合理的な回答に至るまで​の考え方の道筋


1月13日のメールマガジンからの抜粋です。



昨日は、二種業者のコンプライアンス担当者の方ための勉強会である「実践会」の第一回目でした。

実践会は、事例研究を行い、結論を覚えるのではなく、結論に至るまでの考え方の道筋を身に着けることに重点を置いています。

ですから、参加者は10名限定とし、10名の方には2つのグループに分かれて事例についてディスカッションしてもらい、最後に、結論と結論に至った理由を、各グループから発表してもらうという形式をとっています。

今も実践会への参加を希望されている方がいますが、10名限定であるため、第一期生の募集は締め切っていますので、第二期生として参加してもらう予定にしています。

事例研究を行い、結論に至るまでの考え方の道筋を身に着ける演習を行うことは、コンプライアンス担当者にとって、非常に重要です。

実際、コンプライアンス担当者が機能している会社では、役員も従業員も、コンプライアンス担当者に相談したうえで、業務を進めるわけで、相談されたコンプライアンス担当者は、どんな相談にも回答できる能力が求められます。

ここで「回答」とは「正解」という意味ではありません。金商法を事例に当てはめる場合、唯一の正解が存在するわけではなく、合理的な回答が存在し得るにすぎません。

コンプライアンス担当者が、合理的な回答を出すためには、合理的な回答に至るまでの考え方が身についていなければなりません。

合理的な回答に至るまでの考え方は一朝一夕に身につくものではなく、日常業務という本番に当たって身につけるか、演習を通じて身につけるかの2つの方法しかありません。

一見、本番に当たって身につけるのが理想に見えますが、身につく前に合理的な回答を出す必要があることから、本番に当たって身につけるという方法には論理矛盾があり、結果として、演習を通じて身につけるしかありません。

私がコンプライアンスを担当し始めた30年前は、コンプライアンス担当者の役割が確定していないどころか、コンプライアンスという単語でさえ、知っている人が、100人に一人もいない時代でしたので、本番に当たって合理的な回答を出す考え方を身につける時間的な余裕がありました。

現在は、コンプライアンスの機能が、ある程度定まっているため、本番に当たっている暇がなく、考え方の道筋を身に着ける勉強会が、私の現役時代よりも、必要になっていると思います。

さて、合理的な回答に至るまでの考え方の道筋について、一般論をお話しすると次の通りです。

まず、事例に適用されると考えられる条文を特定します。条文は一つであることもあるし、2つ、3つと複数であることもあります。

例えば、金商業者が、親法人のために有価証券の売買の媒介を行ったとき、通常の条件よりも、親法人に有利な手数料率を適用した場合、適用される条文は、親子法人が関与する行為制限規定(金商法第44条の3第1項第1号)と、特別の利益の提供の禁止規定(金商業等府令第117条第1項第3号)の2つが考えられます。

次に、適用される条文が禁止規定である場合、なぜ禁止されているのか、理由を考えます。ここは、文献を参照したり、専門家に相談したりすることで、情報を集めることができます。

最後に、適用される条文を事例に当てはめて回答を出します。禁止規定の場合には、事例が、禁止される理由に該当するかを検証して回答を出します。

当てはめの際には、条文を正確に読むことが重要です。

例えば、虚偽表示の禁止規定(金商業等府令第117条第1項第2号)は、条文をよく読まないと、いかなるときにも適用されると誤解されがちですが、条文をよく見てみると、「金商契約の締結又は勧誘に関して虚偽表示を禁ずる」とありますので、金商契約の締結又は勧誘の場面以外における虚偽表示(例えば期中の虚偽表示)には、虚偽表示の禁止規定は適用されないことがわかります。

当てはめをしたところ、適用条文と思われた規定が事例に当てはまらなかった場合には、最初に戻り、もう一度、適用条文の特定に戻ります。

実践会では、事例の回答を覚えるのではなく、事例を通じて、以上のような合理的な回答に至るまでの考え方の道筋を身に着けます。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

投資顧問業協会の調査票


4月15日のメールマガジンの記事です。



今日は、一回、分別管理を休んで、投資顧問業協会の調査票についてコメントします。不動産関連助言業者と不動産関連運用業者に、今年は、4月13日が提出締切日の調査票が来ていて、クライアントから多数送られてきていたので、この機会にコメントします。

投資顧問業協会は、毎年、「調査票」を会員に送って回答させています。私のクライアントも助言業者や運用業者が多いので、拝見しますが、投資顧問業協会の着眼点は優れていると思います。

