売出しの実務8


<外国証券情報>
外国証券売出しに該当する売出しに関しては法定開示(発行者による届出と目論見書の作成・交付)は不要です。

代わって、外国証券売出しを行う証券会社は、「外国証券情報」を提供又は公表しなければなりません。(金融商品取引法27条の32の2、証券情報等の提供又は公表に関する内閣府令12条1項)

有価証券届出書(法定開示)が、発行者の情報である「企業情報」と発行された有価証券の情報である「証券情報」の記載を要求しているように、外国証券情報は、発行者の情報である「発行者情報」と発行された有価証券の情報である「証券情報」を要求しています。

外国証券情報にも一定のルールがあります。

外国証券情報は、直近の事業年度の情報でなければなりません。また、外国証券情報の全部又は一部の内容が、発行者等により公表されている情報(公表情報)に含まれているときは、公表情報を参照することができます。さらに、外国証券情報の提供又は公表を必要としない場合として、外国証券売出しの対象となる外国証券が、外国国債、外国地方債、外国特殊法人債(政保債に限る)の場合、

複雑ですので、整理です。

外国証券の売出しは、売出しの一種です。ただ、金融商品取引法4条1項4号によって、発行者の届出義務が免除されています。金融商品取引法13条本文から、発行者の目論見書作成義務もありません。

すべての外国証券の売出しについて発行者の届出が免除されているかというと違います。基本的に1 価格取得の容易性、2. 外国における継続売買、3 経理情報の公表の3つが揃わないと、外国証券売出しにならず、したがって、発行者は届出義務を負います。すべてが揃っている外国証券の売出しは、金融商品取引法27条の32の2により、外国証券売出しといいます。

外国証券売出しに該当する場合、売出しを行う証券会社(正確には金融商品取引業者等)は、外国証券情報を提供又は公表しなければなりません。外国証券情報は、発行者情報と証券情報に大別されます。

なお、外国証券の売出しと外国証券売出しを分けて使っている点にご注意ください。外国証券の売り出しは売出しの一種で、さらに、外国証券売出しは外国証券の売出しの一種です。

以上が、外国証券売出しの大枠です。

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売出しの実務7


外国証券売出し
外国で既に発行された有価証券の売出し(証券会社が行うものに限る)のうち、一定の要件を満たすものを「外国証券売出し」と呼びます。外国証券売出しは、売出しの一種ですが、通常の売出しと決定的に違う点は、法定開示(発行者による届出や目論見書の作成)が不要だということです。

外国証券売出しは、新発はダメです。売出しの一種なのですから既発に決まっていますが、新発なら募集か私募に関する規定が適用されるからです。

外国で発行されてしまったために(国内で勧誘行為が行われなかったために)、募集や私募の規定が適用されないもの、これが外国証券売出しの対象となる外国証券です。

<一定の要件>
外国証券売出しの適用を受けるためには、一定の要件に該当していなければなりません。この一定の要件が複雑です(金融商品取引法施行令2条の12の3)。

外国政府等民間以外の者が発行する債券と民間が発行する債券とで取扱いをわけています。

外国証券売出しの対象となる外国国債、外国地方債、外国特殊法人債(日本で言えば会社法以外の法律で規定されている債券のこと)は、次の3点を満たす場合です。

(1)外国証券売出しの対象となる債券に関し、国内における売買価格に関する情報をインターネット等により容易に取得できること

(2)発行者が発行している債券が外国で継続的に売買されていること

(3)財政・経理情報が発行者等により日本語又は英語で公表されていて、かつ、インターネット等により容易に取得することができること、の3点を満たす必要があります。

ここでポイントは、(2)で外国で継続的に売買されていなければならない債券は、外国証券売出しの対象となる債券に限らず、発行者が発行している他の債券でも良いこと、(3)で財政・経理情報が必ずしも発行者により公表されている必要がないという点です。ここが、民間が発行する債券と取扱いが異なる点です。

