コンプライアンス担当者の教育


金商法が金商業者にとって「厳しく」なっていることを真に理解していない金商業者が散見されます。

<コンプライアンス担当者の兼務>
金商法上、コンプライアンス担当者の独立性は求められていません。が、総務や経理や人事(やあろうことか営業まで)もやりながら、コンプライアンスを担当するなんてことは、平成26年改正の結果、あり得なくなっています。

繰り返しますが、平成26年改正金商法で、社内規則の整備と社内規則の遵守体制の構築がすべての金商業者に義務化されています。

正直言って、私は社内規則が重要であるとは考えていません。金商業者の役職員はすべて金商法や金販法や犯収法などを記憶し、遵守すればいいのです。

ただ、現実問題として、「誰が」「何を」すれば、「会社」として法令違反を避けることができるかを明確にしておくことが重要であることは確かです。

したがって、社内規則の整備に意味があるとすれば、「具体的に」「誰が」「何を」「いつまでに」「どうやって」やるべきなのかをこと細かく規定した規程を設けたときのみです。

ところが、出回っている社内規則をクライアントから入手して見てみると唖然とします。

具体性がない社内規則が多いからです。

具体性のない社内規則は、存在しなくても、金商法、金販法、犯収法に戻れば済むことなので、設ける必要がなく、設けるだけ時間のムダです。

だから、意味のある社内規則を一本作るにも、相当な時間がかかるわけで、他の業務を兼務しながらコンプライアンスも担当するなんてことはあり得ないわけです。

さらに、社内規則の遵守体制の構築にいたっては、社内規則の遵守状況についての日々のコンプライアンス・チェックが欠かせないので、コンプライアンス担当者が他の仕事をしている暇はないはずです。

コンプライアンス担当者は、日々のコンプライアンス・チェックのためのチェックシートを作りましたか?

コンプライアンス担当者は、コンプライアンス・チェックの結果を代表者に毎日報告していますか?

代表者は、コンプライアンス担当者による毎日のコンプライアンス・チェックの実施状況を管理監督し、指示を与えていますか?

<コンプライアンス担当者の専門性>
もともと、金商法は、コンプライアンス担当者に専門性を要求していると読むことができます。現に、金融庁は、監督指針でこの点を明確にしています。

にもかかわらず、専門性の高いコンプライアンス担当者でなくても、登録審査を通してしまう財務局の緩い審査状況では、専門性の高いコンプライアンス担当者が生まれませんし、育ちません。

こうなっては、金商業者が、財務局の緩い審査を通ってしまったコンプライアンス担当者を教育するほかありません。

でも、コンプライアンス担当者の教育に時間とお金をかけている金商業者は数が少ないというのが私の印象です。

私は、一度だけ、金商業者から依頼されて、コンプライアンス担当者を徹底的に教育したことがありますが、一度だけです。社内研修を依頼されたり、内部管理態勢の整備状況の監査を依頼されたことは何度もありますが、社内研修を依頼したり、内部管理態勢の整備状況の監査を依頼したりしている意識の高い金商業者でさえも、コンプライアンス担当者の教育を依頼することはしません。

私がコンプライアンスを担当し始めたのは平成4年2月ですから、おそらく、国内の金商業者の中では、コンプライアンス・オフィサー第一号だと思いますが、コンプライアンス業務に関する教育を受ける機会がまったく存在しなかったあの時代ならともかく、今は、コンプライアンス担当者が教育を受ける機会は、少ないものの、あるのです。

金商業者は、金商法が金商業者にとって厳しくなっていることを認識し、コンプライアンス担当者の教育に時間とお金をかけることを検討するべきです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

自社で行う内部管理態勢の検証


最近、内部管理態勢の検証、わかりやすく言ってしまえば「検査対策」に関する金商業者からの依頼が増えています。

証券会社にとって検査対策は「当然のイベント」ですが、ここのところの依頼は、証券会社以外の金商業者からの依頼です。

私も、そろそろ受託も限界ですが、検査対策が二種業者、助言業者、運用業者に広がりを見せているところに、わずか、1年前とは、隔世の感があります。

<検査対策>
検査対策と言っても、特別な近道があるわけではありません。

よく、金商業者のコンプライアンス部門経験者でもなく、証券取引等監視委員会にいた経験もない行政書士が「検査対策やります!」とか「検査対策キットを売ります!」と宣伝していますが、これは「不可能」です。

せいぜいできて、検査マニュアルの項目が満たされているかどうかの確認しかしないでしょうが、「本物の検査は検査マニュアル通りには絶対に行われない!」という「事実」を知らない証拠です。

余談ですが、以前、長年の付き合いがある証券取引等監視委員会の幹部が「金商業者のコンプライアンス部門の経験もない行政書士に、金商法関連の仕事ができるわけがない!」と言っていましたが、当たり前です。

