法廷帳簿の作成部門


法定帳簿について質問を受けたので、ご紹介します。

質問は「法定帳簿は誰が作るのか」です。この意味は、フロント(営業部門)が作成するのか、バックオフィス(管理部門)が作成するのかという質問です。

回答は簡単で「法令(条文)通りに作成するのであれば、誰が作っても構わない」ですが、この「法令(条文)通りに作成する」ためには、必然的に、一定の制約が生じます。

<注文伝票>
注文伝票は、必ず、フロントが作成する必要があります。

なぜか。

金商業等府令第158条第2項で、注文伝票は顧客から注文を受けたときに、すみやかに作成することが義務付けられているからです。注文伝票は、何日の何時何分に注文を受けたと、顧客に対して証明するための「証拠」という側面があるため、すみやかに作成することが求められています。

顧客から注文を受けたときにすみやかに作成することができるのは、顧客に直面しているフロント(営業部門)だけです。バックオフィスは、顧客と接していないので、注文を受けたときに作成することができません。

なお、条文では「速やかに作成する」とありますが、実務的には、「速やかに作成を始める」です。

<取引日記帳>
取引日記帳は、フロントが作ってもバックオフィスが作っても構いません。実務的には、バックオフィスでしょう。バックオフィスが事後の記録のために、作成します。この「事後の記録のため」は、次の「媒介に係る取引記録」と「私募の取扱いに係る取引記録」において、重要な意味を持ってきます。

<媒介に係る取引記録>
媒介に係る取引記録は、フロントが作ってもバックオフィスが作っても構いませんが、これも、「事後の記録のため」に作成することから、バックオフィスが適当です。

なお、「取引日記帳」は媒介行為については作成する義務がありません。(金商業等府令159条)なぜなら、取引日記帳は事後の記録のために作成するものですが、媒介に係る取引記録も事後の記録のために作成するものであるため、ダブるからです。

<私募の取扱いに係る取引記録>
私募の取扱いに係る取引記録を作成する部門は、フロントです。私募の取扱いに係る取引記録は、注文伝票同様、申込みを受けたときに、すみやかに作成しなければならないからです。(金商業等府令第163条第2項)

私募の取扱いに係る取引記録は、これも注文伝票同様、何日の何時何分に申込みを受けたと、顧客に対して証明するための「証拠」という側面があるため、すみやかに作成することが求められています。

でも、見た目は似ています。見た目は似ていますが、私募の取扱いに係る取引記録は、取引日記帳と違って、事後の記録のために作成しているわけではないため、バックオフィスが作成することは事実上不可能です。また、取引日記帳と作成する目的が違うため、媒介行為の場合と異なり、私募の取扱いについて、取引日記帳を作成しなければなりません。

一読しただけでは、なんだか面倒くさそうですが、理にかなっているので、もう一度読むと、すっきりするはずです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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