内部監査元年


1月6日のメールマガジンからの抜粋です。



金商業者にとって、内部管理態勢の観点から、今年はどういう年になるかというと、おそらく、「内部監査元年」になるのではないかと予測しています。

従来から、「内部監査は重要」と言われ続けてきましたが、金商業者のみならず、当局も、内部監査を本当に重要だと考えているかどうかは、疑わしいものでした。

実際、多くの金商業者は、コンプライアンス担当者に誰を配置するかについては悩んだとしても、内部監査担当者については、「形式的に置けば良い」くらいの勢いで誰にするかを決定してきた節があります。

当局も、金商業者の検査において、法令違反や不適切行為を発見すると、コンプライアンス担当者の機能不全を指摘したことはあっても、内部監査の見落としを指摘したことは、私の知る限り、かつて一度もありません。

今後も、金商業者に法令違反や不適切行為があっても、検査において、内部監査の見落としが指摘されることはないと思いますが、内部監査の実効性が疑問視され、自浄作用が機能していないと指摘されることはあり得ると考えています。

こう考える根拠はいくつかありますが、昨年から当局が何度も繰り返し使っている「3つの防衛線の考え方」が、内部監査の重要性を決定的にしています。

証券モニタリング基本方針によれば、3つの防衛線の考え方とは、「第1の防衛線は、フロント部門が業務上の各種リスクを認識した上で自らリスク管理を行い、第2の防衛線であるリスク管理部門・コンプライアンス部門が、第1線の管理の支援と第1線による管理の実効性を検証する。さらに、第3の防衛線として内部監査部門が第1・第2の防衛線が有効に機能しているか検証・評価する考え方」です。

文章が硬すぎるせいか、当局が何を言いたいのかよくわかりませんが、実務に即して言えば、金商業者においては、営業部門が自らリスクを発見・管理し、リスク管理部門が営業部門のリスク管理の実効性を検証し、内部監査部門が、営業部門とリスク管理部門によるリスク管理が有効であるかどうかを検証する体制が求められるということです。

リスク管理とは、わかったようでわかりにくい単語ですが、リスクを発見・分析・評価し、「リスク対策」を選択するまでの一連のプロセスのことです。

「リスク対策」について説明を始めると小冊子が一冊できてしまいますので、例を挙げると、リスクを回避したり、リスクを防止・低減したり、リスクを移転・分散したりする行為を指します。

抽象的に言っていてもわかりにくいので、以上のことを踏まえ、金商業者に求められる体制について、具体的に、コンプライアンス・リスクを例にとって考えると、こういうことです。

まず、取引を行う営業部門が、取引が法令違反を内包するリスクを分析・評価し、結果に応じて、取引を中止したり(リスク回避)、取引回数を制限したり(リスク低減)、単独ではなく他社と共同で取引を行ったり(リスク分散)します。

次に、コンプライアンス部門が、営業部門の行ったリスク管理が、リスク管理として意味があるものだったかどうかの検証を行います。

最後に、内部監査部門が、営業部門やコンプライアンス部門が実施したリスク管理が、果たして有効であったかどうかを検証するという体制です。

如何にも銀行らしい発想で、金商業者にこの体制を求めることについては疑問がありますが、以上から、内部監査部門はリスク管理の最後の砦であるという点で重要であり、内部監査部門に配属される人は、金商法、金商業の実務に詳しく、リスク管理に精通している人であることが期待されます。

「じゃあ、具体的に内部監査は何をすれば良いのか」という話ですが、私は、今年が内部監査元年になると予測していますので、メルマガだけでなく、今年はできるだけ多くの機会を捉え、内部監査についてお話ししたいと考えています。

第一弾として、金融財務研究会主催のセミナーの講師として、内部監査についてお話しします。既に多くの方が参加申込みをしているようですので、狭いかもしれませんが、興味のある方は、参加してみてください。

参加方法等はこちらです。なお、お申込みの際、備考欄に「講師紹介」と書けば、5000円割引になるそうです。(詳しくは、主催者にお尋ねください)



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内部監査に潜む危険な考え違い


あなたの会社が、金商法に沿った内部監査の実施を考えているなら、こんな考え違いをしていませんか?

「リスクベースの内部監査をしよう」

これは、検索エンジンで「金融商品取引業者」「内部監査」などと検索すると、自称専門家が内部監査の方法として、掲げている方法です。

こういう専門家は間違いなく現場を知らない未経験者です。

そもそも、リスクベースって何でしょうか。

冷静に考えればわかることですが、業務のどこにどの程度のリスクがあるか、なんてことに頭を悩ませる暇があったら、とっとと、内部監査を始めてしまった方が良いです。

時間をかけてリスク分析をして、リスクベースの内部監査を実行したからといって、あなたの会社に、何かプラスの変化が起きるでしょうか?

