おひさまファンドに対する処分勧告


昨日、証券取引等監視委員会は。「おひさまエネルギーファンド株式会社」(二種業者)に対する処分勧告を金融庁に出しました。

「おひさま」の法令違反の内容は典型的で、教科書に出てくるような事例です。

<分別管理のされていないファンドの取扱い>
「営業者の固有財産とファンド資金との分別管理を行うことが確保されておらず、また、ファンド持分に関し出資された金銭であることが名義により明らかとなる預貯金口座が開設されていない状況が認められた」そうです。

匿名組合契約の営業者が、営業者の固有財産や他の事業に係る財産と出資者が出資した金銭とを分けて管理していない場合、二種業者は匿名組合契約に基づく出資持分を販売することが禁止されています。

また、ここで「分別管理」されているとは、出資された金銭であることがわかる銀行口座を開設するなどして、新たに開設された口座で管理することを意味します。

指摘によるとおひさまは分別管理をしていなかったわけですから、法令違反です。

<分配金の不適切な支払>
さらに、おひさまは、設定当初は分配金を支払うことができないとされていたファンドの分配金をしていて、こともあろうに、不適切な分配金の支払いをするために、ファンド間で金銭の貸借(やり繰り)をしていたということです。

このようなファンドを販売したおひさまには行政処分がふさわしいというのが証券取引等監視委員会の判断です。

分別管理は、実際には、言うは易く行うは難しです。でも、金商法で二種業者は分別管理されていることが明らかなファンド以外のファンドを販売することが禁止されていますので、おひさまが法令違反を問われても仕方がありません。

おひさまの根本的な問題点は、役職員が2名しかいない状況です。公表によれば、社長が一人で切り盛りしていたので、多忙なため、分別管理をしていなかったということです。

法令上は一人でもできる二種業者ですが、役員、コンプライアンス担当者、内部監査担当者、営業担当者の、最小でも4人の役職員が必要です。2人で始めたことに、あるいは、財務局が2人だけの事業会社に二種業者の登録を許してしまったところに、問題の根本があることを見落とすことはできません。

建議じゃないですが、金商法を改正して、4名以上いないと二種登録を認めないと規定されるべきだと考えます。

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宅建業者に対する検査(5)


次の3つの問題の正解を考えてみてください。

1 宅建業者(二種登録済み)が、委託者兼当初受益者となって所有している不動産信託受益権を顧客に販売するとき、顧客から手付金を受け取ることができるでしょうか。

2 宅建業者(二種登録済み)が、仕入れてきた不動産信託受益権を顧客に販売するとき、顧客から手付金を受け取ることができるでしょうか。

3 宅建業者(二種登録済み)が、不動産ファンド(匿名組合出資持分)を顧客に販売するとき、顧客から手付金を受け取ることができるでしょうか。

<金銭の預託を受ける行為>
金融商品取引業に関して金銭の預託を受ける行為は、原則として、有価証券等管理業務という第一種金融商品取引業です。

ですから、第二種金融商品取引業の登録を受けているだけでは、手付金を受け取ることができません。

1は、不動産信託受益権の自己募集ですが、不動産信託受益権の自己募集は金融商品取引業ではありませんから、手付金を受け取ることができます。

2は、不動産信託受益権の売買という金融商品取引業ですから、手付金を受け取ることができません。

3は、不動産ファンドの自己募集という金融商品取引業ですから、手付金を受け取ることができません。

<募集の取扱いの例外>
1から3の問題に対する解答には影響がありませんが、募集の取扱いに限っては、第二種業の金銭の預託の例外があります。

資本金が5千万円以上の宅建業者(二種登録済み)は、信託受益権や組合等出資持分の募集(私募)の取扱いに関しては、分別管理を前提に金銭の預託を受けることが可能です。

金銭の預託を受けることができるのは、自己募集(私募)ではなく、募集(私募)の取扱いの場合に限られることに注意が必要です。

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宅建業者に対する検査(4)


