みんなのクレジットの報道について


3月24日のメールマガジンからの抜粋です。



今朝のHNKニュースによると、証券取引等監視委員会が、みんなのクレジットの検査の結果、金商法違反があったことから、金融庁に対し、同社に行政処分を行うように勧告をするようです。

本当だとすると、検査情報が漏れていることになるため、情報の管理の厳格化が求められると思います。

NHKによると、みんなのクレジットは、広く投資家から集めたお金を資金需要者に貸し付けるにあたり(ソーシャルレンディング)、グループ会社に貸し付けていたということです。金商法違反となっている点は、グループ会社は、投資家に事前に説明した貸付先ではなかった点であるということです。

投資家からのお金の集め方は、投資家と締結する匿名組合契約で、資金需要者へのお金の貸方は、資金需要者と締結する金銭消費貸借契約です。

前者は二種業務、後者は貸金業なので、みんなのクレジットは、証券取引等監視委員会の検査対象です。

HNKでは「金商法違反」とのみ報道していますが、仮に、報道が正しいとすると、金商法第何条違反でしょうか。

考えられるのは、金商法第38条第1号の「虚偽告知」、金商業等府令第117条第1項第2号の「虚偽表示」です。

虚偽告知は、一般的に、意図的に虚偽の告知をすれば、成立する行為規制違反で、刑事罰の対象です。虚偽告知は、一般的に、虚偽告知とは言えない程度の虚偽の表示で、行政処分の対象です。

「告知」と「表示」と単語が異なり、文字を見ると、前者は口頭で、後者は文書で行う者のように見えますが、告知も表示も、口頭・文書の別を問いません。

これらの条文の適用に関する注意点は、以下の通りです。

1 規制の対象者
虚偽告知も虚偽表示も金商法第38条が根拠であることから、規制の対象者は、金商業者だけです。金商業者以外の者が同じことをしても、当該条文で処分されることはなく、また、金商業者の役職員が処分の対象になることはありません。ただし、金商業者が個人で登録した経営者であれば、当該経営者は、金商業者として処分の対象になり、また、役員は、解任命令の対象になります。(金商法第38条第2項)

2 「金融商品取引契約の締結又はその勧誘」要件
金商業者は、顧客に虚偽のことを告げると、即、虚偽告知又は虚偽表示となるかというと、そうではなく、虚偽告知又は虚偽表示が成立するためには、「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して」行われることが、要件になっています。

報道によると、みんなのクレジットは投資家に対し、事前に虚偽の説明をしていたということなので、この要件を満たしていると思います。

念のため、同社のサイトを見たところ、貸付先について、「不動産の取得資金、分譲住宅建設費用、飲食店等フランチャイズの開業費用、治療院の短期ローン等、事業性資金」と公表しています。

同社は投資家に交付している契約締結前交付書面を見たことがないので、実際に、貸付先について、投資家にどのような説明をしていたかはわかりませんが、NHKの報道の通り、同社が、グループ会社に対して融資を行っていたのであれば、事業性資金の貸付けと思われるので、虚偽の説明をしたとは言えないと思います。

もっとも、同社が投資家に対し、グループ会社には融資をしないと説明していたとか、同社が、グループ会社が発行する社債に投資していたというような事情があれば、投資家に虚偽の説明をしていたことになります。

NHKの報道によれば、誰だかわかりませんが、金融の専門家が、貸金業法上、貸付先を資金提供者に開示できないことが問題と指摘しているということですが、この点は違うと思います。

私が、証券取引等監視委員会の検査官であって、虚偽の説明で行政処分勧告をするのであれば、同社が、サイトで公表している通りの貸付審査を行っていたのかどうかを確認します。

いずれにせよ、今後、ソーシャルレンディングに対する当局の風当たりは、強くなると考えます。


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テーマ : 金融商品取引法
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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
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