助言業務に該当する行為


12月21日のメールマガジンからの抜粋です。



今回は、助言業務の基本的な考え方などについてです。特に、法定帳簿に関する記述には注意してください。

助言業務を行うためには、金商法に基づき、金商業者として登録を受けなければなりませんが、すべての助言業務が金商法の対象になるわけではありません。

では、どのような行為をするとき、助言業者として登録を受けなければならないのでしょうか。

金商法第2条第8項第11号に、助言業務の定義があります。条文を加工せずに抜粋するとわかりにくいので、要約すると次の通りです。

「当事者の一方が、相手方に対して、『有価証券の価値』や『金融商品の価値の分析に基づく投資判断』に関して、助言を行うことを約束し、相手方が助言に対して報酬を支払うことを約束する投資顧問契約を結んで、投資顧問契約に基づいて助言を行うこと」

これでもまだわかりにくいかもしれませんが、重要な個所は、最後の「投資顧問契約に基づいて助言を行うこと」が「助言業務」だというところです。「報酬を貰って助言を行うこと」が金商法で規制されている助言業務であると、勘違いしている人が大勢います。報酬を貰わなければ助言業者として登録を受ける必要はないという考えです。

これは違います。

助言業者として登録を受けなければならないか、受ける必要がないかの判断と、報酬を貰ったかどうかの事実には何の関係もありません。報酬を貰っていなくても、投資顧問契約を結んで助言を行うのであれば、登録を受ける必要があります。

わかりにくいと思うので実務に沿って話をすると、契約書に「助言は有償で行う」と書いてあれば、投資顧問契約が成立し、投資顧問契約に基づいて助言を行うのであれば、たとえ、実際には報酬を受領しなくても、金商法が規制する助言業務になり、助言業者として登録を受ける必要があるわけです。契約は、暗黙の了解でも成立します。

なお、定義中、「有価証券の価値」とは、有価証券の評価額・時価のことです。したがって、いわゆる、株価のバリュエーションは、会計事務所やM&Aアドバイザーが平気で行っていますが、助言業務に該当する可能性が高いです。(対価の伴うバリュエーションの提供のみを行う行為は、可能性の問題ではなく、間違いなく助言業務)

また、定義中、「金融商品の価値の分析に基づく投資判断」とは、有価証券や通貨などの金融商品の評価額・時価に基づいて、買いとか、売りとか、保有(HOLD)とか判断することや、取引のタイミングなどを判断することを指します。だから、投資顧問契約を結んでいる相手方に「今は、取引すべきではない」という助言をする行為も、タイミングの助言なので、助言登録を受けていないとすることができません。

この点は、助言業者も注意が必要で、「今は、取引すべきではない」という助言を行った助言業者は、当然のことながら、法定帳簿である「助言の内容を記載した書面」を作成して、保存しなければなりません。取引に消極的な助言も、投資顧問契約に基づく助言に他ならないからです。

以上の話は、株式に関する助言ばかりでなく、信託受益権の取引に関する助言や、事業型ファンド(TK出資持分など)の取引に関する助言にも通じることは言うまでもありません。

例えば、不動産ファンドにおいて、SPCに対し、「まだ、不動産信託受益権を売却する時期ではない」と助言する行為は助言業務だし、再生可能エネルギーファンドの潜在的な投資家に対し、「今は投資しない方が良い」と助言する行為も助言業務であり、助言業者は、法定帳簿として、助言の内容を記載した書面の作成と保存が必要です。

なお、実務的に、株式の助言を個人投資家に対して行う助言にしか関係のない話ですが、すべての助言が助言業務に該当するわけではなく、新聞や雑誌や書籍など不特定多数の者が、随時購入できるものの中で助言を行うことは、助言業者でなくてもすることができます。



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助言業務の限界


不動産関連助言業者が、不動産信託受益権の売買又は私募に際し、助言をする相手方は、基本的に、買主又は取得者です。

当該助言業者が行うことができる業務の範囲は、二種登録又は運用登録がない限り、以下の2つの行為のみです。

不動産信託受益権の価値に関する助言行為

不動産信託受益権の価値分析に基づく投資判断に関する助言

ですから、助言業者は、例えば、売主又は発行者との間で、不動産信託受益権譲渡契約書の内容を詰めたり、不動産信託受益権の売買価格(発行価格)等の条件交渉をしたりすることはできません。

当該助言業者は、二種業者を間に挟んでも、助言業者である以上、条件交渉はできません。

以上にもかかわらず、助言業者が条件交渉を行っている事例が見られます。二種登録・運用登録のない助言業者による条件交渉は、明らかに、無登録金商業か、不動産信託受益権の売買の媒介の禁止を定めて金商法第41条の3違反です。

