ファンドと金融商品取引法5


金商法は、ファンドの種類を大きく「事業型ファンド」と「有価証券投資型ファンド」に分けています。

<事業型ファンド>
事業型ファンドとは、ファンドのうち、運用資産の過半数(50%超)が、有価証券投資以外の方法で、運用されるファンドを指します。

わかりやすく言えば、事業を行うためにお金が集められたファンドが事業型ファンドです。

太陽光発電事業が有名ですが、お金を集めた事業者が事業を行うから、事業型ファンドと呼ばれます。

紛らわしいのは、事業のうち、有価証券投資が少し入っている場合です。出資者から集めたお金は、基本的に事業に回すのだけれども、余資は、一時的に、有価証券に投資する場合、このファンドは、事業型ファンドか有価証券投資型ファンドかという問題です。

いくら事業型ファンドだと言い張っても、運用資金の50%超を有価証券の投資に回したら、有価証券投資型ファンドになってしまいます。だから、例えば、匿名組合契約の場合、契約で、営業者が、匿名組合契約を締結して集めた金銭の50%超(正確には借入も含めた資金調達の全額の50%超)を有価証券で運用しないと決めておく必要があります。

余資運用として、有価証券に投資をしても、資産に占める割合が50%未満であれば、事業型ファンドです。

ただし、余資を一瞬でも0.1%でも有価証券で運用する行為、投資運用業になり得る点には、最大の注意が必要です。この大問題については、後日、お話しします。

<金銭債権による運用>
金銭債権、例えば、クレジット会社・信販会社所有しているローン債権のことですが、金銭債権の証券化のために、SPC(Special Purpose Company、特別目的会社)として、合同会社を設立した場合、合同会社が投資家から金銭の出資を受けて、プールされた金銭で、金銭債権を取得する行為も、事業の一つであり、全体の仕組みは、事業型ファンドです。

繰り返しになりますが、事業型ファンドの場合、法定開示義務が生じませんので、募集を避けて、私募を選択する意味がありません。

<有価証券投資型ファンド>
有価証券投資型ファンドの募集と私募の場合は、第一項有価証券の募集と私募の違いと同様の意味の違いが生じます。

有価証券投資型ファンドの募集をしてしまうと、開示規制がフルに適用されます。したがって、発行者は、有価証券届出書を提出しなければなりませんし、目論見書を作成しなければなりません。

法定開示規制が適用されると、時間とお金がかかりますので、機動的な資金調達ができないため、有価証券投資型ファンドの発行者が、募集を避けて私募を選択するインセンティブはあります。

募集にせよ、私募にせよ、有価証券投資型ファンドの取引の場合は、開示規制がフルに適用されますから、私募の場合には、有価証券届出書の提出や目論見書の作成の代りに、「転売制限」を投資家に告知する義務が生じます。

所有者の数が500名以上にならないような取得勧誘を行った場合であっても、転売を自由に認めてしまっては、所有者の数が500名以上になる可能性があります。だから、有価証券投資型ファンドの私募の場合には、投資家に対する転売制限の告知義務が発生するのです。

繰り返しになりますが、事業型ファンドには、開示規制が一切適用されませんので、私募だからといって、転売制限が付されることはありません。転売制限が付されるのは、開示規制がフルに適用される有価証券投資型ファンドの場合だけです。

なお、有価証券投資型ファンドの私募であっても、事業型ファンド同様に、ホームページ(サイト)で広告することはできます。サイトで広告したからといって、有価証券投資家型ファンドの私募が募集に変わることはありません。

有価証券投資型ファンドの私募をサイトで行った場合には、所有者の数が500名以上にならない取得勧誘を行えばよいのです。

ただし、これも、繰り返しになりますが、所有者の数が500名という数字は、取得勧誘の結果が500名未満であれば私募になるのではなく、取得勧誘行為の時点において、所有者の数が500名未満とならなければ、ファンドの取得勧誘は私募ではなく、募集になります。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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