「リスクベースの内部監査をしよう」は、小学校のときに教室に貼ってあった「標語」に似ています。「廊下を走るな」とか「あいさつをしよう」というあれです。標語は、良いことをいいますが、誰も真剣に取り組もうとしませんし、身が入りません。

なぜか。

標語は、なくても困らないものだからです。標語は、形だけで終わってしまうので、掲げても意味がないのです。

意味のあるものでなければ、やっても、何の進歩も進展もありません。標語を掲げることは、時間の無駄であるだけでなく、何となくやった気になってしまうので、危険ですらあります。

本当にやるべきことは、やればやっただけの成果が上がることだけです。腑に落ちることであり、目に見えて改善を実感できることだけなのです。

では、具体的には何をすれば良いのか?

時間を無駄にしたり、やった気になって終わってしまったりする危険に陥らないために、内部監査として今すぐやるべきことを、金融財務研究会主催のセミナーで話すことになりました。

「第二種金融商品取引業者のための効果のある内部監査の実践方法」

このセミナーでは、リスクベースなんて難しい単語は出てきません。やったことが直接成果となって現れること以外は話しません。

興味がある方は、セミナーに参加して、効果のある内部監査を実施してください。

セミナーにお申込みの際は、備考欄に「講師紹介」と書いてください。主催者によれば、5000円の割引特典があるそうです。

皆さんにお会いできることを楽しみにしています。



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内部監査の実務3


5月6日のメールマガジンからの抜粋です。



前回のメールマガジンでは、金商法に絞った内部監査と言っても何から始めたらよいかわからない場合は、登録申請時に当局に提出した書類の検証から始めてはいかがかという提案をしました。

この検証を実際に行ったことがあるという金商業者は少ない、というか、私が顧問をしたり、1日監査をしたりしているクライアントの他には存在しないというのが私の印象です。

私が金商業者の顧問に就任したり、1日監査を引き受けたりするときに最初に行うのが、これです。登録申請書、人的構成に係る書面、業務方法書を金商業者から頂き、法令や実態との間にギャップがないかを検証します。ここで「法令」と言っていることに注意。「登録申請が通ったから登録しているのに、書類と法令との間にギャップがあるわけないじゃないか!」という考えは間違いです。財務局が行う審査は「登録審査」なので、登録拒否要件に該当してないことを審査するのみであり、提出された書類が法令に適合しているかを審査するわけではないからです。

条文上ですが、提出された書類と、法令や実態との間にギャップがあると、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金(若しくは併科)であり、法人なら5億円以下の罰金の対象です。ここまでいかなくても、行政処分の対象になることは、財務局の公表資料に書いてある通りです。

最初に登録申請書について。登録申請書(添付書類を含まない)の内容が誤っている金商業者は意外にいます、というか、多いです。登録申請書の作成にあたり、金商法を理解していない行政書士に依頼したり、以前のメールマガジンで指摘した「条文の斜め読み」をしていたりすることが原因です。登録申請書は、枚数も少なく、作成は簡単そうに見えますが、金商法の行為規制全体を「有機的に」理解していないと間違えます。繰り返しますが、登録申請書の内容が間違っている金商業者は多いのです。(「みんなが間違っているなら、当社が間違っていても大丈夫」なわけではないことに注意)

登録申請書の内容が間違っていたらどうするか。本来、登録申請手続時点において提出した登録申請書は、金商業者として登録を受ける前のことだから、変更届出書の提出という手続の適用はないはずですが、実務的には、金融庁から変更届出書の提出を求められます。

間違った内容によっては、事故届け(法令違反が発見された際に提出が義務付けられている届出書)になるのはまだ良い方で、大変なことになるのですが(私のクライアントで登録取消しの危機を迎え、財務局が納得するまで半年以上かかった事例があった)、間違えていたのだから、黙っていたり、ごまかしたり、弁護士と相談して勝手な理由を付けて納得したりしないで、当局に報告しなければなりません。証券取引等監視委員会の検査で見つかる方が、遥かに悪い結果になります。

経験則上、登録申請書は、悪いことは言いませんので、金商法の実務に(相当)詳しい外部の専門家に内容の検証を依頼した方が良いと考えます。

次に、人的構成に係る書面についてですが、人的構成に係る書面の内容が、実態を反映していない金商業者もいます。運用業者の場合は、むしろ、実態を反映してないことが普通です(普通だからといって放置してはいけないことは既述の通り)。特に、登録申請手続を行政書士に代行させた金商業者は要注意です。行政書士の登録実務の実態は、過去に登録を受けた他の金商業者の申請時に使った書類の焼き直し作業ですから、実態を反映していない記述になっているのが普通であるのは、当たり前の話だからです。

業務方法書についても、業務方法書が実態を反映していない事例は多いです。私が、検査対策セミナーの講師をするときに、実態を反映していない業務方法書の典型例の話をすると、必ず、焦る金商業者がいますが、焦るということは、知っていれば修正できたことの裏返しですから、焦る前に、業務方法書の内容を検証すべきだったことになります。特に、助言業者と運用業者の業務方法者は実態を反映しないことが多く、ここでも、行政書士に登録申請手続を代行させた金商業者は、要注意です。

申請手続では社内規則も提出させられるのが実務なので、登録申請書、人的構成に係る書面、業務方法書に加え、社内規則の検証も「登録申請書時に提出した書類の検証」の中で実施することになります。余談ですが、1998年の規制緩和で、登録申請時の社内規則の提出はなくなった経緯があるのですが、金商法施行で、規制緩和前に戻ってしまったのは、金融行政の一貫性を欠いています。

社内規則に関しては、登録申請時に提出した社内規則のみならず、登録後に作成した社内規則も、一緒に検証することをお勧めします。特に、平成26年改正金商法の施行日(平成27年5月29日)以降、業務を適格に実施するための社内規則の整備は法令で義務付けられていますので、各社、社内規則が増えているはずですから(増えていなかったことが検査で指摘された事例あり)、まとめて検証するのが良いと思います。

なお、「協会に加入していれば、社内規則の整備が不要」と勘違いしている金商業者がいますが、これは、協会に加入しなければ協会規則に準じた社内規則を作成しなければならない義務と、平成26年改正金商法(具体的には、金商法第35条の3並びに金商業等府令第70条の2第1項)における社内規則の作成義務とを混同した議論で誤りです。


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内部監査の実務2


5月2日のメールマガジンからの抜粋です。



関東財務局理財部証券監督第2課から証券取引等監視委員会の検査を踏まえた「金商法ナビレター」が発行され、同日、投資顧問業協会から「検査研修」の案内が送られてきました。

また、二種業協会は、社内規則の整備状況を報告させていて、これは、平成26年改正金商法の施行日(平成27年5月29日)以降、社内規則の整備不十分は「登録取消し事由」となり、最近の検査において「登録申請時から社内規則の見直しも追加もされていない」と指摘されている状況を受けています。

以上のように、当局が検査を意識した運営を始めたことから、二種業者も助言業者も、検査対策が必須の時代に入った感があります(一種業者と運用業者はもともと必須)。

もっとも、繰り返しになりますが、検査対策と言っても特別な手立てがあるわけではなく、日常的には役職員全員が法令違反・不適切行為の未然防止を意識して業務を行い、定期的に内部管理態勢や業務執行体制の検証を内部監査部門が実施する以外に方法はありません。

余談が長くなりますが、この当たり前のことができるかどうかは、経営者とコンプライアンス担当者の意識にかかっています。何を意識するべきかというと、「コンプライアンスは経営の最重要課題だ」という抽象的なことではなく、「金商法は、常識では遵守できない」という事実です。「悪いことをしていないから大丈夫」とか「投資者に迷惑がかかっていないから大丈夫」という常識だけを信じていても、金商法は遵守できないということを意識する必要があります。

例えば、社内規則の整備。社内規則が整備されていなくても、常識的には悪いことではないし、投資者に迷惑がかからないかもしれません。でも、社内規則の整備が不十分な状態は、金商法第35条の3違反であり、登録取消し事由です。社内研修だってそう。金商業等府令第70条の2第1項は、金商業者に社内研修の実施を義務付けていますが、社内研修がなくても、誰にも迷惑をかけないかもしれません。でも、社内研修の実施が不十分な状況も、登録取消し事由です。

自社の過失から、投資者に迷惑をかければ、金銭的に償うことが投資者保護のように見えますが、金銭的な償いは、損失補てんにつながり、特別の利益の提供につながります。グループ会社で取引を完結させることは常識的かもしれませんが、金商業者がやると、利益相反取引かもしれないし、忠実義務違反かもしれません。

