成功する金商業者と失敗する金商業者


登録業者の1割にあたる約200社と接していると、成功する金商業者に共通点があることがわかります。

これから金商業者として登録を受けようと考えている会社にとってはもちろん、既に金商業者として登録を受けている会社にとっても参考になります。

<成功する金商業者の共通点>
成功する金商業者に共通している点は、マーケティングや販売方法など「売る」ことを考える前に、まず、「組織」を固めるところから始めている点です。

私のクライアントの大成功事例の場合、会社を設立する前から、私や公認会計士や弁護士と顧問契約を締結し、経験者であるコンプライアンス担当者の採用を決め、さて、この体制で、何をどう売ろうかという順番で考え、ビジネスを立ち上げています。

<失敗する金商業者の共通点>
これに対し、失敗する金商業者、つまり、登録はしたけれど、すぐに廃業(金商法では「廃止」)してしまうような金商業者に共通している点は、「売り物」ばかり考えている点です。

売り物の売り方を考えていたら、どうやら金商法という法律にしたがって登録を受けなければならないらしいということに気が付き、登録手続を開始し、財務局から指摘された不足を補い、人材を集め、登録を受けるという経過をたどった金商業者は、廃業しやすいです。

<組織作り>
成功する金商業者となるためには、まず、組織作りから始めることが大切だということです。

具体的に、どのような手順で、組織を考えるかというと、代表者を決めたら、次に、コンプライアンス部門の設置とコンプライアンス部門の責任者を決めることが肝要です。

<コンプライアンス部門の業務>
登録しても早々に廃業してしまう金商業者は、「登録後」のコンプライアンス業務の負担を考えていません。

コンプライアンス業務は多岐にわたりますが、わかりやすいものとして、金融庁(財務局管轄の場合は財務局)に様々な「届出」を行わなければならないという業務があります。

会社に何か変更があると届出を行わなければならない、年1回、事業報告書という金商法に記載事項が定められた報告書を提出しなければならないなどの通常の届出や報告義務に加え、金融庁から特別に報告を求められれば報告しなければならないという特別な報告義務も生じます。

届出や報告の他に、コンプライアンス部門の重要な業務としては「日常的なモニタリング業務」と「社内研修の実施」があります。方法の詳細は別の記事に譲りますが、コンプライアンス部門は、日々の業務のモニタリングや役職員全員に対する社内研修を実施します。

さらに、毎年、コンプライアンス・プログラムを起案したり、適宜、コンプライアンス・マニュアルを含む社内規則を更新したりすることも、コンプライアンス部門の重要な業務の一つです。

最大の負荷がかかる業務としては、「証券取引等監視委員会の検査」への対応です。成功する金商業者は、登録前から、証券取引等監視委員会の検査の対応を考えて、組織作りをしています。失敗する金商業者は、登録をしてから証券取引等監視委員会の検査を知り、耐えられないことがわかって、廃業します。

<まず組織作りから始めよ>
金商業者として成功したいなら、まず、組織作りから始めなければなりません。逆にいえば、組織作りから始めない金商業者は廃業に追い込まれる可能性が高いため、このような会社は、初めから、時間とお金をかけて、登録をしない方が良いということです。

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適格機関投資家等特例業務の要件


金融商品取引法で、金融商品取引業者の登録をしなくても、金融商品取引業を営める方法がいくつかあります。適格機関投資家等特例業務もその一つです。

一般的に、業務執行組合員が組合に対する出資持分を取得させる行為は、第二種金融商品取引業であり、金融商品取引業者として登録を受けなければ、行うことができません。

これに対し、組合契約の締結であっても、1名以上の適格機関投資家が出資を行い、その他の出資者の数が49名以下の場合、業務執行組合員が出資持分を取得させる行為は、適格機関投資家等特例業務として、登録を受けることなく、財務局(長)に届出をするのみで行うことができます。

問題は、適格機関投資家の範囲です。

適格機関投資家は、金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令(「定義府令」と通常呼ばれます)10条1項に明文をもって規定されていますので、一見すると、適格機関投資家の範囲が問題になることはないように見えます。

例えば、金融商品取引業者として登録を受けている証券会社は、間違いなく、適格機関投資家です。問題となるのは、投資事業有限責任組合です。

投資事業有限責任組合も、定義府令に適格機関投資家と規定されています。したがって、問題が生じる余地がないようですが、果たして、金融商品取引業者としての登録を受けていない投資事業有限責任組合は、適格機関投資家なのかが問題の所在です。

投資事業有限責任組合に関する法律3条1項本文に、投資事業有限責任組合契約は、各当事者が出資を行い、共同で事業を営む契約であると規定されています。

一般に、投資事業有限組合契約の成立過程で、無限責任組合員が有限責任組合員に出資の勧誘を行うと、それは、組合契約への出資持分の取得の勧誘ですから、第二種金融商品取引業となり、金融商品取引業の登録を受けなければなりません。したがって、投資事業有限責任組合は、金融商品取引業者でなければならないのではないかという疑問が生じます。

