コインチェック事件と金商法


2月5日のメールマガジンからの抜粋です。


コインチェック事件が、金商法の理解を深める良い材料になっていますので、今回は、コインチェック事件を取り上げます。

仮想通貨交換業者として登録申請中であるコインチェックを起点とした仮想通貨の流出事件を契機として、仮想通貨の代名詞のようになっているビットコインの価格が急落しています。

昨年12月に1BTC200万円以上の最高値を付けたビットコインですが、今日現在、80万円台と2か月で60%下落しています。

事件を踏まえ金融庁は同社に対し業務改善命令を出すとともに、オンサイトの検査を実施したようですし、取引参加者が多いビットコインの急落で大損を被った投資家もいるかもしれません。

仮想通貨は資金決済法の規制を受け、仮想通貨交換業者(報道では仮想通貨取引所と呼ばれていますが、非公式・不正確な表現)は登録制となり、一種業者並みの内部管理体制の整備が求められています。

仮想通貨の取引を行う個人投資家の保護を考えた措置でしょうが、有価証券の売買と異なり、仮想通貨の売買に関しては、投資家を保護する必要がないと考えます。

有価証券の売買に参加する投資家を保護するために、金商法によって有価証券の売買が規制され、売買の仲介者である金商業者が厳しい規制を受けるのはなぜでしょうか。

投資家を保護しないと取引参加者がいなくなり、資金需要者が資金を調達することができなくなる結果、日本経済が破綻するからです。金商法第一条に規定されている通り、金商法は、国民経済の健全な発展に必要不可欠な法律であり、有価証券の売買に関しては、投資家保護が必要なのです。

一方、仮想通貨の売買は、投資家が保護されない結果、投資家がゼロとなっても、困るのは仲介業で手数料を稼ぐ仮想通貨交換業者だけです。仮想通貨交換業に関する法律は、仮想通貨交換業者保護法でしかありません。

法定通貨の場合と異なり、仮想通貨の発行量は決まっていること、貴金属の場合と異なり、法定通貨の代替となる決済手段ではないことから、理屈では仮想通貨の価値が上がることはありません。

したがって、仮想通貨を買い付けて値を上げる行為は、以前に買い付けた者にお金を上げている行為に等しいわけですから、仮想通貨市場は本来成り立たないはずです。それでも市場が成り立っている唯一の原因は消費者の人気です。人気投票の参加者を保護する法律を作る必要性を感じません。

もっとも、仮想通貨取引を規制する資金決済法では、仮想通貨の投資家は保護されません。資金決済法は、JR東日本のスイカなど、決済手段の「利用者」を保護する法律だからです。スイカに投資する人が想定されないように、資金決済法では、仮装通貨に投資する人が存在することを想定していないのです。(この点についても、報道は不正確)

仮想通貨で資金調達をする仕組みを、ICO(Initial Coin Offering)といいます。

有価証券の発行で企業が資金調達を行う行為であるIPO(Initial Public Offering)の条件は、株価が上がると企業の資金調達は容易になります。発行市場が流通市場と繋がっているからです。

仮想通貨は違います。ICOの場合、仮想通貨が値上がりしても発行条件に影響しません。発行市場と流通市場が遮断されているからです。

仮想通貨の売買によって資金調達が容易になる企業はないのですですから、仮想通貨の売買に関し、投資家を保護するために特別な法律を設ける必要はなく、消費者保護法で対処すればよいのです。

なお、ICOを取り締まる法律は、今日現在、日本に存在しません。ICOに関しては、投資家を特別に保護する必要があり、ICOに関する特別な規制が存在しないことは問題です。

ちなみに、規制が存在しないことも一因で、ICOで投資家を欺く者が後を絶たないようで、金融庁は、ICOに対し、金商法を適用して規制しようと試みています。

なぜ、ここで、金商法が出てくるかというと、ICOは、クラウドファンディングだからです。ですから、金融庁の試みはわかりますが、であれば、金商法第2条第2項柱書を改正し(この改正がICO規制の肝)、ICOに関しても、有価証券取引同様、金商法を正面から適用すればよいと考えます。



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公正な価格形成が重要な理由


8月9日のメールマガジンからの抜粋です。


証券取引等監視委員会は、ヤマゲン証券が金商法違反行為を行ったとして、金融庁に行政処分勧告を行いました。

認定された法令違反は、作為的相場形成です。作為的相場形成とは、主に、上場株券が取引される株式市場において、実勢を反映しない作為的な相場形成になると知りながら、自己売買又は委託売買を行う行為です。

