転売制限2


10月21日のメールマガジンからの抜粋です。



転売制限の話をまともにやると、一冊の本が書けますから、このメルマガでは、要点だけをお話します。(転売制限規定は、実は奥が深い。)

私募発行された有価証券に関して、有価証券発行勧誘等(わからない人は前回のメルマガをチェック)を行う者と、有価証券交付勧誘等を行う者は、金商法第4条第1項の規定による届出(有価証券届出書の提出のこと)が行われていないこと、及び転売制限の内容を、取引成立までに、相手方に対し告知しなければなりません。

また、この告知は、書面(転売制限等告知書)で行われなければなりません。

以上が、転売制限規定の概要ですが、転売制限規定は、「誰に」転売制限等告知書の交付を義務付けているのでしょうか。

金商業者でしょうか。他の誰かでしょうか。

正解は、すべての人です。私募発行された有価証券に関して取得勧誘(発行時の勧誘)を行う者と、売付け勧誘等(発行後の勧誘)を行う者であれば、誰でも転売制限規定の適用を受けます。

転売制限等告知書の交付義務は、有価証券の発行者が取得勧誘を行うなら、発行者にあります。有価証券の発行者に代わって金商業者が取得勧誘、つまり、私募の取扱いを行うなら、金商業者にあります。

転売制限等告知書の交付義務は、既に発行された有価証券を転売するために、所有者が売付け勧誘等を行うなら、所有者にあります。有価証券の所有者に代わって金商業者が売付け勧誘等、つまり、有価証券の売買の媒介又は代理を行うなら、金商業者にあります。

だから、転売制限に関する条文は、すべての人が知っていなければならない条文です。ところが、誰でも金商法を知っているわけではないので、すべての人が転売制限規定を知っていることは考えられません。

このため、実務的には、金商業者を介して転売制限規定がすべての人に遵守される仕組みになっています。

転売制限は「伝言ゲーム」です。有価証券の発行者(A)から、有価証券を取得する者(B)に対して、転売制限等告知書が交付され、有価証券を取得した者(B)から、転売の相手方(C)に対して、転売制限等告知書が交付されることで、流通している有価証券が私募で発行されたために、転売制限が付されていることが、有価証券が譲渡されるたびに、譲渡人から譲受人に対し、次々と伝言されていく伝言ゲームです。

伝言ゲームの出発点は、当然のことながら、有価証券を私募発行する「発行者」です。発行者が、自分が伝言ゲームの出発点であることを知らなかったら(転売制限規定を知らなかったら)、伝言ゲームは成り立たず、この有価証券の取引に参加した人は、転売しない最後の一人を除き全員、金商法違反をすることになってしまいます。

だから、実務的には、金商法なら何でも知っているはずであり、金商法違反をすると容易に行政処分を命じることができる対象である金商業者を介して、有価証券の取引参加者が金商法違反をすることを防止する仕組みになっています。

金商業者が、私募の取扱いを行えば、有価証券の発行の際に取得勧誘を行う者は、発行者ではなく、金商業者になりますから、伝言ゲームは金商業者からスタートします。

また、金商業者が、有価証券の所有者のために有価証券の売買の媒介を行えば、有価証券の売買の際に売付け勧誘等を行う者は、所有者ではなく、金商業者になりますから、伝言ゲームは途絶えずに継続します。

私は、この仕組みを「みごと!」と思うのですが、読者の皆さんはどうでしょうか?

なお、条文上、転売制限等告知書には、①有価証券届出書が提出されていないことと、②一項有価証券の場合は譲渡制限の内容・二項有価証券の場合は二項有価証券である旨のみを記載すれば良いことになっていますが、伝言ゲームの成立を確実にするために、金商業者は、③有価証券の譲受人が、所有する有価証券を転売する際には、有価証券を譲り受けたときに受領した転売制限等告知書と同じ内容の文書を、転売の相手方に交付しなければならない旨も記載すべきであると考えます。



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転売制限1


10月20日のメールマガジンからの抜粋です。



さて、有価証券投資型ファンドには適用され、事業型ファンドには適用されない金商法の規制に「開示規制」があります。

拙著にも書いた通り、金商法は膨大・複雑に見えて、実は、「開示規制」「行為規制(業者規制)」「不公正取引規制」の3つのみを規制している、きわめてシンプルな法律です。膨大に見える一つの理由は、内閣府令の多さですが、これも、開示規制、行為規制、不公正取引規制に加え、「定義」に関する内閣府令が存在するにすぎず、体系は非常にわかりやすくなっています。

3つの規制のうち、開示規制は、基本的に有価証券の発行者に関する規制であって、(証券会社を除き)金商業者がひも解く機会はないに等しいですが、開示規制の中でも「転売制限」に関する規定(金商法第23条の13)は、金商業者にとって重要な規定となっています。

金商法第23条の13を理解するために、まず、覚えなければならない用語は、「有価証券発行勧誘等」と「有価証券交付勧誘等」です。この2つの場面において、転売制限の規定が適用されるからです。

有価証券発行勧誘等とは、新たに発行される有価証券の取得勧誘をいい、有価証券交付勧誘等は、既に発行された有価証券の売付け勧誘をいいます。

典型的には、有価証券の発行者が行う募集・私募が有価証券発行勧誘等であり、有価証券の所有者が行う売出し・私売出しが有価証券交付勧誘等ですが、発行者に代わって金商業者が行う取得勧誘(私募の取扱いなど)も、有価証券交付勧誘等だし、所有者に代わって金商業者が行う売付け勧誘(有価証券の売買の媒介など)も、有価証券交付勧誘等です。

だから、開示規制のうち、転売制限に関する規定は、金商業者にとっても重要なわけです。

転売制限は、一項有価証券の場合、少人数向け取得勧誘(少人数私募)と適格機関投資家向け取得勧誘(プロ私募)において必要であり、二項有価証券の場合、少人数私募において必要になります。

なお、一項有価証券の場合には、特定投資家向け取得勧誘がありますが、実務的に見かける機会が少ないので、今回は、説明を省略します。

私募発行の場合、発行者が有価証券を発行する際、少人数私募かプロ私募で発行するわけですが、原則として、少人数私募で発行された有価証券は、償還まで少人数にのみ譲渡されるべきこと、プロ私募で発行された有価証券は、償還までプロの間でのみ流通させるべきことから、転売制限が存在します。



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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・リスク管理コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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