ラッキーバンク・インベストメントに対する行政処分勧告


昨日、証券取引等監視委員会は、ラッキーバンク・インベストメントが法令違反を行ったとして、同社に対し、行政処分を行うように、金融庁に勧告しました。

同社は、ソーシャルレンディングを行う二種業者(金商業者)であり、貸金業者を兼業していますが、ソーシャルレンディングを行う二種業者は、昨年来、立て続けに行政処分を受けており、うち1社は、金商法に基づき、登録取消し処分という、金商法上最も重い行政処分を受けています。

証券取引等監視委員会の公表によると、同社が行った法令違反は次の2点です。

1 同社は、同社のサイトで、貸付先である不動産会社の審査を慎重に行っていると宣伝していたが、実際には、審査が不十分であった。このことは、投資家に対する、誤解を生ぜしめるべき表示(金商法違反)である

2 同社は、同社のサイトで、貸付金の担保としている不動産の評価額を掲載しているが、当該評価額は、正式な評価を行ったものではなく、対外的に公表できないものだった。このことは、投資家に対する、誤解を生ぜしめるべき表示(金商法違反)である。

2の指摘については詳細がわかりませんが、おそらく、不動産の評価額が、鑑定業者が評価した価格でなく、社内的に算出した価格だったという指摘ではないかと思われます。

一般に、「ソーシャルレンディング」とは、クラウドファンディングの一形態で、投資家(個人投資家)から資金を預かる二種業者(貸金業者)が、最終的に、不動産会社などの事業者に資金を貸し付ける仕組みです。

お金の流れはこうです。

個人投資家が二種業者(貸金業者)に金銭を預ける → 二種業者(貸金業者)が投資家から預かった金銭を事業者の資産を担保に事業者に貸し付ける → 事業者が事業を行い二種業者(貸金業者)に元利金を返済する

個人投資家と二種業者(貸金業者)の関係は、二種業者を営業者、個人投資家を匿名組合員とする匿名組合契約の関係です。匿名組合契約で集めた資金は、営業者の財務諸表上、預り金となることから、二種業者(貸金業者)は、個人投資家から預かった資金を不動産会社に貸し付けることになります。

したがって、ソーシャルレンディングを行う二種業者(貸金業者)は、個人投資家に対し、受託者責任を負います。

「受託者責任」とは、投資家から金銭を預かる者が投資家に対して負う責任で、具体的には、投資家に対する忠実義務と善管注意義務を指します。

忠実義務に違反する行為とは、例えば、投資家の利益よりも自社の利益や自社の関連会社の利益を優先する行為、善管注意義務に違反する行為とは、例えば、受託者責任を負う者として当然に期待される程度の高度な貸付け審査を行わない行為を指します。

ソーシャルレンディングは、受託者責任を負う者が貸付け事業を行う仕組みですが、受託者責任を負う者が貸付け事業を行う仕組みは、ソーシャルレンディングの他には、銀行の融資以外に思いつきません。

銀行融資のお金の流れは以下の通りで、ソーシャルレンディングと同じです。

預金者が銀行に預金という形で金銭を預ける → 銀行が預金者から預かった金銭を事業者の資産を担保に事業者に貸し付ける → 事業者が事業を行い銀行に元利金を返済する

以上から、ソーシャルレンディングは銀行融資と同じ仕組みであることがわかります。したがって、ソーシャルレンディングを行う二種業者(貸金業者)は、受託者責任を負うことから、不動産会社などの事業者に対する貸付けに際し、銀行の融資(与信)審査部門と同等の高度な与信審査体制と与信審査能力を備えることが求められます。

一般に、貸金業者の審査(基準)は銀行よりも緩いため金利が高いわけですが、受託者責任を負う貸金業者は、受託者責任があるがゆえに、一般の貸金業者とは異なり、銀行の与信審査と同等の高度な与信審査を行うことが求められるところ、同社の与信審査は、銀行の与信審査と同等のものではなかったようですから、行政処分勧告の対象になるのは当然かもしれません。

「金融業者の貸付業務のための社債の発行等に関する法律」という法律があります。

この法律は、貸金業者が、貸付金の原資として社債を発行して資金調達をすることを原則として禁止する法律です。

貸金業者は、本来、銀行借り入れを唯一の資金調達手段とするため、受託者責任を負いません。貸金業者は、受託者責任を負うことが想定されていないため、同法において貸金業者は、原則として投資家から資金を集めることが禁止されているのです。

以上からわかるように、ソーシャルレンディングは、法律で受託者責任を負うことが想定されていない貸金業者が、受託者責任を負って貸し付け事業を行う、法律上、例外的な仕組みです。

なお、ソーシャルレンディングを行うために、二種業者となろうとするものは、金融庁(財務局)の審査を受けなければなりませんが、ソーシャルレンディングを行っている二種業者は、金融庁(財務局)の審査を通っていますので、ソーシャルレンディング自体が、法律上、問題なわけではありません。

ソーシャルレンディングを行う二種業者(貸金業者)は、法律が想定していなかった受託者責任を負っているのですから、貸付けを実行する際には、同じく受託者責任を負って貸し付け事業を行う銀行の与信審査部門と同等の高度な与信審査体制を整備し、与信審査を行うことが期待されます。

したがって、ソーシャルレンディングを行う二種業者(貸金業者)は、例えば、銀行の与信審査経験者などを社内に配置することが求められると考えます。

ソーシャルレンディングに投資しようとする人は、ソーシャルレンディングを行う二種業者(貸金業者)が、銀行の与信経験者を採用するなどの措置を講じているかどうかを確認してから投資をすることが、自衛手段の一つになると考えます。



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行政処分勧告と行政処分


JSL行政書士事務所のホームページの「検査の指摘と行政処分」を更新しました。

証券取引等監視委員会の検査の指摘と金融庁の行政処分


金融商品取引業者の検査は、通常、証券取引等監視委員会が実施します。

実施した結果、証券取引等監視委員会が検査対象である金融商品取引業者に行政処分を行うのが適当であると判断したときには、金融庁(長官)に行政処分を行うように勧告します。これが行政処分勧告です。

金融庁は、証券取引等監視委員会の行政処分勧告を受けて、行政処分を行うかどうか、また、行う場合、どのような行政処分を行うかを決定します。

ホームページでは、証券取引等監視委員会の行政処分勧告の原因となった検査指摘事項を解説しています。また、行政処分勧告に基づいて金融庁が行った行政処分の内容も掲載しています。(行政処分には解説はありません)

解説は、私の個人的見解に基づくものであり、正確性や網羅性を保証しません。あらかじめご了承ください。



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証券取引等監視委員会の指摘事項


JSL行政書士事務所のホームページを作成し(手作り)、証券取引等監視委員会の行政処分勧告について解説を始めました。

簡潔に、わかりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。

また、検査結果一覧表としてもご活用ください。

証券取引等監視委員会の行政処分勧告の解説



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フューチャーストックに対する行政処分


昨日、金融庁は、証券取引等監視委員会の勧告に従い、フューチャーストック株式会社に対し、行政処分を行いました。

行政処分の内容は、1か月間の業務停止命令(金商法第52条第1項)と業務改善命令(金商法第51条)です。

詳細は、こちらでご確認ください。

<業務停止命令>
一般的に、業務停止命令の期間は、制裁的意味の他、健全な業務の回復までに必要な期間を勘案し、決定されているようです。

今回の業務停止命令の内容は、新規顧客との投資顧問契約締結の1か月間の停止です。

<業務改善命令>
今回の業務改善命令は、以下の通りです。

1 今般の検査において認められた法令違反行為を直ちに是正すること

2 本件の発生原因を分析し、実効性のある再発防止策を策定すること

3 上記1及び2について、その対応・実施状況を1か月以内に書面で報告すること

通常、業務改善命令は、次の5つの項目からなります。

1 改善策の策定と実行

2 再発防止策の策定と実行

3 責任の所在の明確化(社内処分を含む)

4 顧客への事態説明

5 1から4の実施状況の書面による報告

「改善策」とは、違法行為又は違法状態の解消のことです。

「再発防止策」とは、同様(「同じ」ではない)の法令違反が起きない社内体制の整備のことです。

「責任の所在の明確化」とは、法令違反の原因を作った役職員を特定し、社内処分を行うことです。社内処分は、減俸や解雇を指しますが、当然、各社の懲罰規定に従います。

「書面による報告」の書面とは、「業務改善報告書」と呼ばれる書類のことです。

<業務改善報告書>
業務改善報告書は、行政処分を受けた金商業者の代表者が金融庁長官(財務局管轄の場合は財務局長)に提出する書類です。

決まった様式があるわけではありませんが、違法行為の発生の経緯、責任の所在と社内処分、改善策の実施状況、再発防止策の実施状況などを記載し、実施状況を証明する書類を添付して提出します。