作為的相場形成のうち、最も多い事例と考えられるのは、終値形成(終値関与)と呼ばれる、引け値を作為的に上げる又は下げる注文を発注する行為です。今回の指摘も、終値形成であるようです。

なぜ、作為的相場形成は禁止されるのでしょうか。

理由は、金商法の目的規定から考えるべきです。

金商法は、有価証券の公正な価格形成を図ることをもって、投資者の保護と国民経済の健全な発展に資することを目的とする法律です。

公正な価格形成とは、すべての取引参加者が市場に存在するすべての正しい情報を共有している中で、需要と供給が交わる一点で決まった有価証券の価格のことです。

この場合の有価証券は、(表示されるべき権利を含む)株券に限らず、社債や投資信託などの第一項有価証券も、信託受益権や組合等出資持分などの第二項有価証券も含みます。

第二項有価証券に関しては、「価格は当事者間の交渉で決まるので、取引ごとに異なる」と堂々という人がいますが、金商法は、一点に決まると考えています。証券取引等監視委員会の検査官の言う「一物一価」です。ですから、第二項有価証券であっても、複数の価格が存在することは、本来、認められず、したがって、複数の価格が存在した場合、いずれかの価格が「不公正な価格」であると認定されも文句が言えません。

実務と金商法の考え方にずれがあるかもしれませんが、有価証券の取引においては、実務より、金商法が優先されます。なぜなら、不公正な価格は、投資者の保護と国民経済の健全な発展を阻害し、日本経済の崩壊につながりかねないからです。

有価証券の価格が公正でなかった場合、有価証券の価格を公正であると信じて売買を行った投資者は、売買を行った時点で、既に負けているおそれがあり、したがって、不測の損害を被る可能性が極めて高いことになります。投資者は、このような投資者保護が図られない市場を信用しないため、このような市場に参加しません。

投資者が市場に参加しないと国民経済の健全な発展が阻害され、日本経済は崩壊します。なぜなら、企業は資金調達手段を失うからです。単純な例をあげれば、誰一人株式市場に参加しなければ、株式会社は成り立たず、株式会社が経済の主な担い手である日本経済は崩壊します。

また、国民の財産は有限であることから、適正に配分される必要があります。具体的にいうと、例えば、株式市場においては、成長産業の株券が買われ、衰退産業の株券は敬遠されることによって、限りある国民財産が成長産業に投資される必要があるということです。

限りある国民財産は適正に配分されることによって、国民経済の健全な発展が実現するという考え方です。

もし、衰退企業が、虚偽の有価証券届出書なり、有価証券報告書なりを作成し、投資者から資金を調達すると、成長産業に向かう国民財産は減ることになり、ひいては、国民経済の健全な発展を阻害し、日本経済が崩壊します。

このことから、有価証券報告書などの虚偽記載は、最も重い刑事罰を科されるわけです。

わかりやすく、株券を例にとってお話ししましたが、すべての有価証券の発行は、資金調達手段であることから、この考え方は、社債や投資信託、信託受益権や組合等出資持分に関しても同じであることは、既述の通りです。

検査事例に話しを戻すと、作為的相場形成は、公正な価格形成を阻害し、ひいては、日本経済の崩壊を招くことから、金商法で禁止されているわけです。


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なぜ金融商品取引法はあるのか

2007年9月30日に証券取引法という法律が全面的に改正されて、名前まで変わってしまいました。目的も少し変わったというかわかりやすくなりました。では、金融商品取引法はどうしてあるのでしょうか?その目的を探ってみましょう!

<証券会社と銀行>
話がそれるようですが、金融商品取引法がどうしてあるのかを探るために、証券会社について考えてみましょう。証券会社といえば、株券を売ったり買ったりする会社ですよね。証券会社ではほかにいろいろな取引ができますが、何をするにしても、証券会社と付き合うのって抵抗ありませんか。銀行に比べて、証券会社ってなんかあやしくないですか?

ちなみに、私は大学を卒業して信託銀行という銀行に入社しましたが、それから転職をかさねて、いくつかの外資系証券会社のコンプライアンスを長年担当しています。その本人がいうのですから、間違いありません。証券会社はなんかあやしいです!

どうして証券会社はあやしいのでしょうか?(あやしくないと思っている方、すみません!)

