投資運用業の登録4


不動産関連特定投資運用業の登録をする過程で、国交省の総合不動産投資顧問業の登録をするわけですが、総合不動産投資顧問業の登録申請の過程で、組織再編・人事異動が必要になることがあります。

<兼任・兼職の禁止>
総合不動産投資顧問業の登録申請においては、前提としていくつかの条件をクリアーしなければなりません。

一つは、資本金要件で、資本金は5000万円以上であることが求められます。金商法の施行に伴い、投資運用業に係る登録要件の最低資本金額に合わせて改正されたものです。

もう一つは、人的要件です。総合不動産投資顧問業の登録の中で、最も有名な人的要件は、「判断業務統括者」です。

判断業務統括者は、経験として、①数十億円以上の不動産に関する投資、取引又は管理に係る判断の経験があり、②これらの判断に係る業務に2年以上従事し、③各業務について適切な判断を行ってきたと認められることが求められます。

判断業務統括者には知識要件もあり、不動産コンサルティングマスターや不動産証券化協会認定マスターなどの要資格者であることが必要です。

「当社は、資本金は5000万円以上だし、判断業務統括者の資格要件を満たす者もいるから登録要件は満たしている」

こう考える方が、実は後を絶ちませんが、ことはそう単純ではありません。

判断業務統括者の設置は最低限の要件で、他にも営業所の業務を統括する者、投資判断を行う者、助言業務を行う者などを設置しなければなりません。

もっとも、実務で最も問題になるのはこれらの点ではなく、部門長は兼務・兼任・兼職ができない点です。

例えば、投資運用部と投資営業部があった場合、両部門の部門長を同一人物にすることができません。投資運用部長と投資営業部長は別人でなければならないということです。

投資運用部と投資助言部があっても同じことで、この場合は、投資運用部長と投資助言部長は異なる人物でなければなりません。

したがって、投資運用部と投資助言部があった場合、金商法では、運用と助言の統括者(政令で定める使用人)を投資運用部長兼投資助言部長にすることができますが、不動産投資顧問業登録規程では、兼務発令ができないという事態が生じます。

この場合、投資運用部長と投資助言部長を異なる人物にして、政令で定める使用人を増員する必要性が生じる可能性があります。

兼務ができないのは、部が室であっても同じです。

また、部門長が兼務できないのだから、例えば、総務部長と経理部長は兼務できません。

兼務・兼職・兼任のすべてが認められないのですから、例えば、営業所の業務を統括する者が、代表取締役(社長)だった場合、代表取締役は、親会社の取締役や部長を兼職することができません。

金融商品取引業者は、内部監査部(名称は自由)の設置が必要ですが、親会社の内部監査部長と子会社の内部監査部長を兼職することもできません。

<内部監査部>
実際、不動産関連特定投資運用業・総合不動産投資顧問業の登録の過程においては、「内部監査部」が、四方八方の要件を満たさないとならないため、苦労される会社が少なくありません。

まず、不動産関連特定投資運用業に係る登録を受けようとする者は、多くの場合、不動産信託受益権等売買等業務を行うため、二種登録をします。登録要件の一つは、内部監査部門の者に宅地・建物の取引に関する知識・経験があることです。実務では、原則として、宅建主任者の資格が求められます。

次に、不動産関連特定投資運用業を行う金融商品取引業者の内部監査部門は、実務で、内部監査の経験者を置くことが求められます。

さらに、こちらは、総合不動産投資顧問業の登録において、内部監査部門の部門長は、兼務・兼職・兼任ができません。

最低限、この3つの要件をクリアーしなければなりません。

「当社には、金融商品取引業者の内部監査経験者の宅建主任者がいる」という会社は、相当恵まれています。

現実的には、ほとんどの会社が、3つの要件を満たすために、複雑なパズルを解かなければなりません。

各社各様なので「正解」はありませんが、内部監査部門のあり方は、不動産関連特定投資運用業・総合不動産投資顧問業の登録を受けるための難問の一つです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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