株式助言という、典型的な助言業者向けの調査票、不動産信託受益権に係る助言を行う助言業者向けの調査票、不動産信託受益権に係る運用を行う運用業者向けの調査票と分かれており、各々の重要項目にフォーカスした内容となっていて、投資顧問業協会の苦労と真剣度合いを伺わせます。

株式助言の場合、従業員取引に関する質問が充実しています。株式助言業者は、優秀であればあるほど、大手証券会社のアナリスト・レポートが足元に及ばないほど、自社が行った助言が相場に与える影響が大きくなるので、役職員、役職員と生計を一にする者が、助言業務を通じて知り得た情報を利用して株式取引をしたくなるところですが、不正な取引を避けるためにどうすれば良いのかを具体例をあげつつ、実態を調査しています。

また、広告規制については、素人が質問すると「誇大広告をしていないか」とやってしまいそうなところ、投資顧問業協会は、自社に有利な広告ばかりしてはいけないこと、一時点をとらえてはいけないことを明確にした上で、広告表現について質問しています。

不動産信託受益権に係る助言の場合、助言記録の書き方はもちろん、助言記録とともに保管すべき資料の内容について触れつつ、助言記録の保存に関して質問をしたり、これも圧巻ですが、助言を行う際に、価格の適正性をいかに担保するかについて質問をしたりして調査しています。

不動産信託受益権に係る運用の場合、利益相反取引と利害関係者取引について、細かくケースわけをして違反行為がないか、違反行為をどのように防止しているかについて質問をして調査しています。

これらは、証券取引等監視委員会の検査のポイントとも一致しており、金商業者にとって、投資顧問業協会作成の調査票は、証券取引等監視委員会の検査を見据えた自主点検の意味があり、有効な内容となっています。

また、調査票の「整備しているか」という質問に対して、金商業者が「未整備」と回答すると、後日、(金商業者にとってはしつこいくらい)電話で整備状況を確認し、整備されるまで電話をし続けるのですが、投資顧問業協会のこのサービスは、良い意味で過剰サービスと思えるくらい、充実したサービスになっています。

私が直接加入した経験のある協会は、日本証券業協会しかないですが、日証協がここまでしてくれた記憶はありません。

ですから、以下の金商業者はハンディキャップを負っているというか、損をしています。

1 投資顧問業協会に加入しない

2 調査票に真面目に回答しない

私のクラインとで投資顧問業協会に加入しない例は少数派ですが、投資顧問業協会に加入しないということは、業界スタンダードがわからないという点で既にハンディキャップを負っているところ、調査票がないので、コンプライアンス体制に関して、手探りで回答を探さなければなりません。これは、コンプライアンス体制について、投資顧問業協会に加入している助言業者から、大きく後れを取ることになります。

調査票に真面目に回答しない例は少なくなさそうです。調査票の質問一つ一つについて、自社の社内規則と照らし合わせて回答している助言業者が多いとは、私には、ちょっと思えず、記憶だけで回答している助言業者が少なくないのではと思いますが、もし、社内規則と照らし合わせながら回答すれば、一気に、「内部監査」が終了しそうなくらい(実際にはしません)、調査票の質問は充実しているのだから、真面目に、といいますが、時間をかけて回答すべきであると考えます。

二種業協会が行っている「自主点検」は、まだ、分析していませんので、コメントできませんが、投資顧問業協会の調査票は、拝見する限り、投資顧問業協会に加入しないという選択肢は、コンプライアンスの観点から(当局に向けても)、ハンディキャップを負っていると言わざるを得ず、また、調査票に真面目に、時間をかけて回答しないのは、せっかくのチャンスを生かしていないと言えます。

私は、投資顧問業協会に何の縁もありませんので、まったく独立した立場で「調査票」についてコメントしましたが、調査票の提出と提出後のフォローアップだけでも、投資顧問業協会に加入している意味があると考えます。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

社内研修のコツ


4月4日にニュースレター会員に送ったニュースレター(読者はメルマガと呼んでいる)をサンプルとして公開します。



「社内研修は年何回行えば良いのですか」

この質問は、永久にされるのではないかというほどポピュラーな質問です。私は、毎月1回が正解だと思っています。けれど、金商業がメイン業務でない金商業者にはとって、毎月1回を提案しても、誰もやろうとしません。正確に言うと、「誰も」ではなく、証券取引等監視委員会の検査の結果、金融庁から行政処分を受けた金商業者を除き、誰もやろうとしません。行政処分を受けると毎月実施を金融庁から要請されることがあるからです。