運用業者のファンド間取引は、双方にとって良ければ良いと判断するのが常識なら、不正が働く余地があるから禁止と考えるのが金商法です。「虚偽又は誤解を生ぜしめるべき表示」(禁止行為)と聞くと、常識的には、ウソをつく気がなければ虚偽とまでは言えないと考えますが、金商法は、事実と異なる表示はうっかりミスでも虚偽と判断するし、登録申請書に誤った記載があったり、実態を反映してない記載があったりしても、投資者はびくともしないかもしれませんが、登録取消し事由です。

以上は一例に過ぎませんが、金商業者が、金商法を遵守するためには、経営者やコンプライアンス担当者が「常識」だけで判断をしてはダメで、「金商法は、常識では遵守できない」ということを意識して判断をする必要があるわけです。

なお、投資顧問業協会による「検査研修」のスピーカーは証券取引等監視委員会(霞が関)の証券検査課長(皆さんの検査を行う部門のトップ)ですから、1社1人限定になっていますが、できれば、コンプライアンス担当者の方ではなく、経営者の方が出席すべきであると考えます。(私も、海外クライアントの代理人として出席の申し込みをしました)。

閑話休題。

今回から、内部監査の具体的な内容について見ていきます。

まず、プロセスとして、内部監査部門は、「内部監査計画」を立てて、内部監査計画書にまとめ、一般的には、取締役会の承認を得ます。取締役会がなければ、代表取締役の承認を得ることになるでしょうが、「承認」といっても、内部監査の機能は、社内のあらゆる機関・部門から独立していなければならいないので、代表取締役が内部監査計画の内容を「緩める」変更を求めることはできません。コンプライアンス委員会がある金商業者であれば、内部監査計画書は、コンプライアンス委員会の審議事項としている会社も多いです。

内部監査計画書を作成する理由は、限られた時間と人的資源の中で、内部監査を効率的・計画的に実施するためですが、多くの金商業者は、この内部監査計画書の作成の段階でつまずきます。内部監査が何をすれば良いのかわからないからです。

「内部監査は1年中やることがある」と前回説明しましたが、何から始めたら良いかがわからなければ、登録申請時に財務(支)局に提出した書類の検証から始めることをお勧めします。「登録事項検査」も意識して、登録申請時に提出した書類に記載された事項と実態とのかい離がないかを確認します。監査テーマは「登録申請時に提出した書類の検証」で良いと思います。

具体的な検証の内容については、次回以降、説明します。


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内部監査の実務1


4月27日発行のメールマガジンの抜粋です。


このメールマガジンの読者の多くは、金商業者のコンプライアンス担当者ですが、今回は、シリーズで「内部監査」を取り上げることにします。ですから、可能であれば、内部監査部門の方に、転送して頂ければと思います。

まず、歴史的な話も含めた、内部監査の位置づけですが、内部監査とは、元々、Internal Auditという海外の機能の輸入品です。国内において、必要性から、自然発生的に生まれたわけではなく、金商業者にとっては、いわば、人工的に作られたものです。

「ベアリングス事件」という事件があります。金商業者が必ず研究しなければならない事件の一つですが、英国のベアリングス銀行が、ニック・リーソンという一人のトレーダーによって、破産に追い込まれた事件です。映画にもなっていますので、事件の全貌を簡単に知るためには、映画を観るのが良いと思います。

「大和銀行ニューヨーク支店巨額損失事件」という事件があります。これも、金商業者であれば、必ず研究しなければならない事件で、井口俊英が米国国債の簿外取引等で、旧大和銀行に大損をもたらすとともに、大和銀行が当時の米国刑法犯における史上最大の罰金刑に課された事件です。同氏は、当時の模様を「告白」という小説にまとめ、出版していますので、小説を読むことをお勧めします。(自己弁護に終始している感がありますが)

いずれの事件も、社内プロセスに欠陥があったことが原因で発生しているため、「プロセスチェック」という内部監査機能の一つが有効に働いていれば、避けられたかもしれない事件です。このような背景から、海外の金融機関においては、内部監査の権限は大きく、CEOからも独立し、CEOの権限を上回る権限が与えられていたりします。

日本においては、「役職員は不正をしない」という文化的神話があるため、内部監査が発達しないのだと思いますが、ベアリングス事件や大和銀行事件ほどの事件ではなくても、違法・不公正取引がゼロであるという前提に立つことはリスク管理の甘さにつながり、だから、すべての金商業者に内部監査が義務付けられているのだと考えます。

金商業者の組織図を見ると、内部監査は代表取締役直轄であったり、監査役直轄であったりしますが、海外においては、CEOからも独立しているため(CEOが不正を働くかもしれないから)、組織図上、CEO直結ということはなく、誰からも干渉を受けない、完全に独立した機関として存在している例もあることから、輸入をした日本においても、本来、高い独立性が求められる機関です。

