検査危機(3)


検査はある日突然始まります。ということは、普段から「明日入ってもおかしくない」という心構えが役員にも社員にも必要です。なお、検査は「入る」という言い方をします。検査官から言うと「検査に入る」、金融商品取引業者からすると「検査が入った」と言った具合です。

検査が入る前の事前の連絡はありません。突然入ります。ここからいきなり信じてもらえないときがあるのですが、本当に、突然、ある朝、「証券取引等監視委員会(あるいは財務局)です」と受付に現れます。その後、「検査命令書」という書面を検査官から提示されます。ここから、本格的に検査がスタートです。

<受任義務>
金融商品取引業者は、証券取引等監視委員会や財務局の検査を拒否する権利はありません。「社長が不在」という理由で、検査官を帰らせるケースが散見されるようですが、社長がいようといまいと関係ありません。検査官を帰らせる行為は、検査忌避です。(検査忌避の話は後でします。)

<検査命令書>
検査命令書というのは、証券取引等監視委員会であれば、委員長が統括検査官に「ABC会社を検査すること」という検査当局内部の書面ですが、初めて検査を受ける方は、この書面は、水戸黄門の印籠だと思ってください。水戸黄門の印籠が出てくると、今まで威張り散らしていた悪代官でさえ、「ははあー」と態度がコロッと変わりますが、それくらいの勢いのものだと理解しておいて間違いありません。

<守秘義務>
検査命令書が示されたら、検査が本格的にスタートです。この瞬間から、主任検査官の書面の承諾がなければ、検査に関することを外部に漏らすことが禁止されます。たとえ相手が顧問弁護士であってもダメです。絶対的な守秘義務です。守秘義務違反は、即、検査忌避とみなされても仕方がありません。社外には絶対に秘密です。ウラでコンサルタントに相談。。。なんてこともご法度です。

<検査に対する心構え>
おそらく、第二種金融商品取引業や投資顧問業務をされている方の多くは、既にここまでの話までに、私の話をどれくらい理解されているかが心配です。ですから繰り返します。

1. 検査は突然入る。(事前の通知はない)
2. 検査は受任義務がある。(どんな理由があろうと断れない)
3. 検査命令書の提示から検査は本格的にスタート。(提示は水戸黄門の印籠の場面と同じ)
4. 検査には守秘義務がある。(顧問弁護士にも話してはいけない)
5. いずれの違反も検査忌避のおそれがある。

以上からはっきりすることは、すべての金融商品取引業者は、明日検査が入っても良いように準備をしておかなければならないということです。逆にいうと、検査が入ってから何かを始めてもすべてムダということです。

<検査忌避>
検査忌避は、検査妨害と呼ばれることもありますが、いずれにしても、検査を拒否する行為や検査の進行を妨げる行為をすべて指します。検査忌避は、最悪、1年の懲役刑です。

「そんな脅しちゃって。本当は検査忌避なんてないんでしょ」

と疑う方がいらっしゃいましたら、金融庁が公表している行政処分事例集をご覧ください。私の言っていることが、ウソでないことはもちろん、誇張でもないことがわかります。検査忌避は、金融商品取引業者がやってはいけない最大の罪の一つです。検査忌避は、登録抹消になってもおかしくないことも、行政処分事例集で確認してください。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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