外務員の職務停止


4月12日藍澤証券株式会社の支店長、マネージャーが、2年間の外務員の職務停止処分を受けています。2年間はめったに見ることがないほど長いです。証券会社の職員でありながら、2年間、営業もトレーディングもできないというのですから、相当重い処分であるということです。原文は、こちらをご覧ください。

詳細は、原文だけではわかりませんが、証券会社の職員が、もっぱら投機的利益の追求を目的として、有価証券の売買を行ったとあります。金商業等府令117条1項12号違反です。

金商業等府令117条1項12号は、次の3つの場合、金融商品取引業者等の役職員による有価証券の売買その他の取引等をすることを禁止しています。

1. 自己の職務上の地位を利用した場合
2. 職務上知りえた特別の情報に基づく場合
3. もっぱら投機的利益の追求を目的とした場合

職務上知りえた特別の情報には、顧客の有価証券の売買その他の取引等に係る注文の動向を含むと規定されています。

若干わかりにくい規定ですが、要するに、仕事を通じて知った情報を利用して株式を売買したり、一発当てようと思って株式を売買したりすることは、一切ダメだということです。

相当古い言葉で言うと、「手張り禁止」という意味です。(昔は、手の甲をポンポンとたたいて、「手張り」を指したものですが、今は「手張り」という言葉自体、死語かもしれません。)

どうしてダメかというと、顧客と利益相反の関係に立つ可能性が高いからです。たとえば、顧客が株式の買い注文をドッと出したとき、約定成立前に、自分のお金で買って、顧客の注文が成立した高い価格で売り抜けるなんていう行為が典型ですが、この場合、自分のお金で買う行為は、少しでも安く買いたいという顧客の利益に相反します。

なお、金商業等府令117条1項10号に「フロントランニングの禁止」というのがありますが、これは、顧客の注文が成立する前に、「自己=会社のお金」で株券等を売買する行為の禁止を指します。今、話しているのは(今回処分を受けている禁止行為は)、役員や社員が「自分のお金」(ポケットマネー)で売買する行為です。

今回の処分は、回数が多かったせいか、それとも、悪質だったせいかはわかりませんが、いずれにしても、2年間という長期の外務員職務停止処分で、職務上知りえた情報を利用して売買したり、投機的目的で売買したりする行為に対しては、厳格な重い処分がくだされることだけは事実です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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