金商業の定義(ニュースレター)


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現在、ニュースレターでは「金商業の定義」をシリーズで配信しています。今回は、昨日配信したニュースレターの内容をサンプルとして掲載します。



金商業の定義(金商法第2条第8項)の「店頭デリバティブ取引」(第4号)は、有価証券の取引と異なり、発行市場・流通市場という概念がないため、定義は読めばわかることから説明を割愛し、「有価証券の引受け」(第6号)の話をします。

有価証券の引受けは一定の資本要件を満たした一種業者にのみ認められる業務なので、有価証券の引受けができない一種業者、二種業者、助言業者、運用業者、金商業者の関連会社を含む無登録会社にとっては「やると無登録営業になってしまう行為」として理解が必須の金商業です。

「引受け」の定義は、金商法第2条第6項にありますが、読み解くのが難しいため、開示規制の金商法第21条第4項に規定する「元引受契約」を読んだ方がわかりやすいです。なお、「元引受け」とは、有価証券の発行者や所有者から直接有価証券を引き受ける行為を指し、元引受人から間接的に引き受ける行為は下引受けで、いずれも金商業である「有価証券の引受け」です。

有価証券の引受けとは、募集や私募に際し、有価証券を取得者に取得させることを目的として、有価証券の全部又は一部を発行者から取得することです。誤解を恐れず噛み砕いて言うと、取得者に取得させる目的(以下「転売目的」)で発行者から有価証券を買う行為が有価証券の引受けで、「買取引受」と呼ばれます。(※)

転売目的で発行者から有価証券を買うと有価証券の引受けになってしまうということなので、金商業に該当しない場合を除き、一定の証券会社以外、何人であろうと、例えば、転売目的でTK持分を取得することはできず、また、転売目的で発行者(信託契約の委託者)から不動産信託受益権を買うことはできません。

さらに、発行者から直接的に取得する場合のみならず(元引受け)、間接的に取得する場合も(下引受け)「有価証券の引受け」であることは既述のとおりです。

また、有価証券の全部又は一部につき他にこれを取得する者がない場合にその残部を発行者から取得することを内容とする契約を締結する行為も有価証券の引受けです。これも、噛み砕いて言うと、売れ残りを買い取る約束を発行者にする行為が有価証券の引受けで、「残額引受」と呼ばれます。

有価証券の発行者に「売れ残ったら買います」と約束すると有価証券の引受けになってしまうということなので、「売れ残りを買ったら有価証券の引受けになる」ではなく、「売れ残りがあろうとなかろうと、売れ残りを買い取る約束をしたら有価証券の引受けになる」です。

残額引受についても、金商業に該当しない場合を除き、一定の証券会社以外、何人であろうと、例えば、TK持分の総出資額が予定額に満たない場合に不足分に対する出資を予定したり、予定した販売期日までに不動産信託受益権が売れない場合に当該不動産信託受益権の買付けを予定したりすることはできません。

また、残額引受は買取引受と違って、転売目的でなくても、発行者から売れ残りを引き受ける約束をした時点で有価証券の引受けです。有価証券の引受けが金商業であるゆえんは、発行される有価証券の消化を請け負う行為を規制することにあるからです。

有価証券の引受けは、平成10年に証券業が登録制になって以後も認可制だった行為であり、現在も、一定金額以上の資本金要件を満たした証券会社にのみ認められる行為であって、引受人は発行者と密接な関係があると認められるために金商業者の中でも引受人にのみ適用される条文があるなど、発行者との関係に鑑み、大きなリスクと責任を伴う、限定的に認められる行為です。

もっとも、買取引受けに関しては、TK持分や不動産信託受益権を一切取得できないと言っているのではなく、一定の条件を満たした二層構造の不動産ファンドやリース事業ファンドの取得など定義府令第16条第1項第5号~第7号の2で金商業に該当しない買取引けと規定されている場合は、取得可能です。また、転売目的ではないと認められる場合も買取引受の定義から取得可能です。

一方の残額引受けには、買取引受のような例外がありません。

現実的かどうかは別にして、有価証券の引受けは一定金額以上の資本金要件を満たした証券会社の他は認められない以上、コンプライアンス担当者は、金商業者や関連会社の行為が有価証券の引受けに該当しないように社内研修を実施し(残額引受は結果が見えにくいため、経験則上、未然防止手段は社内研修しかない)、モニタリングを行う必要があると考えます。

※一種業者でない限り、「売出し」は実務的に関係がないので説明しませんでしたが、売出人を相手方とする買取引受や残額引受も有価証券の引受けです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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