外国証券売出し(4)


前回の続きです。

「外国債券」の売出しが、「外国証券売出し」として、有価証券届出書の提出を必要としない、法定開示の適用を除外される売出しとされるためには、1.外国債券の「国内における」売買価格が容易に取得できること、2.外国債券が外国の取引所で売買されているか、又は、外国で継続的に売買されていること、3.外国債券の発行者の企業情報が英語か日本語で公表されており、国内で容易に取得できることです。

1.の国内における売買価格が容易に取得できることという要件は、対象が金利・為替ものやクレジットもの仕組債を含みますから、流通市場における売買実績が少ないこと、また、インディケーションを即座に、タイムリーに提供・更新できる証券会社が少ないことから、満たすことが簡単ではありません。

2.の外国で上場又は継続的に売買されていることという要件は、その意味するところが、外国の流通市場で継続的に売買されている外国債券であれば、価格に発行者の情報その他の情報が織り込まれているはずであるから、という点にあるため、流通価格が外国に存在しない(そもそも流通していない)のが通常である、円建て仕組債が、この要件を満たすことは、まずムリです。

以上の話を前回までにしました。

<情報提供>
3つ目の要件は、発行者が、外国で経理に関する情報(企業情報)を、英語か日本語で公表していて、国内の投資家が、企業情報を容易に取得できることです。

これは何とかなりそうです。ただ、英語圏以外の国にある会社が発行者であるときは困難なこともあるでしょう。例えば、フランス語で企業情報が公表されている場合、証券会社や第三者機関が、英語か日本語に企業情報を翻訳してインターネットで公表してもダメです。「発行者」が公表していないからです。

金融庁のパブリックコメント回答の言葉を借りると「当該情報を公表する責任を負っている者は発行者その他これに準ずる者である必要が」あります。

なぜ、証券会社や第三者機関が翻訳したものではダメなのか。

理由は、外国証券売出しは、まさに、売出しの一類型だからです。原則的な売出しは、法定開示が要求されますが、有価証券届出書の作成も、目論見書の作成も、最も正確な情報をもっている発行者がすると規定されています。

外国証券売出しは、売出しの一種なのですから、企業情報を公表すべき義務は、当然、最も正確な情報をもっている発行者にあるわけです。

以上、3つの要件を見てきてわかるとおり、「外国債券」のうち、普通社債は3つの要件をクリアーできるものがありそうですが、金利・為替ものやクレジットものの仕組債は、3つの要件のうち、1.と2.、特に2.の要件をクリアーするのは、まずムリです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
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