なぜ金融商品取引法はあるのか

2007年9月30日に証券取引法という法律が全面的に改正されて、名前まで変わってしまいました。目的も少し変わったというかわかりやすくなりました。では、金融商品取引法はどうしてあるのでしょうか?その目的を探ってみましょう!

<証券会社と銀行>
話がそれるようですが、金融商品取引法がどうしてあるのかを探るために、証券会社について考えてみましょう。証券会社といえば、株券を売ったり買ったりする会社ですよね。証券会社ではほかにいろいろな取引ができますが、何をするにしても、証券会社と付き合うのって抵抗ありませんか。銀行に比べて、証券会社ってなんかあやしくないですか?

ちなみに、私は大学を卒業して信託銀行という銀行に入社しましたが、それから転職をかさねて、いくつかの外資系証券会社のコンプライアンスを長年担当しています。その本人がいうのですから、間違いありません。証券会社はなんかあやしいです!

どうして証券会社はあやしいのでしょうか?(あやしくないと思っている方、すみません!)

<証券会社と品質保証>
証券会社があやしく感じるのは、証券会社で取引できるものは、一つの例外もなく「品質保証」がないからです。株券を買えばわかることですが、株券の価格である株価は毎日のように動いています。上がればいいですが、当然、下がることだってあります。

銀行の1年定期預金に100万円を預ければ、1年後には必ず100万円が戻ってきます。銀行が倒産しても戻ってくる仕組みになっています。100万円預ければ100万円戻ってくるように、銀行の預金は品質が保証されています。

銀行に限りませんよね。食品偽装が事件になるのは、本来、食品の品質が保証されているからです。品質が保証されてなければ安心して買えません。自動車だってそうです。買ったらすぐに壊れてしまったら、どんなに温和なあなたでも「新品に交換しろ!」っていいますよね。どうしてでしょうか?自動車はカンタンには壊れないと「品質保証」されているからです。

このように普段買うものは、「品質保証」されているものばかりです。

ところが、証券会社でする取引は何一つ品質が保証されていません。株券だって社債だって、「安心」とまことしやかにいわれている投資信託だって、すべての商品は品質が保証されていません。1年満期の投資信託に100万円投資したときに、1年たてば必ず100万円で戻ってくるでしょうか。答えはNo!です。

証券会社をあやしく感じるのは、証券会社という会社があやしいからではないのです。証券会社の取り扱っているモノが、普段買い物しているモノと違って「品質保証」されていない、100万円が買ったモノがゼロ円になってしまうことがあるから、証券会社はあやしいように見えるんです。

<公正な価格>
品質が保証されていないモノを取引するなんてギャンブル以外の何物でもない!かというと、そうではありません。株券は品質が保証されていません。品質保証されてないので、公正な値段がわかりません。ある株券の株価が1000円だとして、1000円がホントに公正な価格なのかどうか、誰にもわかりません。ただ、わかることは、(ここが大事なところなのですが)市場で取引されている価格のみです。

市場で取引されている株券の価格が公正であるためには、どういう「手段」が考えられるでしょうか。一つには、株券を発行している会社がバンバン会社の情報を発表することが考えられます。業績が悪いとわかったら、すぐに「すみません!業績悪いです!」と発表してくれれば、株券は売られて下がります。業績がよければ逆のことが起きますよね。会社が情報を発表することを、専門的には「情報開示」といいます。価格が公正であるための「手段」の一つは、「情報開示」が考えられますね。

他には何かないでしょうか。株券は基本的に証券会社でしか買えませんから、証券会社が、業績の悪い会社を「この会社、もう絶好調ですよ!」とウソをつくと、買う人が増えて株価が上がります。ところが、実際には大赤字だった!なんてことが「情報開示」でわかったら、株価は暴落、買った人たちは大損です。ですから、証券会社がウソをついたり、不正なことをしたりしないように、証券会社を厳しく法律で規制する必要があります。証券会社の規制を、専門的には「業者規制」といいます。「業者規制」も価格が公正であるための「手段」の一つだということです。

証券会社を「業者規制」で厳しく取りしまっても、証券会社以外の一般の人がウソの情報を流したり、不正なことをしたりしたら、やっぱり、他の人が同じように大損してしまうことだってあり得ますよね。だから、一般の人の行動も規制しておく必要があります。すべての人に対する規制を、専門的には「不公正取引規制」といいます。価格が公正であるための「手段」の一つには、「不公正取引規制」も考えられます。

<金融商品取引法の目的>
さあ、ここまで読まれた方。お疲れ様でした!これが金融商品取引法のすべてです。

「これがって何が?」

金融商品取引法は、「開示規制」「業者規制」「不公正取引規制」の3つの規制を集めたものなのです。どうして、3つの規制を集めて、金融商品取引法なんて法律を作ったのか、金融商品取引法の目的は何か?開示規制も業者規制も不公正取引規制も、すべて価格が公正であるための手段でしたよね。金融商品取引は、「品質保証」のないモノの価格が公正であるために存在する法律なのです。価格が公正であることを、専門的には「公正な価格形成」といいます。つまり、金融商品取引法とは、開示規制、業者規制、不公正取引規制の3つの規制を集めて、公正な価格形成を実現するためにある法律なのです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

ブログの内容は個人的見解ですので、正確性は保証いたしません。また、ブログの内容に関する質問を含め、質問には一切回答いたしかねますので、ご了承ください。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード