社内規則と従業員研修は法令上の義務です


5月29日施行の平成26年改正金商法の中で、一種業者、二種業者、助言業者、運用業者共通に重要な条文は、金商法第35条の3(新設)です。

<業務管理体制の整備>
金商法第35条の3の具体的な内容は、金商業等府令に委任されていて、金商業等府令第70条の2は、金商業者が整備しなければならない業務管理体制として、金商業を適確に遂行するための社内規則を整備し、社内規則を遵守するための従業員向け研修その他の措置を講じることと規定しています。

金商業等府令第70条の2に規定する要件を具備した業務管理体制を整備していないことは、登録拒否要件となり(金商法第29条の4第1項第1号ヘ)、既存の金商業者の場合は、業務停止命令又は登録取消処分になります。(金商法第52条第1項第1号)

実際、金融庁はパブリックコメントの回答で、業務管理体制が整備されていない場合には、登録取消しも含めた行政処分を通じて金商業者の業務の適正化を図るとしています。(平成27年5月12日付金融庁パブリックコメント回答10頁51番以下)

<社内規則>
従来から、金融庁は社内規則の整備を重視する傾向がありましたが、証券取引等監視委員会は、必ずしも、社内規則の整備を検査項目としていない傾向にありました。社内規則の整備は、金商法違反に直結しなかったからです。

平成26年改正金商法の施行で、社内規則が整備されていない状況が登録拒否要件になり、既存の金商業者にとっては、業務停止命令や登録取消処分のトリガーとなったため、証券取引等監視委員会の検査においても、重点検査項目の一つになったと考えます。

社内規則は、金商業を遂行するために必要な社内規則を指すものと考えられますが(条文では社内規則ではなく社内規則等)、金商業を遂行するために必要な社内規則は、フロント業務に関する規則(投資勧誘規程や顧客管理規程など)に限らず、管理業務に関する規則(顧客情報管理規程、経理規程、稟議規程など多数)も含みます。

必要な規程は各社各様であるため、一律には決められませんが、日証協、二種業協会、投資顧問業協会が定める規則やひな形(サンプル)が参考になります。

この規程が特に重要!という規程を挙げることは難しいですが、コンプライアンスの観点からは、証券取引等監視委員会の検査で指摘を受けやすい事項に関する社内規則の整備は必須です。

<従業員研修>
社内研修は、まず、「研修計画」を立てることが必要です。行き当たりばったりはダメです。私が、現役のコンプライアンス部長だったときは、コンプライアンス・プログラムに研修計画を規定していました。

研修計画を立てるためには、回数を決めなければなりませんが、集合研修としては、助言で年2回以上、二種で年4回以上、一種・運用で年6回以上は必要だと考えています。

以上は、集合件数の回数のことで、これだけでは社内規則の周知に1年以上かかってしまいますので、PCで受講できる研修や週一回の全役職員向けメールの発信など、他の措置を講じることが必須になります。

社内研修の講師を誰にするかも重要です。私が、コンプライアンス部長のときには、毎回、私が集合研修の講師をしていましたが、毎年改正される金商法について行くのが困難という金商業者の場合は、金商業務の実務に詳しい外部講師の活用が必要になります。

集合研修の時間ですが、私の経験則では、質疑応答を入れて30分を目標にするのが良い研修になります。

研修資料は充実させたいです。研修資料は証券取引等監視委員会の検査でも提出を求められます。

参加者リストの作成も重要です。参加したことを証明するために、自筆でサインをもらいます。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
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