また、助言業者が、「レンダーを引っ張ってきます」などと言い、借入人のために、レンダーを探したり、レンダーと条件交渉をしたりしている事例も見られます。

助言業者が(運用業者も)レンダーと条件交渉をする行為は、金商法第41条の5が禁止する「金銭の貸付けの媒介」ですから、金商法違反です。

金商法第41条の5の規定は、顧客が特定投資家のときには適用がありませんが、この場合であっても、助言業者が借入人のためにレンダーと条件交渉をするためには、貸金業法上のライセンスが必要です。

助言業者は、登録手続きの際の要件が最も緩い業態で、他の業務を行うための社内体制の整備が求められていません。

ですから、助言以外の行為を行うと顧客・投資家の利益を損ねるおそれがあることから、顧客・投資家も、助言登録しかしていない助言業者と取引をする際には、助言業者が助言以外の行為をしていないかどうか確認しつつ取引を行う必要があります。



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価値等の助言と投資判断の助言


金融商品取引法は、投資助言・代理業という金融商品取引業を行う者の登録を義務付けています。金融商品取引法の施行前の投資顧問業法の投資顧問業務とほとんど同じですが、多少異なります。

<有価証券の価値等の助言>
有価証券の価値等の助言を行い、報酬を受け取る契約は、投資顧問契約であり、投資顧問契約に基づいて助言を行う行為は、金融商品取引業です。ここで重要なことは、「有価証券の価値等」の意味と、「報酬」の意味です。

有価証券の価値等とは、株券の価格や株価オプションの価値など、有価証券の価格や有価証券に関連するデリバティブ取引で支払う金額のことを指します。言い換えると、有価証券でないものや、有価証券に関連しないデリバティブ取引で支払う金額は、有価証券の価値等には含まれません。有価証券の価値等に含まれない商品に対する助言行為は、どう転んでも、金融商品取引業には該当しないということです。

報酬とは、普通の(?)言葉と同じで、何かをしたことに対して受け取る対価のことです。報酬という名称でなく、手数料でも助言料でも、名称が何であっても、とにかく、「助言」に対して受け取る金銭等を指します。ですから、有価証券の価値等について助言を行っても、金銭等を一切ももらわなければ、金融商品取引業ではありません。

逆に、金銭等をもらっても、助言に対する報酬でなければ、有価証券の価値等について何を言っても金融商品取引業に該当しません。例えば、かなり怪しいですが、ホームページで株価について助言を行っているんだけれども、助言に対する報酬はまったく受け取らずに、ホームページの維持費として金銭を受け取る行為は、金融商品取引業に該当しないことになります。もっとも、怪しいと言った通りで、ホームページの維持費という名目でも、実質的に株価についての助言に対する報酬の性格をもった金銭を受け取る行為は、金融商品取引業と考えた方が安全でしょう。

ちなみに、投資顧問契約に基づき助言をする行為が金融商品取引業ですが、投資顧問契約は必ずしも、契約書の形である必要はありません。「投資顧問契約の契約書がないのだから、金融商品取引業にならない」という解釈はできないということです。

<金融商品の価値等の分析に基づく投資判断の助言>
金融商品の価値等の分析に基づく投資判断の助言をして報酬を受け取ることも金融商品取引業です。投資助言・代理業の登録を受けなければできません。ここで重要なことは、「金融商品の価値等」の意味と、「投資判断の助言」の意味です。

金融商品とは、有価証券、金利、為替のことを指します。金融商品の価値等とは、有価証券の価値等の説明と同じように、有価証券や為替の価値と有価証券や為替に関連するデリバティブ取引に支払う金額のことを意味します。ですから、有価証券ばかりでなく、ドル/円相場の価値について助言を行い報酬を受け取ると金融商品取引業に該当する、かというそうではありません。

確かに、有価証券の場合は、価値について助言をして報酬を受け取ると金融商品取引業でしたが、為替の場合は、価値について助言をして報酬を受け取っても金融商品取引業にはなりません。なぜなら、為替の場合は、価値の分析に基づく「投資判断の助言」をしない限り、金融商品取引業にはならないからです。具体的にいうと、ドル/円相場の分析をして、「米国国債の発行が増えているので、1年後には米国の金利は上がる。だから、1年後には円安に向かいます」という助言をしても、価値の分析までしてはいますが、投資判断をしていないのですから、金融商品取引業には該当しないということです。

このような金利や為替の価値分析をして報酬を受け取ることが金融商品取引業になると、元来、銀行の本来的な業務である通貨の交換に際して顧客に助言をする行為が金融商品取引業になってしまい不都合です。

為替の将来見通しのレポートを作成しているだけの会社が投資助言・代理業の登録をしているという話を聞かされることがありますが、このような会社は、金融商品取引業の登録は必要なく、今日現在、何の業者規制も存在しません。

テーマ : 金融商品取引法
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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

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