自己募集のすべてが金融商品取引業であるわけではありません。例えば、株式会社が株式を発行する行為や社債を発行する行為も自己募集には間違いありませんが、金融商品取引業ではありません。ですから、株式会社が株券や社債を発行するために、金融商品取引業者となる必要は当然のことながらありません。

<投資信託の自己募集>
委託者指図型投資信託の受益証券にかかるものの自己募集は、金融商品取引業です。委託者指図型投資信託とは、委託者が受託者に運用の指図を行う投資信託のうち、受益権を複数の者に取得させる目的で投信法に基づいて設定された投資信託のことですが、要するに、通常の投資信託のことです。

投資信託の自己募集は第二種金融商品取引業ですが、投資信託は第一項有価証券ですから、募集になるのか私募になるのかは、第二項有価証券の500名所有基準ではなく、50名勧誘基準・適格機関投資家基準・特定投資家基準が適用されることに注意が必要です。また、投資信託は第一項有価証券ですから、投資信託の自己募集が第二種金融商品取引業であっても、投資信託の募集の取扱いや私募の取扱いは第一種金融商品取引業です。

「外国投資信託を国内の投資家に紹介する行為は第二種金融商品取引業か」「有価証券(モノ)が発行されていない外国投資信託を国内の投資家に紹介する行為はどうか」という問合せを複数回受けたことがありますが、外国投資信託も第一項有価証券ですから、外国投資信託を国内の投資家に紹介する行為は、外国投資信託の募集の取扱いか私募の取扱いになりますので、第一種金融商品取引業の登録が必要です。外国投資信託の有価証券(モノ)が発行されていない場合も同様です。

<出資持分の自己募集>
任意組合、匿名組合、投資事業有限責任組合その他の出資持分の自己募集も第二種金融商品取引業です。出資持分は第二項有価証券ですので、投資信託の場合とは異なり、募集になるのか私募になるのかは、500名所有基準が適用されます。また、出資持分の募集の取扱いや私募の取扱いも、投資信託の場合とは異なり、第二種金融商品取引業です。

なお、今回の主題の自己募集には直接関係がありませんが、出資持分の運用の対象が主として有価証券である場合、つまり、金融商品取引法3条3号に規定する有価証券投資事業権利等以外の出資持分については、金融商品取引法第2章の開示規制が適用されないため、有価証券以外で運用する出資持分については募集と私募とを区別する意味がないと誤解されることがありますが、金融商品取引法37条の3・3項で、出資持分を含め、第二項有価証券の募集や募集の取扱いをする金融商品取引業者は、内閣総理大臣(実務的には財務局長)に契約締結前交付書面をあらかじめ届け出る義務がありますので、募集と私募を区別する意味があります。

<他の有価証券の自己募集>
投資信託や出資持分の他にも、抵当証券の自己募集も金融商品取引業ですが、ここでは説明をは省きます。

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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