プロ向け運用業


運用業務の種類として、適格投資家向け投資運用業という運用業務があります。一般的に「プロ向け運用業」と呼ばれています。

プロ向け運用業は、運用財産の権利者(投資家)が、適格投資家であり、運用総額が200億円以下の場合にのみ認められます。

適格投資家とは、特定投資家と特定投資家に準ずる者等を指します。

プロ向け運用業を行おうとする者は、運用業者として登録を受けなければなりませんが、登録を受けることができる要件が、通常の運用業者よりも、緩くなっています。

まず、通常の運用業者は、取締役会設置会社でなければなりませんが、プロ向けは、監査役設置会社で足ります。

次に、通常の運用業者は、資本金及び純資産が5000万円以上でなければなりませんが、プロ向けは、資本金及び純資産が1000万円以上で足ります。

緩和されている要件として大きいのは、人的構成要件です。

運用業者に限らず、人的構成要件を考えるときには、次の3者が重要です。

1 コンプライアンス部門担当者

2 フロント部門担当者

3 内部監査部門担当者

いずれの部門の担当者も、行おうとする金商業に関する知識と経験を有することが求められますが、プロ向けの場合は異なります。

コンプライアンス部門担当者は、運用業に関するコンプライアンス経験ではなく、金商業に関し、1年以上、法令等を遵守させるための指導に関する業務に従事していた者であれば、コンプライアンス部門担当者になり得る資格があると認められます。

さらに、コンプライアンス業務を外部委託することも認められています。外部委託をする場合、コンプライアンス担当者は、金商業に関する1年以上の経験すら求められません。

フロント部門担当者は、運用を行う業務に従事していた者である必要はなく、運用を行おうとする資産に関し、1年以上、助言又は運用を行う業務に従事していた者であれば、フロント部門担当者になり得る資格があると認められます。助言の経験でも良いということです。

内部監査部門担当者は、通常の運用業者の場合、各部門から独立した者であることが求められますが、プロ向けの場合、法令等の遵守が適切になされるような体制が整備されると認められる場合には、コンプライアンス部門の人員と内部監査の人員が同一人物であっても構いません。

以上が要件の緩和になります。

プロ向けの他の特徴としては、投信の取扱いに関する特例があります。

投信(外国投信を含む)の私募の取扱いは、一種業務であり、証券会社でないと行うことができません。

ところが、プロ向け運用業者が、投資一任契約に基づき、運用財産の運用を行う権限の全部の委託を受けている場合、プロ向け運用業者が適格投資家を相手方として行う私募の取扱いは、二種業務とみなされます。

したがって、プロ向け運用業者が二種登録も受けている場合には、一種業者でなくても、自社が運用する投信の私募の取扱いを行うことができます。

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プロ向け運用業3

11月4日のメールマガジンからの抜粋です。



前回お話しした手立てについては、以下の通り、規定されています。

1 私募の取扱いの対象となる有価証券の発行者と取得者との間及び取得勧誘を行う者と取得者との間において、取得者が取得した有価証券を適格投資家以外の者に譲渡を行わない旨を定めた譲渡契約を締結すること(令第15条の10の6)

2 有価証券の取得者が当該有価証券を転売しようとする場合には、売付け勧誘等を行う者と買付者との間において、買付者が当該有価証券を適格投資家以外の者に譲渡を行わない旨を定めた譲渡契約を締結することが買付条件になっていることを告知すべきこと(金商業等府令第16条の5)が、1の譲渡契約に定められていること

ちょっとわかりづらいですが、「転売制限」をテーマにした以前のメルマガに書いた「伝言ゲーム」が確実に行われるための手立てを言っています。

本来、投信等の私募の取扱いは、二種業務ではなく、一種業務です。ただ、投資家が適格投資家に限定されていることから、みなし二種業務とされ、登録要件の緩い二種登録をするだけでできることになっています。

適格投資家とは、適格機関投資家でもなく、特定投資家でもない、別個の投資家で、特定投資家、特定投資家に準ずる者、金商業者の役員等です。(今年3月の適格機関投資家等特例業務の制度改正に伴い「準ずる者」の定義が、当該改正に平仄を合わせ改正されている)

以上の説明から、プロ向け運用業は、一項有価証券にかかる運用において、最も威力を発揮することは事実ですが、当然のことながら、二項有価証券の運用であっても、利用できる制度です。

二項有価証券の運用の場合、当たり前ですが、みなし二種業務を考える必要がありません。二項有価証券の私募の取扱いは、みなすまでもなく、二種業務だからです。



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プロ向け運用業2

11月4日のメールマガジンからの抜粋です。



プロ向け運用業者が、投資信託・外国投資信託や投資証券・外国投資証券に係るファンドの運用を行う権限の全部の委託を受けた場合、プロ向け運用業者が適格投資家を対象に行う当該有価証券の私募の取扱いは、二種業務とみなされます。(金商法第29条の5第2項)

プロ向け運用業者による投信等の私募の取扱いが、二種業務とみなされるためには(後述するように本来は一種業務)、次の要件をすべて満たす必要があります。

1 私募の取扱いの対象有価証券が、投資信託・外国投資信託、投資証券・外国投資証券などに限ること

2 プロ向け運用業者が、当該有価証券のファンドの運用を行う権限の全部の委託を受けること

3 私募の取扱いの対象となる顧客が、適格投資家に限定されていること

1は、説明する必要がないでしょう。

2は、どうしてかというと、プロ向け運用業者が、ファンドの運用を行う権限を全部委託されていれば、プロ向け運用業者が、運用財産の状況を最もよく知ることになるため、みなし二種業務の取引の相手方への説明義務を果たすことができる状態になるからです。