話を元に戻すと、重要な「事実」として、「検査対策」という対策はありません。あるとすれば、日々の努力の積み重ねです。これは、検査対策というより、コンプライアンス体制の構築以外の何物でもありません。

ただ、検査対策という意味でなければ、「内部管理態勢の検証」はあるし、外部の専門家を使っても、やっておくべきです。これは、内部監査を補強する業務です。

外部の専門家としては、4大会計事務の中に、なかなかいい線をいっている会計事務所が1社ありますので、そこに依頼するのも良いと思います。

とにかく、金商業者は、「検査対策に近道はない!」という事実を忘れてはなりません。

<内部管理態勢の検証>
内部管理態勢の検証は、自社ではできません。仕事が欲しいから言っているのではなく(第一、私は忙しくて2か月待ち)、甘くなるということでもなく、金融行政の期待値を知らないため、表面的な確認作業しかできないからです。

私も、この事実は、現役のコンプライアンス部長だった頃に痛感し、1000万円以上の高額でしたが、独立系のコンサルティング会社に内部管理態勢の検証を依頼したことが何度かあります。

ただ、これだけの予算を付けるのは簡単なことではないので、どうしても自社で、内部管理態勢の検証を行うときのポイントを挙げれば、次の通りです。

1 担当者は、金商法の目的を徹底的に勉強する(私のブログでも何度か書いている)

2 金商法に規定する「禁止行為」と「禁止状態」を、参考書を使って、徹底的に分析する

3 自社の販売商品の仕組みを徹底的に分解する

これらを満たした上で、社員であることを忘れて、客観的に検証します。日常業務があるでしょうから、難しいことですが、自社でやるのであれば、頑張る他ありません。

特に、3は重要です。

金商業者の経営者の中には「内部管理態勢の検証なんて要らいない」という態度の人がいますが、金商業者である以上、避けて通れない仕事であることを、経営者は忘れてはいけません。

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明るいニュース


コンプライアンス担当者にとっては、(もしかすると)明るいニュースです。

米国の話ですが、今、「就職するなら、コンプライアンス部門!」という記事がありました。

銀行のコンプライアンス部門に就職するのが、以下の理由で良いそうです。

1 失業の心配がない

2 報酬が高い

個人的な意見としては、日本もそうあるべきというか、そうなると考えます。

<失業の心配がない>
米国の事情があるのですが、日本と違い、米国では法令違反が見つかると、業務停止や許認可剥奪でなく、企業に罰金など金銭の支払いが命じられます。しかも、多額です。

このため、コンプライアンス部門は、米国企業にとって、企業の損益に直結する部門です。だから、企業はコンプライアンス部門を充実させなければならない宿命を負っていて、だから、コンプライアンス経験者は「売り手市場」で、失業の心配がないわけです。

日本の金商業者の場合、法令違反が発見されると業務停止命令や登録取消し処分になるわけですが、命令・処分の内容は、法令違反が発生した理由とともに、公開されますから、レピュテーションリスクが顕在化し、ひいては、顧客離れ、売上のダウンにつながるのですから、本来、金商業者の経営者にとって、コンプライアンス部門の充実は不可避の経営課題であり、日本においても、コンプライアンス担当者の失業の心配はないはずです。

もっとも、「業務停止命令や登録取消しは他人事」で、自社とは無関係と経営者が高をくくっていたら、話は別です。

経営者がこのような考えのときには、「業務停止命令を受けた会社も、他人事と思っていたはず」であることを経営者に知って頂く必要があります。

<報酬が高い>
米国においては、コンプライアンス担当者(責任者)は、企業の法令違反が見つかると、全責任をとらされるおそれがありますから、この意味でリスクが高く、リスクに見合った報酬が与えられます。私の知る限り、日本円にして5000万円の年俸はざらです。

私は、金商業者のコンプライアンス部門に20年以上いて、証券取引等監視委員会の検査を11回受けているので知っていますが、日本の金商業者においても、証券取引等監視委員会の検査で法令違反が見つかると、最初に処分の対象になるのは、コンプライアンス担当者です。経営者は、二番目です。

コンプライアンス担当者が法令違反をすることは考えにくいので、法令違反をするのは、コンプライアンス担当者にとっては、他人である役職員です。他人の法令違反の責任を金商業者のコンプライアンス担当者はとらされるのですから、米国と事情はさほど変わりません。したがって、コンプライアンス担当者の報酬は高くあるべきです。

もっとも、経営者が「仮に、法令違反が見つかったら、自分が責任をとればいいんだろ」と、ある意味立派な経営者だったら、コンプライアンス担当者のリスクが高いことに気づかないため、話は別です。

経営者がこのような考えのときには、「誰が処分を受けるのかを決めるのは、会社ではなく当局である」という事実を経営者に知って頂く必要があります。

以上みてきたように、金商業者の経営者が正しい認識であれば、コンプライアンス担当者は、日本においても米国と同じ処遇を受けるようになります。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

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