提出期限は、私の知る限りでは、いつも、行政処分のあった日から1か月です。

つまり、1か月以内に、改善策と再発防止策を策定して実行し、社内処分を行い、顧客説明を済ませ、これらすべての実施状況を書面に書き込む必要があります。

また、改善策と再発防止策の一環として、業務改善報告書の提出期限までに、コンプライアンス研修の実施も必須です。

さらに、これらすべての実施状況を証明する書類の作成もしなければならないため、大変な労力を要します。

<聴聞・協会処分>
行政処分が決まると、原則公開で、聴聞が行われます。

自主規制機関(協会)に加入している金商業者は、協会からも処分を受けます。

行政処分を受けた翌日には、新聞にも記事が載ります。

「考えただけでも、ぞっとする」という方の感覚は正しいです。だから、内部監査や内部管理態勢の検証が非常に重要であり、何が何でも行政処分を避けなければなりません。

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行政処分勧告


6月26日(金)、証券取引等監視委員会は、日本クラウド証券に行政処分をするように金融庁に勧告しています。

詳細は、こちらです。

<他人事と言える金商業者はいない>
同社が、行政処分勧告を受けた原因の一部は以下の通りですが、どの金商業者も他人事ではないはずです。

1 同社経営陣は法令遵守意識が不十分だった

2 社内規程を整備するなどの内部管理態勢が構築されていなかった

3 法定帳簿に記載不備があった

<経営陣の法令遵守意識>
詳細を私は知りませんが、公表された情報によると、経営陣は法令遵守意識が不十分だったと指摘されています。

証券取引等監視委員会が経営陣の法令遵守について指摘するときには、大きく分けて、次の2通りがあります。

1 経営陣の法令遵守意識が不十分だった(今回の例)

2 経営陣の法令に関する知識が不十分だった

「意識」が不十分と指摘される方が「知識」が不十分と指摘されるよりも重い感じがします。(知識なら覚えればよいが、意識は考え方や行動の改革が必要だから)

実務的には、金商業者の経営陣は、営業部門はもちろん、業務部門(バックオフィス)についても、業務の状況を常に把握し、法令遵守が行き届いているかどうかを(面倒でも)確認する義務があるということです。

<社内規則の整備>
社内規則の整備に問題があったと指摘されていますが、5月29日の平成26年改正金商法は、すべての金商業者に社内規則の整備と社内研修の実施を義務付けましたので、この指摘は、今後、増えることが予想されます。

「社内規則があれば法令違反は起きないとでもいうのか?」という疑問は愚問で、法令違反が起きないような社内規則を整備し、社内研修で役職員に周知し、社内規則の遵守状況が常にチェックできる体制を作ることが、平成26年改正金商法で求められたわけです。

<法定帳簿の記載不備>
今回の指摘は、法定帳簿の「作成」不備ではなく、法定帳簿はあったんだけれども、記載すべき事項のうち一項目が抜けていた(「記載」不備)という指摘です。

今回、記載不備を指摘された法定帳簿は、「取引残高報告書」です。

「法定帳簿って何?」という金商業者は論外ですが、金商法を斜め読みしている金商業者から「取引残高報告書なんて法定帳簿は金商業等府令第157条に記載がないじゃないか!」と言われそうです。

でも、あります。

同条第1項第1号イ(4)です。

ここに「契約締結時等交付書面」の写しが法定帳簿であると規定されていますが、この「等」が「取引残高報告書」です。

経営陣の法令遵守意識も社内規則の整備も法定帳簿の正確な記載も、基礎の基礎です。

内部管理態勢の検証作業(内部監査ではありません)を実施したことがない金商業者は、とにかく、今すぐ、内部管理態勢の検証作業を行い、基礎の基礎ができていることを確認する必要があります。

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。


JSL行政書士事務所
Tel: 03-5533-8785

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、金融商品取引法専門メールマガジンを200社を超える金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

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