最低ラインをいうと、年4回です。このうち2回は「コンプライアンス研修プログラム」の年度研修計画にあらかじめ記載された社内研修で、残り2回は、法改正(金商法は施行以来毎年改正されている)に合わせた社内研修や、協会で受けた研修を社内に周知させるための社内研修に充てます。

「4回もテーマがありません」

こう言う人が多いですが、冷静に考えてみてください。法令改正や協会研修に合わせて行う社内研修はテーマが決まっているので、テーマを考えなければならい社内研修は、年度研修計画に記載される2回だけで、金商業等府令第70条の2第1項で、社内規則を遵守させるための社内研修の実施は義務付けられているから、テーマを考えなければならい社内研修は1回だけです。

さらに、この1回の社内研修を外部の専門家に委託してしまうと、自社でテーマを考える必要は全くありません。だから、社内研修のテーマが決まらない・わからないということはあり得ないのです。

「社内研修後に質問をする参加者がいない(ので理解されたのかどうかわからない)」

この質問(悩み?)もよく聞きます。自慢するわけではありませんが、金商業者に依頼されて私が行う社内研修は、質疑応答が30分で終わることはなく、1時間以上、参加者からの質問が止まらないこともざらです。

「それはプロだから当たり前でしょ」と言われればそれまでですが、料理をする人がプロの料理人のレシピを参考にして、テニスをする人がプロのテニスプレーヤーからヒントを得るように、社内研修もプロのやり方からヒントを得ることは大切だと思うので、社内研修のコツを一つ紹介します。

私は、金商業者から社内研修を引き受けるとき、質疑応答時間を1時間以上取っています。既述の通り、質問が多いことがわかっているからです。

最近は、忙しすぎて、セミナー講師を引き受けるのも6か月に1回になってしまいましたが(次回は今月6日、備考欄に「講師紹介」と書くと5000円引き)、過去20回以上のセミナー講師の経験と、金商業者から依頼されて行った更に多くの社内研修講師の経験から言えますが、参加者の質問を増やす方法は一つしかありません。

意味のある社内研修を実施するために、絶対に忘れてはならない、プロが教える社内研修のコツは、以下の通り。

「社内研修を受ける前と受けた後で、参加者の意識や認識が変わる内容の話をする」

社内研修を受けて、意識や認識が変わるから、参加者は不足している情報を補おうとして質問をするのです。これ以外の理由で、退屈になりがちな社内研修の参加者から質問を受けることはありません。(苦情や意見を言われることはある)

私の失敗談になりますが、30年近く前、当時、現役のコンプライアンス担当者だった20代の私が、社員100人を対象に行った社内研修で、80%以上の参加者が寝てしまったことがあります。「100人だったから仕方ない」と自分で自分に言い訳して、次に行った参加者10人の社内研修では、10人(100%)が寝てしまいました。

研修の前後で、参加者の意識や認識が変わる内容の社内研修を実施することは簡単ではないですが、この点を意識して社内研修をデザインしてみてください。経験から言えますが、必ず、社内研修が変わります。


「アンケート」にご協力ください。

社内研修に関するアンケート調査を行っています。ご多忙のところ大変恐縮ですが、アンケートにご協力頂きたくお願いいたします。回答は、<アンケートフォーム>からお願いいたします。回答が一定数に達しましたら、アンケート結果を集計の上、アンケートにお応え頂いた方にお送りいたしますので、よろしくお願いいたします。

川崎善徳
JSL行政書士事務所
電話:03-5533-8785

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

伸びるコンプライアンス


3月29日にニュースレター会員に送ったニュースレター(読者はメルマガと呼んでいる)をサンプルとして公開します。



今日は、コンプライアンス担当者に関する雑感です。雑感ですので、まとまりがありませんが、コンプライアンス担当者の方の参考になればと思います。

これまで私が接した金商業者のコンプライアンス担当者の方の数は、数えたことはありませんが、200人くらいだと思います。200人のうち、「コンプライアンスの仕事が楽しくて仕方がありません!」という感じの方は、私の記憶では2名だけで、多くの方の場合、どことなく、つらそうに見えます。

私から見ると、金商業者のコンプライアンス担当者は、非常に恵まれたポジションにあると思います。現代は、コンプライアンスが何にもまして優先される社会であり、特に、金商業者は、金融庁や証券取引等監視委員会が厳しいために、コンプライアンスには優越的地位さえあるのではないかと思わるほど、コンプライアンスの地位が高いように映るからです。(少なくても金融庁はこの前提でいる)