<募集の取扱い>
募集の取扱いとは、有価証券(みなし有価証券を含みます)の募集を行う者のために、投資家(出資者・買い手)を探してくる行為のことです。

有価証券の私募を行う者のために投資家を探してくる行為は私募の取扱いですが、ここでは募集の取扱いと私募の取扱いをまとめて「募集の取扱い」と呼ぶことにします。

不動産信託受益権の場合は、不動産信託の委託者兼当初受益者のために投資家を探してくる行為です。

匿名組合契約を使った不動産ファンドの場合は、営業者のために匿名組合員を探してくる行為です。

<募集の取扱いと売買の媒介>
募集の取扱いは、「売り手」のために「買い手」を探してくる行為ではありません。有価証券の募集を行う者、金商法は「発行者」と呼びますが、発行者のために買い手を探してくる行為です。

不動産信託受益権を考えてみましょう。

委託者兼当初受益者が不動産信託受益権を譲渡する行為は「発行」です。この場合、委託者兼当初受益者は発行者であり、発行者が投資家を探す行為は募集(私募)です。

この発行者に代わって投資家を探す行為が募集の取扱いです。

他方、不動産信託受益権の譲渡を受けた者が別の投資家に不動産信託受益権を譲渡する行為を金商法では「売付け」と呼び、譲渡を受ける方の行為を「買付け」と呼びます。

この売付者又は買付者に代わって買付者又は売付者を探す行為が売買の媒介です。

募集の取扱いと売買の媒介の違いを理解する実益は、契約締結前交付書面の内容や作成・保存すべき法定帳簿の種類を間違えないようにする点にあります。

<発行市場と流通市場>
募集と売買を完全に異なる概念として金商法が規定している理由は、金商法は「発行市場」のルールと「流通市場」のルールを分けて規定する法律だからです。

有価証券の募集は発行市場の話です。一方の有価証券の売買は流通市場の話です。

正確性を犠牲にしてわかりやすく説明すると、発行市場とは、有価証券がこれからまさに生まれようとする場面を指します。まだ、生まれていない有価証券の取引をどう規制するかの問題です。

これに対し、流通市場とは、既に生まれている有価証券の取引の場面を指します。

発行市場は、まだ有価証券が生まれていないために、当然のことですが(これから生まれようとする)有価証券の情報が市場に不足している状態です。だから、発行市場の規制は、いかにして有価証券の情報を市場に浸透させるかに重点が置かれています。

一方、流通市場は、有価証券が転々と複数の投資家の間で売買されているため、有価証券の情報が価格に織り込まれるなど、有価証券の情報は市場に浸透している状態です。だから、流通市場の規制は、いかにして不正な売買を防ぐかに重点が置かれます。

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宅建業者に対する検査(3)


今回は自己募集の留意点についてお話します。

<自己募集>
自己募集は、組合等出資持分の取得勧誘(販売)のことです。第二種金融商品取引業です。

念のためですが、不動産信託受益権の募集(私募)は、自己募集ではありません。不動産関連業務でいうと不動産ファンドの販売のみが自己募集になります。

なお、ここでは自己募集と自己私募を併せて自己募集と呼ぶことにします。

<開示規制の適用>
開示規制とは、有価証券の内容や有価証券の発行者の情報を公開する制度のことを言います。有価証券届出書の提出や有価証券報告書の提出が開示規制に該当します。

開示規制は原則として不動産ファンドの取得勧誘には適用されません。ただし、不動産ファンドの出資対象事業が主として有価証券に対する投資を行う事業である場合には開示規制が適用されます。

具体的にいうと、匿名組合契約の営業者が行う事業が不動産信託受益権の取得である場合には、匿名組合契約に参加する権利(組合等出資持分)の販売は開示規制に服さなければなりません。

