システムリスク


今日は18:00から「かすみの会」があります。

かすみの会はこのブログでも何度か紹介していますが、もともと、助言業者のコンプライアンス担当者が集まって、毎回、異なるテーマについて、情報交換や意見交換を行う会合です。

助言業者の会であっても二種業務や運用業務を行っている会社が多く、話が二種業務や運用業務に飛ぶことがあります。

今日のテーマは「システムリスク」です。

「うちは、ネット取引をしていないから、システムリスクは関係ない」という人が散見されますが、これは違います。

確かに、ネット取引をしている会社にとって、最大のシステムリスクはシステムエラーで取引が止まることかもしれませんが、ネット取引をしていない会社にとって、最大のシステムリスクは、おそらく、システム障害でメールが使えないとか、フォルダーにアクセスできないという状況でしょう。

<システム障害は金融庁報告事項>
システム障害は、金融庁報告事項です。

システム障害が報告事項になったのは、2000年問題のときです。このとき、システム障害の報告義務が定められ、現在に引き継がれています。

<BCPとの関係>
システム障害は、BCP(Business Continuity Plan)に組み込まれていなければなりません。

BCPとは、直訳すると、事業継続計画です。天災や人災や事故で事業が通常通り継続できなくなったときに、どういうアクションをとらなければならないかを予めBCPとして社内で規定しておきます。

コンプライアンス担当者は、BCPが発動されると、明確な義務規定はどこにもありませんが、金融庁に報告することになっています。

システムリスクに話を絞ると、システム障害の復旧のめどが立たないときには、BCPサイトで執務をとることになります。

BCPサイトとは、例えば、東京に本社(唯一の営業所)がある会社の場合、東京で事業の継続ができなくなったときに、一時的に執務をとる場所です。横浜や大阪などにBCPサイトを設置する会社や、海外にBCPサイトを設置する会社があります。

ちなみに、BCPサイトで継続的に業務を行うことは禁止されています。あくまで、緊急避難の目的でのみ、利用されなければなりません。

<データの保管>
データを自社のサーバーに保管している会社は、システム障害で自社のサーバーにアクセスできなくなると、業務の執行が滞るリスクがあります。

また、サーバーのメンテナンスには多額の費用がかかる可能性があります。

このような理由から、データの保管を外部委託したり、クラウドサービスを利用したりしている会社も少なくないかもしれません。

データの保管場所の分散やバックアップファイルの作成は、システムリスクが顕在化したときの被害を回避する手段の一つです。

ここで注意すべきは、データの保管場所として、自社サーバーではなく、他社のサーバーを借りる行為は外部委託ですから、監督指針の定める外部委託のルールに従って行わなければなりません。

以上、概観してきたように、コンピュータ社会において、システムリスクと無関係の金商業者は、通常、ありません。

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内部管理態勢6


財務局が公表している業務方法書の中で、唯一と言っても良いくらい「緩い」のは、社内研修の実施に関する記載です。

<第9条>
「社内教育・研修部門は、本店総務部とし、役職員の資質の向上を図るため、コンプライアンス全般及び業務全般に関する研修を定期的あるいは随時実施することとする。」

社内研修は、「定期的あるいは随時」実施されるとあります。

この意味は、「定期的に実施することは義務で、他にも法令等の改正の際には、随時実施しなさい」なのですが、「定期的あるいは随時」と書くと、まるで、随時実施すれば良いという誤解を生じかねません。

いずれにせよ、コンプライアンス全般に関する社内研修は、最低でも6か月に1回は、実施されなければなりません。

財務局が公表している業務方法書の記述の中で、研修に関する記述は危険ではなく、むしろ、緩すぎて、金商業者の内部管理態勢の弱体化を促しかねません。

<別紙規程>
内部管理態勢とは、直接の関係はありませんが、財務局が公表している業務方法書の最後の注意書きに、こう書いてあります。

「業務方法書の中で、上記規程を「別紙○○規程の定めによる」などと引用している場合は、業務方法書を構成する一体の社内規程とみなします。よって、当該規程に変更が生じた場合は、業務方法書の変更届出を行う必要があります。」

「別紙○○規程の定めによる」と書くと、業務方法書はすっきりするので良いのですが、うっかりすると、別紙規程の変更に伴う変更届出を失念するおそれがあります。

だから、別紙規程方式はとらない方が得策です。

<定期的>
危険な業務方法書の最後に、「定期的」という単語の「使用上の注意」について触れておきます。

業務方法書に限らず、その他の社内規程においても「定期的」という単語が頻繁に使用されている社内規程を見かけますが、定期的という単語を使用するときは、よほど慎重に使用しなければなりません。

「定期的」と記載されている業務が、定期的に実施されていなければ、社内規則違反ですし、その社内規則が業務方法書だった場合は、業務方法書の虚偽記載です。

社内規則に定期的と記載されていながら、定期的に実施されていない業務がある状態は、内部管理態勢の不備として指摘されますので、定期的という単語は慎重に使用しなければなりません。

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内部管理態勢5


財務局が公表している業務方法書のサンプルに内部監査について触れている箇所がありますが、実際に、業務方法書を作成する場合には、内部監査の記述は、相当慎重に行うべきです。

<第6条第5項第2号>
「内部監査部門は、少なくとも1年に1度は内部監査を実施し、健全な内部管理態勢の確保に努めるものとする」

実際にあった事例は、業務方法書に「内部監査部は1年に1回以上内部監査を実施する」と記載されていたにもかかわらず、登録後3年以上たった今も、内部監査が一度も行われていなかったというケースです。

これは、明らかに業務方法書の虚偽記載です。

<内部監査>
私が、内部管理態勢の検証を依頼されるときに最も重点を置く項目の一つは、「内部監査態勢」です。

「内部監査規程は作成されているか」、「内部監査計画は立案され実行されているか」という点から、「内部監査部はそもそもあるのか・・・」という点まで、確認します。

内部監査とは、簡単に表現すると、「自己点検」のことです。外部監査ではなく、自分で自分を点検してみようじゃないか、というのが内部監査です。

ですから、ちなみに、「内部監査部の外部委託」はあり得ません。

内部監査の方法論は様々で、金商業者の規模に応じて、工夫する必要があります。

現実問題としては、この工夫が簡単ではないのですが、いずれにせよ、会社の実態に即した内部監査態勢を整備する必要があります。

<頻度>
問題になるのは、内部監査の頻度です。1年に何回実施するのかという点です。

大手証券会社の人が聞くと「意味がわからん」となるところです。大手証券会社では、内部監査部門は、一年中、途切れなく、内部監査を行っているからです。

大手証券会社の体制は、金商業者全体から見れば例外中の例外で、現実は、内部監査専門部門を作ることだけでも大変で(というかムリで)、内部監査を1年に1回実施できるだけの体制が整備されていれば合格点です。

内部監査は、そうは言っても、自己点検・自主点検ですから、年末の大掃除ではありませんが、1年に1回以上はすべきでしょう。

ただし、二種業者に多く見受けられますが、金商業の全体の業務に占める割合が少なく、数も限られている場合には、会社の実態に即して、内部監査は「随時」実施することにしても、問題はありません。

参考までですが、「随時」にする場合には、「内部監査はどのような手続きを経て、随時行われるか」を明記することが重要です。一般的には、「代表取締役の義務・責任において」随時実施されることになるでしょう。

<実績がゼロの場合>
「金商業の実績がゼロでも内部監査を行う必要があるのか」という質問を受けることがありますが、回答は「ある」です。

まず、本当に実績がゼロなのか、検証する必要があります。金商業と考えていなかったのに、金商業を行っていたという事例があり得るからです。

実際、実績がゼロというのはおかしな話なのです。

登録から3か月が経っても、金商業者としての活動を何もしていない場合、金商法に基づいて、登録を強制的に取り消されることがあります。

何もしない会社を金商業者として登録させておくと、名義貸しの原因となったり、登録しているという勲章(?)のみが営業行為に使用されたりして、投資者保護に反することになりかねないからです。

だから、成約件数はゼロであったとしても、顧客勧誘実績がゼロということはないので、「実績がゼロ」でも、内部監査は実施されなければなりません。

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内部管理態勢4


財務局が公表している業務方法書のサンプルのコンプライアンス担当部門(法令等遵守部門)に関する記述も慎重に行われなければなりません。

<第6条4項2号>
「法令等遵守部門は、本店総務部とし、営業担当部門から独立した体制を維持するものとする。」

サンプルでは、本店総務部ですが、コンプライアンス部でも法務部でも構いません。

サンプルでは、コンプライアンス担当部門は、営業担当部門から独立していることになっています。

確かに、コンプライアンス担当者は、営業担当者を兼任してはダメです。

ただ、業務方法書のサンプルが言っているのは、コンプライアンス担当者が営業担当者を兼任してはダメだ、ではなく、コンプライアンス担当部門は、営業部門から独立した体制を維持するということです。

問題は、「営業担当部門から独立した」の意味です。

営業担当部門の業務の流れを考えてみましょう。

まず、顧客に配布する営業資料を作成し、顧客にコンタクトして商品の説明を行い、商品を購入してもらうというのが、大体の流れでしょう。

コンプライアンス担当部門が営業部門から独立している体制とは、コンプライアンス担当部門が、この流れから独立しているという意味です。

実際に問題になったケースは、「営業資料の作成」です。コンプライアンス担当部門は、営業は当然しないけれども、営業資料の作成くらいなら手伝ってもよいかという点です。

<営業資料作成行為の位置付け>
証券会社出身の方であれば、「なんでそんな基本的なことが問題になるわけ?」と思うところですが、証券会社以外の業界では、必ずしも、基本的なことではありません。