民間が発行する債券の例を示した方がわかりやすいと思いますので一つだけ取り上げてみます。

外国証券売出しの対象となる株絡み債を除く債券等(海外発行債券)は、次の3点を満たす場合です。

(1外国証券売出しの対象となる債券に関し、国内における売買価格に関する情報をインターネット等により容易に取得できること

(2)外国証券売出しの対象となる海外発行債券が一定の外国証券取引所(正確には外国金融商品取引所)に上場されていること、又は外国証券売出しの対象となる海外発行債券の売買が外国で継続的に売買されていること

(3)外国証券取引所の規則又は継続的に売買されている外国の法令に基づき、経理情報が発行者により日本又は英語で公表されていて、かつ、インターネット等により容易に取得することができることの3点です。

(2)と(3)が、外国政府等民間以外の者が発行する債券と民間が発行する債券との間で、少し異なる点に注意が必要です。

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売出しの実務6


<私売出しと国内社債>
既にお話しましたように、売出しと私売出しの関係は、募集と私募の関係とは違います。なぜなら、国内で発行された社債、国内社債には、原則として、私売出しの適用の余地がないからです。

なぜか。

国内社債は、必ず、募集か私募で発行されます。他はありません。

募集で発行された場合には発行者による届出がなされます。流通市場では、既に開示された有価証券の売出しとして取引されます。

既に開示された社債(届出の効力が生じている社債)の売出しは、再度届出を行ったり、目論見書を交付したりしなくても、売出しが可能です。(わからない方は前回までの「売出しの実務」をご覧ください)

私募で発行された場合には「転売制限」が付されます。適格機関投資家限定の社債であればその旨、分割禁止制限がある社債あるいは一括譲渡制限がある社債であればその旨が、原則として、文書で告知されます。

一度転売制限が付された社債は、原則として、償還まで同じ転売制限が付されます。

以上のように国内社債は、募集又は私募(発行)段階から開示規制上の手当てがなされるため、私売出しを概念することができないわけです。

<私売出しの適用>
では、私売出しはいつ適用されるのか。

国内で募集又は私募で発行されなかったために、法定開示も行われていなければ、転売制限も付されていない社債、開示規制上の手当てがなされていない社債、つまり、外国で発行されたか、あるいは、国内で発行されはされたものの外国でのみ勧誘された社債である外国社債に適用されるわけです。

<私売出しの要件>
私売出しの要件は、私募の要件と同じと考えて実務上問題ありません。つまり、プロ私募の場合であれば、適格機関投資家限定という転売制限を付せばよく、少人数私募の場合であれば、分割禁止制限、あるいは、一括譲渡制限の転売制限を付せば良いことになっています。

一点異なるのは、通算期間です。少人数私募の場合、50名計算は、過去6か月間通算すれば良いですが、少人数私売出しの場合、50名計算は、過去1か月通算する必要があります。

<外国債券の売出し>
なお、混乱されるかもしれませんが、外国で既に発行されてしまっている社債であっても国内で売出しはできますので、念のため。

ただし、外国債券の売出しには例外規定があります。それが「外国証券売出し」です。

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売出しの実務5


<疑問2>
売出しを行った社債の打ち返し玉(跳ね返り玉)の再販も売出しに該当し、再び発行者による届出が必要になるのか。また、目論見書の交付も必要になるのか。

<発行者による届出>
売出しを行った社債の打ち返し玉(跳ね返り玉、買戻し)の再販も、原則として売出しです。繰り返しになりますが、有価証券の販売は、原則として売出しです。ですから、打ち返しの再販売も、原則として、売出しに該当します。したがって、原則に従えば、発行者は届出を行わなければなりません。だから、発行者が届出を行っていなくても、50名以上に売付け勧誘等を行っても問題ありません。

ただし、既にお話しているように、開示が行われている有価証券の売出しは、売出しには違いありませんが、金融商品取引法4条1項3号から、届出不要の売出しに該当します。

<私売出し>
話は脱線しますが、私売出しについて若干触れておきます。

私は、一貫して有価証券の販売は、原則として売出しだと主張しています。例外は「私売出し」ではありません。例外は、金融商品取引法施行令1条の7の3に規定する取引、例えば、証券取引所における有価証券の売買です。