<証券会社と品質保証>
証券会社があやしく感じるのは、証券会社で取引できるものは、一つの例外もなく「品質保証」がないからです。株券を買えばわかることですが、株券の価格である株価は毎日のように動いています。上がればいいですが、当然、下がることだってあります。

銀行の1年定期預金に100万円を預ければ、1年後には必ず100万円が戻ってきます。銀行が倒産しても戻ってくる仕組みになっています。100万円預ければ100万円戻ってくるように、銀行の預金は品質が保証されています。

銀行に限りませんよね。食品偽装が事件になるのは、本来、食品の品質が保証されているからです。品質が保証されてなければ安心して買えません。自動車だってそうです。買ったらすぐに壊れてしまったら、どんなに温和なあなたでも「新品に交換しろ!」っていいますよね。どうしてでしょうか?自動車はカンタンには壊れないと「品質保証」されているからです。

このように普段買うものは、「品質保証」されているものばかりです。

ところが、証券会社でする取引は何一つ品質が保証されていません。株券だって社債だって、「安心」とまことしやかにいわれている投資信託だって、すべての商品は品質が保証されていません。1年満期の投資信託に100万円投資したときに、1年たてば必ず100万円で戻ってくるでしょうか。答えはNo!です。

証券会社をあやしく感じるのは、証券会社という会社があやしいからではないのです。証券会社の取り扱っているモノが、普段買い物しているモノと違って「品質保証」されていない、100万円が買ったモノがゼロ円になってしまうことがあるから、証券会社はあやしいように見えるんです。

<公正な価格>
品質が保証されていないモノを取引するなんてギャンブル以外の何物でもない!かというと、そうではありません。株券は品質が保証されていません。品質保証されてないので、公正な値段がわかりません。ある株券の株価が1000円だとして、1000円がホントに公正な価格なのかどうか、誰にもわかりません。ただ、わかることは、(ここが大事なところなのですが)市場で取引されている価格のみです。

市場で取引されている株券の価格が公正であるためには、どういう「手段」が考えられるでしょうか。一つには、株券を発行している会社がバンバン会社の情報を発表することが考えられます。業績が悪いとわかったら、すぐに「すみません!業績悪いです!」と発表してくれれば、株券は売られて下がります。業績がよければ逆のことが起きますよね。会社が情報を発表することを、専門的には「情報開示」といいます。価格が公正であるための「手段」の一つは、「情報開示」が考えられますね。

他には何かないでしょうか。株券は基本的に証券会社でしか買えませんから、証券会社が、業績の悪い会社を「この会社、もう絶好調ですよ!」とウソをつくと、買う人が増えて株価が上がります。ところが、実際には大赤字だった!なんてことが「情報開示」でわかったら、株価は暴落、買った人たちは大損です。ですから、証券会社がウソをついたり、不正なことをしたりしないように、証券会社を厳しく法律で規制する必要があります。証券会社の規制を、専門的には「業者規制」といいます。「業者規制」も価格が公正であるための「手段」の一つだということです。

証券会社を「業者規制」で厳しく取りしまっても、証券会社以外の一般の人がウソの情報を流したり、不正なことをしたりしたら、やっぱり、他の人が同じように大損してしまうことだってあり得ますよね。だから、一般の人の行動も規制しておく必要があります。すべての人に対する規制を、専門的には「不公正取引規制」といいます。価格が公正であるための「手段」の一つには、「不公正取引規制」も考えられます。

<金融商品取引法の目的>
さあ、ここまで読まれた方。お疲れ様でした!これが金融商品取引法のすべてです。

「これがって何が?」

金融商品取引法は、「開示規制」「業者規制」「不公正取引規制」の3つの規制を集めたものなのです。どうして、3つの規制を集めて、金融商品取引法なんて法律を作ったのか、金融商品取引法の目的は何か?開示規制も業者規制も不公正取引規制も、すべて価格が公正であるための手段でしたよね。金融商品取引は、「品質保証」のないモノの価格が公正であるために存在する法律なのです。価格が公正であることを、専門的には「公正な価格形成」といいます。つまり、金融商品取引法とは、開示規制、業者規制、不公正取引規制の3つの規制を集めて、公正な価格形成を実現するためにある法律なのです。

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ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。


JSL行政書士事務所
Tel: 03-5533-8785

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、金融商品取引法専門メールマガジンを200社を超える金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

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