ただし、金商法2条2項5号イにより、出資者の全員が事業に関与する組合の場合、その出資持分は有価証券ではありませんから、出資持分の取得勧誘をしても金融商品取引業に該当することはありません。

ここで「事業に関与する」といえるためには、出資者のすべてが出資対象事業に常時従事することが要求されます。

以上から、無限責任組合員(あるいは事業者)のみが事業に常時従事する投資事業有限責任組合は、金融商品取引業者として登録を受けていなければならないという結論になります。

このことは、金融商品取引業者として登録を受けていなければ、投資事業有限責任組合とはいえないというわけではありません。

ただ、聞いた話ですが、適格機関投資家等特例業務を脱法行為的に利用されないように、1名以上の適格機関投資家として投資事業有限責任組合をカウントする届出者については、財務局が、適格機関投資家等特例業務の届出を受理するに当たり、投資事業有限責任組合が金融商品取引業者として登録を受けているかどうかを確認しているということです。

複数の特例業務届出者が、証券取引等監視委員会によって、適格機関投資家等特例業務の要件を満たしていないと認められて、裁判所による業務差止命令を受けています。特例業務届出者が、適格機関投資家等特例業務の要件を満たしているかどうかの審査の目は、厳しくなっています。

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登録申請手続き(3)


証券取引等監視委員会が公表している「金融商品取引業者等検査マニュアル」に明記されていますように、金融商品取引業者等のすべての業務は、コンプライアンスの上に成り立つことが前提になっています。ですから、何をおいても、コンプライアンスを最優先させなければ、登録取消しなどの行政処分を免れることはできません。

<内部監査部門の審査基準>
不動産信託受益権等売買等業務を行う場合には、内部監査部門にも宅建業の専門知識と経験がある人が配置されていることが必要です。

内部監査は、会計監査とは違います。別の言い方をすると、税理士や公認会計士など会計監査の専門家をおくという意味ではありません。内部監査とは、事務リスク、法令違反リスク、システムリスクなど、会社に存在するリスクが顕在化しないための仕組みがあって、きちんと機能しているかどうかを監査する部門です。

内部監査部門に宅建業の知識と経験が必要な理由は、宅建業の知識や経験がないと宅建業のどこにリスクが存在しているかを把握することができないからです。問題は、内部監査部門は、宅建業に詳しいばかりでなく、内部監査の手法にも通じていなければならないという点です。

登録ができたとしても、内部監査部門の職員が内部監査を適切に実行していなければ、当局検査の際に業務改善命令の対象になったり、虚偽の内容を登録申請したとして、登録の取消し処分となったりする場合も考えられます。

<コンプライアンス部門の審査基準>
不動産信託受益権等売買等業務を行う場合には、コンプライアンス部門にも宅建業の専門知識と経験のある人を配置しなければなりません。ここは、宅建業法などの宅建業に関連する法令の知識が必要であるという意味に解釈すべきでしょう。宅建取引主任者試験に合格していれば、一通りの知識はあると認められます。

ただ、ここでも内部監査と同様の問題があり、宅建主任者が必ずしもコンプライアンスの専門家であるわけではありません。特に、金融商品取引業のコンプライアンス部門なのですから、宅建業の知識ばかりでなく、金融商品取引法の知識や金融商品取引業者のコンプライアンス経験も必須です。

登録は、コンプライアンスセミナーの受講証を持っていけば、できてしまうかもしれませんが、登録後にコンプライアンス部門の職員がコンプライアンス部門としての職責を果たすことができなければ、当局検査においてコンプライアンス体制の不備の指摘を受け、行政処分の対象になることもあり得ます。

コンプライアンス部門の仕事の一つは、金商業等府令によると「法令等を遵守させるための指導に関する業務」とあります。指導には、営業部門における日常業務の一挙手一投足の指導、教育の場としての研修の提供、法令違反を未然防止するための社内規則の作成や管理などが含まれます。

そんなことできるか!と思われる方もいるかもしれませんが、登録後の検査では、本当にここまでしていることが要求されます。これでも足りないくらいです。

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登録申請手続き(2)


金融商品取引業者として登録を受ける際も、受けた後も、人的構成、つまり、組織のあり方は、最大の問題になります。不動産信託受益権にかかわるビジネスのために金融商品取引業者として登録を受ける・受けた会社は、特に、組織のあり方に対する監督当局、検査当局の目が厳しいです。不動産信託受益権にかかわるビジネスに対して当局が注視する理由は、取引価額が大きいため、投資家に与えるインパクトが大きいことが理由の一つです。

<人的構成の審査基準>
不動産信託受益権等売買等業務を行う場合には、宅建業の専門知識と経験がある人が、次の部門に配置されていることが必要です。
1. 不動産信託受益権等売買等業務の統括部門
2. 内部監査部門
3. コンプライアンス部門

