取組方針の公表


7月31日のメールマガジンの抜粋です。



金融庁は、7月28日(金)、「『顧客本位の業務運営に関する原則』を採択し、取組方針を公表した金融事業者のリストの公表(第1回)について」として、取組方針を公表している金融事業者の名称等を公表しました。

http://www.fsa.go.jp/news/29/sonota/20170728/fd_kouhyou.html

第1回目となる今回の公表で掲載されている金融事業者は、6月30日までに金融庁に報告を行った者です。

金商業者等は236社が掲載されています。

掲載されている金商業者の数を細かく数えたところ、取組方針を公表している金商業者は、一種業者で45.6%、二種業者で0.6%、助言業者で1.5%、運用業者で58.2%であることがわかりました。(兼業による重複を除いています。)

運用業者は、もともと、本来の意味でFiduciary Duty(受託者責任)を負っていると考えられているので、やはり、公表している金商業者の割合が高いです。一種業者のうち証券会社は、20年近く前、金融庁が同様の取組みを行った際に公表した経験があるので、運用業者に次いで高い割合で公表しています。

二種業者と助言業者を見ると、二種業者は、私が主催した勉強会の出席者が所属する金商業者などが公表し、助言業者は、私が顧問をしている金商業者などが公表していますが、公表している金商業者がほとんどいません。

まだ取組方針を公表してない、あるいは、取組方針を策定してない金商業者の興味は、おそらく、既に取組方針を公表している先行組の金商業者が、どの程度の内容の取組方針を策定・公表しているかという点にあると思います。

そうすると、勢い、「公表者リスト」(別紙1)に注目してしまうと思いますが、今回の金融庁による公表の中で、最も重要なものは「金融事業者による原則の採択等の状況について」(別紙2、以下「感想」)です。

「顧客本位の業務運営に関する原則」(以下「原則」)を採択するかどうかは、金商業者の自由であり、したがって、原則1に基づく取組方針の策定・公表についても、当然のことながら、やる・やらないは、金商業者の任意です。

ただ、金融庁の感想をよく読み、よく分析すると、少し違った見方が見えてきます。

感想で、金融庁は、まず、多くの金融事業者が原則を採択して、取組方針を策定・公表したことを「歓迎する」としています。

次に、金融庁は、まだ取組方針を公表していない金融事業者に対して、公表に努めるようにお願いすると、(requireではなく)requestを行い、続けて、モニタリングなどを通じて、取組方針の策定・公表に関して、金融事業者の主体的な取組みを促すといっています。

金融庁は、原則に対する金融事業者の取組状況のモニタリング調査をして、原則への対応を推進していくということです。

さらに、既に取組方針を公表している金融事業者の中には、「顧客本位の業務運営の定着度合いを客観的に評価できるようにするための成果指標(KPI)」を公表している者もあり、公表されたKPIの中には、「好事例」もあるので、まだ、KPIを公表していない金融事業者は、既に公表されたKPIの好事例を踏まえながら、KPIを設定・公表するように努めるようにとrequestしています。

以上を踏まえると、次の見方が見えてきます。

1. 原則の採択は、自由・任意が「原則」だけれども、まだ取組方針を策定・公表していない金商業者は、今回公表された先行している金商業者の事例にあたり、好事例のKPIを踏まえつつ、金融庁(財務局)のモニタリングを受ける前に、取組方針の策定・公表を、早急に実施し、金融庁に報告しなければならない

2. 既に取組方針を公表している先行組の金商業者であっても、KPIを公表してない金商業者は、好事例として公表されたKPIを踏まえながら、取組方針を改善し、差し替えなければならない

以上の対応は、次の「締切日」である9月30日までに行う必要があると考えます。

なお、金融庁は、「KPIの好事例」をわざわざ書き出して、感想で触れていることから、取組方針の策定・公表を行う金商業者も、取組方針の改善を行う金商業者も、好事例のKPIの研究が必須です。


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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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