売出しと私売出しは、募集と私募と違い、完全な対の概念ではありません。募集を定義する金融商品取引法2条3項は「募集に該当しない」勧誘行為は私募であると規定していますが、売出しを定義する金融商品取引法2条4項には、私売出しという言葉は出てきません。ちなみに、私売出しは、金融商品取引法2条8項1号に規定する有価証券の売買の「売り」の一種です。

では私売出しとは何かについては、項目をあらためて説明することとします。ここでは、募集と私募の関係と、売出しと私売出しの関係は必ずしも同じではないということを記憶しておくことしましょう。

<目論見書の作成>
売出しを行った社債の打ち返しを再販する場合、目論見書の作成が必要か。これは、企業内容等の開示に関する内閣府令11条の4各号から、私は社債の再販は、売出しであっても、目論見書の交付は不要であると解しています。実務的にいえば、50名以上に勧誘しても目論見書の作成(交付)は不要だということです。

以上から、売出しを行った社債の打ち返し玉の再販は、売出しに該当するけれども、金融商品取引法4条1項3号から、原則として発行者は届出不要であり、企業内容等の開示に関する内閣府令11条の4号から、目論見書の作成(交付)も不要であると解しています。実務的にいえば、何もしないで50名以上に勧誘可能という解釈です。

<3か月の目論見書の更新>
「金融商品取引法15条6項から、売れ残った社債について、効力発生日から3か月は目論見書を交付しなければならない義務があることは知っているが、情報を更新しないで良いのか」とよく尋ねられます。結論は、「理論上、更新の義務はない」です。なぜなら、既に開示され社債については、目論見書の作成義務がないのですから、理論上、新たに作成されることは、原則としてないからです(作成されないものは交付できない)。

ただ、3か月の間に重要な事実が発生し、販売証券会社が当該事実を知っていた場合であっても開示しないというのは開示規制の趣旨に反しますし、証券会社としては誠実義務違反にも問われかねないので、重要事実の開示は、内部者情報である場合など開示できない事情がない限り、行う方が良いでしょう。


さて、ここまでの説明は、国内で発行された社債、国内社債の話です。外国で発行されたか、国内で発行されても国内で勧誘行為が行われなかった社債、外国社債の取扱いには、国内社債の規制とは全く異なる規制が適用されます。

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売出しの実務4


前回の続きです。

<疑問1>
売出しを行った社債の売残りを販売する行為も売出しに該当し、再び発行者による届出が必要なのか。また、目論見書の交付も必要になるのか。

売出しを行った社債の売残りを販売する行為は売出しに該当しますが、最初の売出しの効力が生じている場合には、発行者による再度の届出は必要ありません。

では、目論見書の交付はどうなるか。

<目論見書の作成について>
売出しにかかる有価証券の発行者は、原則として、目論見書を作成しなければなりません。金融商品取引法13条本文から、既に開示された有価証券の売出しにつても同様です。

既に開示された有価証券については、届出は不要ですが、目論見書の交付は必要だということです。

ただし、企業内容等の開示に関する内閣府令11条の4・2号に注意です。同条同号の意味は、私は、既に開示された社債の売出しについては、目論見書の作成が不要という意味だと解しています。実務的にいえば、50名以上に売付け勧誘等をしても、売出しにはなるけれども、目論見書の交付は必要ないという解釈です。

<目論見書の交付について>
目論見書の「作成」は以上の通りですが、目論見書の「交付」については、売出しの結果、売れ残った社債を売却する場合には、売出しの届出の効力発生日から3か月間は、相手方に対して、目論見書を交付しなければなりません。

売残りの売却は、当初の売出しの延長と考えられること、また、価格がこなれていないこと(情報を十分に反映していない)が考えられるからです。

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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