GK-TKスキームに対する出資持分の販売7には開示規制が適用されるということです。

<有価証券届出書と有価証券報告書>
有価証券届出書と有価証券報告書の説明は省略しますが、有価証券の募集を行おうとする者は「有価証券届出書」を財務局に提出しなければなりません。

また、有価証券届出書の提出を行った者は、原則として有価証券報告書を提出する義務を負います。

もっとも、組合等出資持分の募集は考えにくいため(ほとんどすべては私募であるため)、第二種金融商品取引業の登録を受けている宅建業者の方は、有価証券届出書の存在を知らなくても、実務上困らないと思います。

<転売制限等告知書>
組合等出資持分の取得勧誘が「私募」であった場合には、開示規制に従い、「転売制限等告知書」を投資家に提供しなければなりません。

具体的にいうと、不動産信託受益権に投資するGK-TKスキームにおいては、営業者から匿名組合員に対して転売制限等告知書が提出されなければなりません。

転売制限等告知書の内容は、組合等出資持分の販売が私募であるため金商法4条の届け出、つまり、有価証券届出書の提出が行われていないこと、及び第二項有価証券である旨です。

不動産信託受益権で運用を行うGK-TKスキームにおいて、匿名組合員に転売制限等告知者が提出されていなかった場合、開示規制違反になりますので、5年以下の懲役ですから注意しましょう。

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宅建業者に対する検査(2)


定義を引き続き見ていきましょう。

<引受け>
有価証券の引受けは第一種金融商品取引業ですから第二種金融商品取引業の登録を受けているだけではできません。

金商法の引受けは会社法の引受けとは意味が違います。

金商法で引受けとは何か。

金商法の引受けには以下の2種類があります。

1 投資家に取得させるために発行者からいったん有価証券を取得する行為

2 有価証券を取得する投資家がいなかった場合には有価証券を取得する契約をする行為

前者を「買取引受け」、後者を「残額引受け」といいます。不動産信託受益権や組合出資持分の取得勧誘においては残額引受けが発生することは考えにくいので、買取引受けだけを説明します。

<できない行為>
不動産信託受益権の場合、委託者兼当初受益者が投資家(SPCを含む)に不動産信託受益権を取得させるとき、第一種金融商品取引業の登録を受けていない金商業者が、委託者兼当初受益者からいったん不動産信託受益権を取得して(買って)、投資家に販売することはできません。

委託者兼当初受益者から不動産信託受益権をいったん取得してから投資家に販売する行為は買取引受けだからです。

別の言い方をすると、委託者兼当初受益者から不動産信託受益権を取得する(買う)ことは、半永久的に不動産信託受益権を所有する意思がない限り(投資する意思がない限り)できないということです。

組合出資持分も同じです。例えば、不動産ファンドの営業者に出資していったん持分を取得してから持分を他の者に販売することはできません。

例外として、不動産信託受益権に投資する匿名組合出資持分の場合、子ファンドの出資持分を金商業者(二種業者に限ります)がいったん取得して親ファンドに取得させる行為は引受けの定義から除外されています。

<できない理由>
現物の売買では宅建業者がいったん買ってから売ることができるのに、不動産信託受益権になったとたんに、宅建業者(二種業者)が委託者兼当初受益者から不動産信託受益権を取得して(買って)、別の人・法人に不動産信託受益権を取得させる(売る)ことができなくなるのか。

これは、金商法は引受には「リスク」が伴うと考えているからです。

証券取引法時代には、証券会社でさえも引受けをするためには別途「認可」を取らなければなりませんでした。リスクコントロールをする能力がない証券会社に引き受けをさせると、証券会社がつぶれてしまう可能性があると考えられていたからです。

金商法は引受けも登録制度のもとに置きましたが、証券会社(第一種金融商品取引業者)であっても、リスクコントロールをする高度な能力があると認められない証券会社は、登録要件が満たされないことを理由に引受けができないことになっています。

第二種金融商品取引業の登録要件は第一種金融商品取引業よりもさらに緩いですから、引受けが認められていないのです。

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

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