結論から、先に話してしまいますと、営業資料の作成は、金商法においては、従前から、「営業行為」です。

だから、営業資料を作成する人は、金商法に規定する「外務員登録」を受けなければなりません。

これは私の解釈ではなく、金商法で外務員登録に関する業務の委託を受けている日本証券業協会の解釈です。

当然といえば当然のことです。

内部管理態勢の整備において、コンプライアンス担当部門が営業部門の作成した営業資料の適切性や適法性を審査する「広告審査」という過程がありますが、営業資料の作成をコンプライアンス担当部門が手伝ってしまっては、審査になりませんよね。

問題になったのは、コンプライアンス部門が、営業資料作成の「補助」をしていたケースです。

<営業資料作成の補助>
業務方法書で「法令等遵守部門は・・・営業担当部門から独立した体制を維持する」と宣言している以上、営業資料作成の補助もできません。

でも、現実問題としては、社員数が少ないため、コンプライアンス部門の担当者が、営業資料の作成の補助をする場合が考えられなくはありません。

このような場合は、コンプライアンス担当部門は、営業資料作成の「補助」はできるものとし、内部管理態勢の実効性を損なわないようにするために、補助の範囲を決めたうえで、実態を業務方法書に記載します。

財務局が公表している業務方法書のサンプルは、大きな会社を想定しているようですから、規模が小さな会社は、サンプル通りには記載しないで、実情に合った記載内容に修正する必要があります。

参考までに、営業資料作成の「補助」とは、営業資料の作成のために必要なデータを集める作業など、客観的にみて、営業行為と認められない範囲の事務のことです。

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内部管理態勢3


私は、金商業者の方から、内部管理態勢の検証を依頼されることが多いですが、検証の中で、最初に行うのが、業務方法書の検証です。

業務方法書は金商業者にとって憲法だからです。

憲法を知らないのでは、内部管理態勢の検証ができません。

<財務局公表の業務方法書>
関東財務局は、業務方法書のサンプルをサイトに掲載しています。各社各様であるべき業務方法書のサンプルを何のために掲載しているのか理由がまったくわかりませんが、公表しています。

ただし、関東財務局はきちんと「断り書き」をしています。業務方法書のサンプルの前に、こう書いています。

「あくまでも例示ですので同様に記載しないこと。自社の実態と相違するなど、虚偽記載の場合は、行政処分の対象となります。」

初めに「同様に記載しないこと」と言っています。同様に記載してはいけないと言っているのです。繰り返しになりますが、業務方法書は各社各様であるべきだからです。

また、実態を反映していないと「行政処分の対象になります」と言い切っています。

関東財務局は、また、サンプルの最後にも、次のように記載しています。

「虚偽の記載が判明した場合は、行政処分が科されます。」

サンプル通りに記載して会社の実態と合っていない場合は、行政処分が科されますと言い切っています。

<業務方法書の検証>
行政書士に作らせたり、財務局が公表しているサンプルをそのまま使用したりすると、危険な業務方法書になると前回書きましたが、どこが危険なのか、また、内部管理態勢とどのような関係があるのかについて、財務局が公表しているサンプルをベースに、具体的に見ていきましょう。

<第6条第2項第4号>
「当部門には、金融商品取引業務及び関連業務に関する知識及び経験を有する者を配置する。」

「当部門」とは、サンプルの場合、「本店営業部」を指していますが、各社の実情に合わせて、「営業統括部」でも、「営業部」でも構いません。

サンプルによると、当部門には金商業に関する知識と経験を有する者が配置されていることになります。

内部管理態勢の一側面は、管理部門による営業部門の管理態勢であると書きましたが、営業部門に金商業に通じている人を置くから、管理部門はこの人を通じて、営業部門の管理ができるという意味です。

ここで冷静に考えてみましょう。

業務方法書は、金商法に基づき、金商業の登録前に作成され、財務局に提出される書類です。登録されないうちに、金商業を行うと刑事罰が科されます。

サンプル通りに業務方法書を記載すると、これから初めて金商業を行おうとする会社の営業部門に金商業に通じた人がいることになります。

他の金商業者からの転職者をあてるのであれば別ですが、自社の役職員だけで金商業を立ち上げようとする会社に、金商業に通じた営業担当者が存在するのはおかしなことです。

話は少し脇道にそれますが、「人的構成に係る書面」において、「営業部門の統括者は金商業に通じているんだ!」と訴えているものが散見されますが、実際に本人にヒアリングしてみると「金商業は初めてです」と回答する人がいます。

サンプル通りに記載すると、確かに、内部管理態勢としては理想的ですが、金商業者からの転職者がいる場合を除き、サンプル通りにはいかないはずです。

サンプル通りにいかない場合は、営業部門に金商業に通じている人が配置されている場合と同等の管理態勢を別途整備する必要があるのです。

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

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お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
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