私の話になり恐縮ですが、私が初めてコンプライアンス担当者となった1992年は、「会社で何をしているのですか」という問いに対して、自分の仕事を表す言葉が見つからず、「法律関係の仕事をしています」と回答すると、いつも、「弁護士ですか?」と聞かれて、話がここで終わるという時代でした。

当時、私が所属していた運用部門の中で、最も人気のなかった仕事が私の仕事でした。金商法の前身の証取法では、証券会社は免許制であり(今とは違う4つの種類の免許があった)、免許を取得する仕事、免許取得後に変更届出書を大蔵省証券局に提出する仕事、証取法に関する社内研修を行う仕事、新商品開発の際に証取法の観点から意見をする仕事などがあり、通達(当時は「蔵証」という通達による通達行政だった)が出れば、通達のポイントを証取法の観点からレポートにまとめ、部長まで回覧する仕事もありました。

当時の私は27歳。このとき、まさかこの仕事がLIFE WORKになるとは想像できませんでしたが、運用部門で、当時は、華々しく大金を運用していた人たちから見ると、私の仕事は、退屈そうに見えたようです。ところが、私は、楽しかったのです。例えば、通達を最初に見ることができる特権(?)があって、通達(今の感覚でいうと法令)を実務的に解釈して現場に落とし込むために必要な、証取法の実務と規制の両方に接していたのは全社員の中で私一人でしたから、楽しかったのです。

伸びるコンプライアンス担当者になるためには、コンプライアンスという仕事を楽しむところからスタートする必要があります。何事もそうですが、「好きこそものの上手なれ」で、楽しんで取り組めば、コンプライアンス担当者としての「腕」も上がります。

一方、伸びるためには、チャレンジを増やして失敗を多くする必要もあります。

私の大失敗の記憶に、社内研修をしたら、わずか、10人程度しか参加していなかったのに、全員が寝てしまったというものがあります。失敗をすれば、同じ失敗をしないように次回は工夫するので腕が上がります。

届出書の提出を忘れて(当時は一部事前届出)、社長就任が3日遅れるという(社内的には)大事件もありました。反省して、私は、分厚い「サンプル付き当局届出書マニュアル」を作成しました。

何日もかけて頑張って社内規則を作ったのに、「もっと具体的に、誰がいつ何をするのか、わかるように書き換えてくれ」と別の部の人に叱られ、全面的にやり直しになったこともあります。この経験で社内規則は関係者を巻き込んで作成しないといけないということを学びました。

コンプライアンス担当者として伸びるためには、このように、楽しい半面で、失敗も繰り返す必要があります。何事にも果敢にチャレンジしないと失敗ができないので、伸びるコンプライアンスには、チャレンジ精神も重要です。

さて、私も、部長、取締役と上がっていき、部下ができるようになったとき、私がいつも部下にした質問は「コンプライアンス担当者にとって、最も重要なことは何か?」という質問でした。

「役職員に、法律をわかりやすく説明すること」という回答が多かったですが、最も重要なことは、法律とは関係ありません。実際、コンプライアンス担当者は、知識として法令の知識は欠かせませんが、業務において、法令が必要になる機会は一般的に考えられているよりも、はるかに少ないです。

コンプライアンス担当者にとって最も重要なことは何かというと、「人の話を聞くこと」です。大勢のミーティングでも、一対一のミーティングでも、とにかく、聞くことが重要だと気付いたのは、38歳のときだったと思います。人の話をよく聞かないと、相手が抱えている本当の問題が見えてこないからです。

人の話を聞くことが最も重要であると考えた私は、当時、人の話を上手く聞くために、「プロカウンセラーの聞く技術」(東山紘久)や「小さいことにくよくよするな」(リチャードカールソン)などの書籍を読み、民間の心理カウンセラー学校に通い、臨床心理学者のカール・ロジャーズの来談者中心主義(中心療法)を、仕事に活かすようになりました。

もっとも、ここまでやる必要はありませんが、伸びるコンプライアンスと言いますか、役職員から「信頼される」コンプライアンスになるためには、とにかく、相手の話を聞くことだという信念は、今も変わっていません。



現在、ブログの配信は、基本的に停止して、代わりにニュースレター(読者からはメルマガと呼ばれています)を発行しています。ニュースレターの方が、直接的に、読者に届くから、書く方の私としては、書きやすいからです。

