証券化(5)


証券化の方法として匿名組合契約を活用することが多くあります。ただ、匿名組合契約の場合、信託受益権と比較し、規制が若干厳しめです。

自己募集
規制が厳しめと言ったのは、自己募集が第二種金融商品取引業になる点です。

信託受益権の場合、委託者の指図で運用する場合、委託者兼受益者が受益権を販売する行為が自己募集になりますが、信託受益権の自己募集は第二種金融商品取引業ではありません。

これに対し、匿名組合契約の営業者が投資家を集める行為、つまり、営業者の自己募集は、金融商品取引業です。

なお、話が前後しますが、信託受益権の自己募集は確かに金融商品取引業ではありませんが、信託受益権を買付けるなど、売買を業としている場合には、第二種金融商品取引業の登録が必要です。

この場合、「業」とは、反復継続性が認められる行為を指します。言い換えると、収益を得ているかどうかは関係がありません。タダで行っても、反復継続性が認められると、まず、業に該当します。1回の取引であっても、今後、反復継続的に行う予定があったなら、やはり、業です。

逆に、信託受益権の売買が業ではない場合とは、自身が投資家の場合です。金融商品取引法の業者規制は、あくまで業者、つまり、対外的に業とし行う者のみに対して適用されるものですから、そうではなく、業者から買ったり売ったりする行為は、通常、金融商品取引業ではありません。株式の売買を想像してみてください。株式の売買も、金融商品取引法では金融商品取引業であると定義されています。でも、個人投資家が証券会社を通じて株式を売買することは金融商品取引業に当たりませんよね。信託受益権の取引についても、同様のことがいえます。

一方、繰り返しになりますが、匿名組合契約はといえば、出資者を集めた時点で、既に金融商品取引業です。「いや、一回きりだよ」といっても、説得力がありません。なぜなら、匿名組合契約の出資者は、通常、複数いるからです。その時点で、反復継続性が認められます。

500名の理由
二項有価証券の募集は50名規制ではなく、500名と10倍も多くなっています。なぜでしょうか。良し悪しは別にして、理由は、二項有価証券の流動性が低いからです。たとえば、上場株券を考えてみてください。上場株券は、流動性が高く、投資家間で売買が起こります。投資家から投資家に対して、売付けが行われるということです。投資家から投資家に売付けられる場合、売付けた投資家は、当然のことながら、買付けた投資家に株券発行者の企業情報を説明しません。

これに対し、二項有価証券は流動性が低いため、投資家から投資家に売付けが行われる可能性は低く、金融商品取引業者から投資家に取得の申込みの勧誘や売付けの申込みの勧誘が行われるため、一般投資家に対しては、契約締結前交付書面により説明が行われることから、一項有価証券よりも募集要件が緩和されています。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
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