3は、読んで字のごとしですが、プロ向け運用業者は、私募の取扱いの対象となる有価証券が、適格投資家以外の投資家に譲渡されない手立てを組む必要があります。この手立てがないと、制度がしり抜けになったしまうおそれがあるからです。(次回に続く)



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プロ向け運用業1


11月4日のメールマガジンからの抜粋です。



最近、プロ向け運用業(正確には「適格投資家向け投資運用業」)の相談を受けることがかなり多いので、今回は、プロ向け運用業を取り上げます。

まず、プロ向け運用業は、①投資家が適格投資家に限定されること、②運用財産の上限が200億円であることから、登録を受けるための要件が緩和されています。

具体的には、運用業者は、本来、取締役設置会社等でなければ登録を受けることができませんが、プロ向け運用業者は、監査役設置会社であれば足ります。(金商法第29条の5柱書)

また、運用業者の資本金及び純資産は、本来、5000万円以上必要ですが、プロ向け運用業者の資本金及び純資産は、1000万円以上です。(金商法施行令第15条の7第1項第7号)

さらに、人的構成要件が緩和されています。

第1に、運用業者の場合、本来、投資判断部門と注文発注部門が分離されていなければなりませんが、プロ向け運用業者の場合、分離は求められず、運用業務にかかる禁止行為を防止する措置が講じられていれば良いことになっています。(監督指針Ⅵ-2-7-1(1))

第2に、運用業者の場合、本来、コンプライアンス部門の設置が求められていますが、プロ向け運用業者の場合、コンプライアンス業務の外部委託が認められています。(監督指針Ⅵ-2-7-1(2))

もっとも、プロ向け運用業者が、後述するみなし二種業務をするために二種登録をする場合は、当然のことながら、プロ向け運用業者は、二種業務に必要な人的構成要件を満たさなければなりません。

ただし、二種登録をする場合であっても、プロ向け運用業者は、コンプライアンス業務を外部委託することが可能であることに変わりありません。(平成24年2月15日パブリックコメント回答1頁1)

プロ向け運用業との関連で記憶しなければならないことは「みなし二種業務」です。(次回に続く)



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変更登録の期限まであと4か月


平成26年改正金商法の施行から2か月が経ちました。

今回の内容は、ネットに有価証券、特に、不動産信託受益権やファンドの情報を掲載している金商業者の方には重要ですので、あらためて確認するようにしてください。

<不動産信託受益権やファンド情報のネット掲載>
平成26年改正金商法に基づき、「電子募集取扱業務」を行う金商業者の方は、例外なく、施行から6か月以内、つまり、平成27年11月までに「変更登録」の申請手続が必要です。(金商法第31条第4項、金商法施行令附則第2条第1項)

これをやらないと、ネットに有価証券の情報を掲載できなくなります。

具体的には、信託登記されている不動産信託受益権の情報をネット上に掲載したり、ファンドの情報をネット上に掲載している金商業者を直撃します。

ここで、前提知識として、「電子募集取扱業務」と「変更登録」の意味を理解しておく必要があります。

<電子募集取扱業務>
「電子募集取扱業務」とは、金商法第3条各号に掲げる有価証券(不動産信託受益権や事業型ファンドなど)又は上場有価証券以外の有価証券(証券投資型ファンドなど)について、ネットで募集の取扱い(取得勧誘)を行うことです。(金商法第29条の2第1項第6号)

ただし、国債、地方債、政保債、有価証券届出書が提出されている有価証券、50%超を金銭の貸付けで運用する事業型ファンドなどの募集は、電子募集取扱業務から除かれます。(金商法施行令第15条の7)

読みにくい規定ですが、ネットに有価証券情報を掲載している金商業者の方は、必ず、条文を確認してください。

なお、一項有価証券の場合、ネットに載せてしまうと、募集になり、一般的に有価証券届出書が提出されますので、実務的には、二項有価証券の販売に関する業務の話です。

もっとも、有価証券届出書の提出又は発行登録がされていない一項有価証券の情報をネットに掲載する行為は、電子募集取扱業務になります。

<変更登録>
「変更登録」とは、従来の業務に追加して新たな業務を始めるときに行う登録申請手続のことです。申請手続で、届出(事後)ではないため、当然、事前手続であり、金融庁の審査を受けます。

提出書類は、原則として、以下の通りです。(金商業等府令第22条第1項及び第2項)

1 変更登録申請書
2 変更内容・理由書面
3 会社誓約書
4 業務方法書(変更後のもの)
5 人的構成に係る書面
6 役員・政令で定める使用人の履歴書
7 役員・政令で定める使用人の住民票抄本
8 役員・政令で定める使用人のないこと証明
9 役員・政令で定める使用人の誓約書
10 特定関係者に係る書面(最新版)
11 最終の貸借対照表

ネットに有価証券情報を掲載している(ネットで取得勧誘を行っている)金商業者の方は、この手続をしないとできなくなってしまうので、変更登録申請が必要か否かにつき、あらためて確認するようにしてください。

<不動産と不動産信託受益権>
余談ですが、不動産信託受益権の場合、信託財産である不動産の物件情報と不動産信託受益権の情報とは意味が違います。不動産信託受益権とは、受益者が受益者に対して所有する配当・分配支払請求権という金銭債権だからです。

このように考えると(考え方は正しい)、信託登記された不動産であっても、信託財産である不動産の物件情報をネットで公開することは電子募集取扱業務に該当しないことになりそうですが、こう考えてしまうと、実務感覚的に不自然ですし、物件情報の記載が義務付けられている前書面の規定が宙に浮いてしまいそうですから、信託登記された不動産の物件情報をネットに掲載すれば、電子募集取扱業務があったと考えるのが妥当です。


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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

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お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
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