金商法施行当時は、内部監査部門が他の部門、例えばコンプライアンス部門を兼任している例が見られましたが、現在では完全に少数派で、私が金商法施行当時から主張していたように、金融庁も内部監査部門の独立性を強く求めていることからも、金商業者における内部監査は独立した存在になっていて、証券取引等監視委員会の検査においても、内部監査が他の部門を兼任していると指摘事項として挙げる事例も見られます。

「内部監査部門は仕事ない」と誤解している金商業者も少なくありません。金融庁が監督指針で指摘しているように、内部監査が適切に機能しているかどうかは、行政処分の軽減事由にもなり、「内部監査部門はすべての業務を監査対象とする」ことから、適切に機能するためには、1年中稼働している必要があり、内部監査部門に仕事がないなんてことは、私の金商業者における経験上もありません。

とは言っても、「内部監査は具体的に何をすれば良いのかわからない」とか「内部監査は1年に1回実施すれば良い(から仕事がない)」とか、中には「登録以来、内部監査を実施したことがない」という金商業者がいることも事実ですから、金商業者の機能の中でも、本来、(コンプライアンス部門の不正や機能不全を監査する立場だから)コンプライアンス部門よりも重要であるはずの内部監査部門が、ある意味、軽視される傾向にあるようです。

ちなみに、財務局が公表している業務方法書のサンプルに「少なくとも1年に1度は内部監査を実施」とありますが、1年に1回実施するのは、伝統的な銀行における社内検査であって、このサンプルは、内部監査と社内検査を混同しています。

なお、内部監査を実施していない金商業者がいると書きましたが、内部監査の未実施は、証券取引等監視委員会の指摘事項にもなっているので、悠長に構えているなんてことはあり得ません。

内部監査部門は具体的に何をすれば良いのか、何をしなければならないのかは、後日話すとして、金商業者においては、なぜか、法令等遵守に関する事項は何でもかんでもコンプライアンス部門が責任を負っていますが、業務の日常的なモニタリングを実施することや、役職員からの法令等に関する相談を受けたり、逆に役職員に法令等に関する情報を提供したり(社内研修など)をすることが、コンプライアンス部門の仕事です。

金融庁が監督指針で指摘しているように、例えば、顧客情報管理の適切性、取引時確認の実効性、事務リスク管理態勢、法定帳簿の作成・管理状況など、管理体制を検証する機能は、コンプライアンス部門ではなく、内部監査部門で実施されるものです。ちなみに、3月決算の会社においては、間もなく、事業報告書の作成・提出、説明書類の公表の時期ですが、説明書類における「内部管理の状況」には、内部監査体制を記載することが、金融庁の監督指針で求められています。(それほど内部監査は内部管理体制の中で重要)

内部監査機能を外部の専門家に「依存」している金商業者を見かけることがありますが、以上の説明からわかる通り、内部監査は日常的に金商業者の管理体制を検証しなければならないことから(1年に1回でも良い社内検査と混同しないこと)、外部の専門家を「補助」として活用することはあっても、外部の専門家に依存することはできません。

実際、証券取引等監視委員会の検査においても、内部監査担当者の常勤性が求められた事例があります。繰り返しますが、金融行政の場合、「登録審査を通ったから大丈夫」という理屈は、「法制度的に通じない」ため、仮に、登録申請手続で内部監査担当者が非常勤で認められたとしても、証券取引等監視委員会の検査で覆されることはおかしなことではありません。

信じてもらえないと困るので強調しますが、金商業者は書類審査の「登録制度」という、形式上、参入障壁の低い業態であり、だから、検査で退場させることが容易な法制度に立つ業態です。実質的な審査は証券取引等監視委員会の登録事項検査で行われるということです。「登録審査を通ったのに、ダメなんてことがあるのか」と他業態出身だとわかりにくい制度かもしれませんが、私は、金融行政におけるコンプライアンス経験が日本で一番長い(古い)はずですので、「亀の甲より・・・」ということに免じて、信じて頂くほかありません。

内部監査の機能の一部を紹介すると、先日、昨年のドイツ証券に続き、クレディ・スイス証券が法人関係情報の管理不備で行政処分を受けた件で、法令違反の発生原因が「内部管理部門等の人員を削減」(証券取引等監視委員会のHPより)、つまり、コスト削減のためのコンプライアンス体制の弱体化に求められていますが、コンプライアンス体制の弱体化は内部監査で指摘されるべきであるから、ここは、内部監査がコンプライアンス体制の弱体化に対して経営者に意見具申をしなかった(できなかった)ことに求められるべきだと考えます。


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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

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