ニュースレターはブログの延長なので、無料です。

ニュースレターの配信先は、金融商品取引業者、登録申請者・予定者、特例業務届出者・届出予定者、金融庁(財務局を含む)、証券取引等監視委員会、自主規制団体(各協会)に所属する方に限らせて頂いています。

ニュースレターのお申し込みは、<ニュースレターのお申込みフォーム>で、項目のすべてを埋めて頂きリクエストしてください。

繰り返しますが、メールアドレスは、必ず、所属する会社のメールアドレスを使用してください。会社のメールアドレス以外には、ニュースレターをお送りいたしません。

フォームが動かない場合は、「ニュースレター希望」というタイトルで、「会社名」「役職名」「氏名」を記載したメールを「会社のメールアドレス」を使用してお送りください。この4つの項目をすべて満たしたリクエスト以外のお申込みは受け付けません。

JSL行政書士事務所
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話: 03-5533-8785 Email: kawasaki@securitieslegal-jp.com

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

一人でできる金商法


金商業者のコンプライアンス担当者にとって一番大変なことは何か?というアンケートをとったら、「金融庁に提出する書類の作成」という回答が一番になるんじゃないかというくらい、書類の作成が苦手な金商業者が多いです。

<届出書>
一番、簡単な書類なのに、なぜか外部委託をする金商業者が多い書類が、「届出書」の作成です。

届出書は大きく分けると3つに分かれます。

一つ目は、「登録申請書」の変更の届出書です。これは、一番、簡単。登録申請書に記載した事項に変更があったときには、届出書と変更のあった登録申請書の頁と添付書類を、変更のあった日から2週間以内に作成して、金融庁に提出するだけです。

登録申請書の変更の届出書の中で、一番、大変なのは役員と政令で定める使用人の変更ですが(人的構成に係る書面の提出が求められるため)、これでさえ、慣れれば、1時間もかかりません。

二つ目は、業務方法書の変更の届出書です。これも、簡単。業務方法書に記載している事項に変更があったときには、届出書と新旧対照表と業務方法書の全文を、変更のあったときから遅滞なく作成して、金融庁に提出するだけです。

不慣れでも、2時間以内にできます。

三つ目は、イベントがあったときに提出する届出書です。これは、種類が多くて大変そうですが、日常的に生じるのは、関係会社の増減くらいで、合併や事業の休止や廃止など、めったに発生しないイベントでも、すべて書類のひな型は金融庁のサイトで公表されているので、イベントにあった書類を作成するだけです。

<事業報告書>
年度末から3か月以内に提出する事業報告書の作成が苦手なのか、面倒なのかわかりませんが、外部委託する金商業者も多いです。

事業報告書を見ればわかりますが、記載すべき事項に関する情報を持っているのは、金商業者本人だけなので、事業報告書は、作成や提出の外部委託をする意味がまったくない書類です。

金商業者は、事業報告書くらいは、自分で作るようにしましょう。

<難しい書類>
難しい書類があるとすれば、「法令違反」が発生したときに作成する書類です。法令違反が発生したときに作成する書類は大きく三つ分けることができます。

一つ目は、「事故届」です。法令違反を自ら発見したときには金融庁に報告しなければなりませんが、これを「事故届」といいます。

事故届の提出には、特殊な手続きが必要になるので、書類の作成が難しいというよりも、正しい手続きを踏むことが難しかったりします。

もっとも、法令違反を発見したときに金融庁に電話をすれば、提出すべき書類についても懇切丁寧に指導があるので、時間はかかりますが、金商業者が作成できない書類ではありません。

二つ目は、「業務改善報告書」です。法令違反を当局が発見したときに金融庁に提出する報告書です。

これは、はっきりいって難しい。金融庁の指導を仰いでも、難しいです。業務改善報告書の作成になってくると、専門家のサポートが必要です。

三つ目は、「報告徴取命令」に対して提出する報告書です。これは、難しいですし、半分以上は、金融庁の指導を仰げません。だから、報告徴取命令を受け取ったときには、すぐに、専門家に相談することが必要です。

以上見てきたように、業務改善報告書と報告徴取命令に係る報告書の作成を除き、金融庁に提出する書類の作成は、簡単です。

外部委託にコストをかけるのではなく、金商業者が自らが作成して提出するようにしましょう。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

ブログの内容は個人的見解ですので、正確性は保証いたしません。また、ブログの内容に関する質問を含め、質問には一切回答いたしかねますので、ご了承ください。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード