SMBC日興証券のインサイダー取引


SMBC日興証券の元執行役がインサイダー取引規制違反という金商法違反で逮捕されたと報道されています。新聞報道によると、インサイダー取引で執行役が逮捕されたのは初めてだということです。

ただ、(1)インサイダー取引規制自体が新し制度であること、(2)執行役の制度はもっと新しい制度であること、から、特別な事情があったわけではありません。

<過去の事案>
今回は、元SMBC日興証券の執行役(員)が、TOB(公開買付け)の情報を知りながら、友人らのインサイダー取引に関与していたという事件ですが、実は、そっくりな事件が過去にも起きています。大和証券SMBCの元部長がTOBの情報を知りながら、インサイダー取引を行ったという事件です。詳細は、こちらをご覧ください。

<共通点>
2つの事件の共通点ですが、まず、いずれもTOBに関係しているという点です。TOB規制は、日本語で「公開買付制度」と呼ばれる開示制度の一種ですが、上場株式を市場外である一定以上買い付けようとする者は、こそこそやらずに、情報を開示して行うことというルールです。

TOBがあると、株主構成が変わってしまいますので、他の株主にそのまま株主でいるか、それともTOBで買い付けようとする者に株券を買い付けてもらうかの選択権を与えようというのが、公開買付制度の趣旨です。

TOBが公表されると多くの場合、株価は上がります。買い付けたい方はどうしても買い付けたいので、時価よりも高い価格で買い付けると公表(開示)することが普通だからです。通常、時価の3割程度で買付価格が決まりますから、買った方が得ですよね。

<SMBC>
二つ目の共通点は、いずれも社名に「SMBC」がついているということです。SMBCは三井住友銀行系の証券という意味ですから、いずれのケースも三井住友銀行系で起きたということです。

<銀行員>
そしてこれが重要で、この事件の根本要因ともいえる共通点は、いずれの事件も三井住友銀行からの出向者が起こしているということです。証券の者ではなく、銀行の者が起こしている点に注意です。

証券会社ではインサイダー取引が金商法で禁止されていることは誰でも知っています。一方、一般の方はご存じないと思いますが、銀行ではインサイダー取引が金商法違反として禁止された行為であることを知っている者は、ほとんどいません。正確に言うと、どういう取引がインサイダー取引になるかを知っている者は皆無に等しいです。銀行の業務は、預金、貸付、為替であって、有価証券の売買は銀行の本来業務(固有業務)ではないからです。

もし知っていれば、数百万円のために地位や人生を犠牲にするはずがありません。

今回のSMBC日興証券の事件は、10年前の大和証券SMBCの事件の反省、つまり、銀行員はインサイダー取引規制を知らなくても良いという銀行の根底に流れる風潮がまったく生かされていなかったために必然的に起きた事件です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
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