不動産信託受益権等売買等業務とは、以前にも話しましたが、不動産信託受益権の売買業務や不動産信託受益権に投資するファンドの運営業務などを指します。そこを統括する部門というのは、要するに営業部門です。

不動産信託受益権は、既に関連業者の方はご存知の通り、金融商品取引法の改正に伴い、宅建業法でも規定されています。ですから、宅建業の知識や経験がある人が必要なのは、当然のことです。

宅建主任者であれば、宅建業の知識や経験があることを証明することが簡単です。なければ、①試験が簡単なのでちょっと我慢して勉強してとるか、②すぐに金融商品取引業者の登録が必要なら、宅建業の知識と経験があることを証明するための履歴書を準備するかのいずれかの方法で、宅建業の知識と経験を証明することが必要です。

<余談:宅建業法の改正>
宅建業法35条3項の不動産信託受益権の売主となる場合の売主の意味と、宅建業法50条の2の4の不動産信託受益権の売主となる場合の売主の意味は違うのですが、少なくても金融商品取引法の施行当時、私は宅建業者の方向けのセミナーの講師をしたときには、違いを理解していた方は一人もいませんでしたので、念のため、ここで違いの説明をしておきます。

結論から言ってしまうと、決定的な違いは、宅建業法35条3項の売主は、金融商品取引業者として登録が必要がない宅建業者のこと、宅建業法50条の2の4の売主は、金融商品取引業者でなければならない宅建業者であることです。

ここからは、金融商品取引法の理解が必要ですが、前者の場合、宅建業者自身が所有する不動産を信託して信託受益権の売主となる場合であるのに対して、後者の場合は、他人が不動産を信託した信託受益権の売主となる場合のことを指しています。

宅建業者自身が所有する不動産を信託して信託受益権の売主となる場合、宅建業者の行為は、不動産信託受益権の自己募集になります。一方、他人の不動産信託受益権の売主となる場合、宅建業者の行為は、不動産信託受益権の売付けです。このブログで何度か説明しましたが、不動産信託受益権の自己募集は金融商品取引業ではありません。ですから、金融商品取引業者の登録を受けていない宅建業者でも問題なくできます。一方、不動産信託受益権の売付けは金融商品取引業です。ですから、第二種金融商品取引業の登録を受けた宅建業者でないと取扱いができないわけです。

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登録申請手続き(1)


金融商品取引業者として登録を受けるための手続きは、友人の大江ありす先生のホームページに詳細に記載されていますので、ここであらためて説明することは省略します。登録手続きは、行政書士に依頼しなくてもできることはできますが、ゼロから必要書類を作成したり、財務局とミーティングをもったりすることを考えると、相当な時間がかかるので、行政書士に依頼してしまった方が良いようです。ご自身でチャレンジされる方は、拙著「金融商品取引法対応マニュアル―すぐに使えるサンプル付き!」を参照してみてください。

登録手続きは、許認可手続きと異なり、書類と要件がそろっていればいつか必ず行政機関はOKを出すことになりますので、ここでは、登録が認められない場合である「登録拒否要件」をみていきましょう。

<登録取消し処分を受けた者>
過去に金融商品取引業者等としての登録を行政処分を受けて取り消された会社は、取消しの日から5年間は再登録できません。この登録拒否要件に引っかかる会社は、さすがにいないでしょう。

<罰金刑を受けた者>
会社法、貸金業法、宅建業法、割賦販売法など、商事に関する法令違反の結果、罰金刑を受けたことがある会社も、5年間は登録が認められません。罰金刑でアウトですから、これはあるかもしれません。

<人的構成の審査基準>
人的構成の審査要件とは、要するに、役員や社員に金融商品取引業者として営業活動させても金融商品取引法違反をしたり、不適切な行為をしたりしないと認められるかどうかを審査するということです。

業種によって審査基準が異なりますが、共通している点は、経営者が金融商品取引法や関係法令、金融庁が公表している監督指針を理解して実行できる知識と経験があること、役員か社員にコンプライアンスとリスク管理のプロフェッショナルがいることです。

実際の登録手続きは、金融庁が目指すものよりもかなり甘い審査で登録できてしまうので、結果として、登録はしたけれど検査の結果、登録取消し処分を受けて会社名と代表社名が金融庁や財務局のホームページで公開される会社が後を絶ちません。行政処分の結果として会社名と代表社名が公表されて汚名を受けるくらいなら、初めから登録しない方が良いように思うのですが。

めでたく登録を受けた会社の経営者は、少なくても月1回は、役員、社員のために、金融商品取引法の社内研修を継続的に実施すべきで、特に、行政処分を受ける可能性が高い分野は、万が一にでも会社名や代表社名が当局のホームページや新聞にさらされるリスクを回避するために、集中的に講義を行う体制が必須です。

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

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