平成21年改正金融商品取引法(21)


来月1日施行の売出しの定義の見直し等について、各証券会社は対応に追われていらっしゃると思います。先日、ある法律事務所がセミナーをしたと聞いていますが、資料を拝見させていただいたところ、私自身は法令のまとめ方には興味深い点もありましたが、参加された複数の証券会社の方から現場を反映していないものであったために、かえって現場を混乱させているという話も聞きました。そこで、もう一度、実務に沿って、来月施行の対応についてまとめてみました。とても長いですが、これさえわかれば、プレーンな外国証券に対しても仕組債に対しても準備OKです。

<売出しと私売出しの分類>
絶対に記憶していただきたいことは、4月1日から証券会社が有価証券を売付ける行為は、次の7つの種類のいずれかに分類されること、かつ、2つをまたがるものはないということです。
1 発行開示が必要な売出し
2 発行開示不要で外国証券情報の提供が必要な売出し
3 発行開示不要でかつ外国証券情報の提供も不要な売出し
4 適格機関投資家私売出し(プロ私売出し)
5 特定投資家私売出し
6 少人数私売出し
7 売出しに該当しない取引

<外国証券全般の取扱い>
次の要件を満たす外国証券は、外国証券情報を提供すれば、有価証券届出書の提出や目論見書の作成がなくても、売出しが可能です。(法4条1項4号、法13条1項、法27条の32の2、令2条の12の3)

(1) 外国国債・外国地方債・外国特殊法人債
1 国内における当該外国証券の売買価格に関する情報をインターネットの利用その他の方法により容易に取得することができること
2 当該外国証券又は当該外国証券の発行者が発行する他の外国証券の売買が外国において継続して行われていること
3 当該外国証券の発行者の財政・経理に関する情報その他の発行者に関する情報(日本語又は英語で記載されたものに限る)が当該発行者により公表されており、かつ、国内においてインターネットの利用その他の方法により当該情報を容易に取得することができること(当該発行者が有価証券報告書を提出している場合を除く)

(2) 海外発行債券
1 国内における当該海外発行債券の売買価格に関する情報をインターネットの利用その他の方法により容易に取得することができること。
2 当該海外発行債券が指定外国金融商品取引所に上場されていること、又は当該海外発行債券の売買が外国において継続して行われていること(金融商品取引所又は指定外国金融商品取引所に上場されている親会社が当該海外発行債券の元利払いを保証している場合を除く)
3 当該海外発行債券が指定外国金融商品取引所に上場されている場合にあっては当該指定外国金融商品取引所の定める規則、それ以外の場合にあっては当該海外発行債券の売買が継続して行われている外国の法令に基づき、当該海外発行債券の発行者の経理に関する情報その他の発行者に関する情報(親会社が有価証券報告書を提出しているとき、又は当該親会社の株券が上場されている指定外国金融商品取引所の定める規則に基づき、当該親会社の経理に関する情報その他の当該親会社に関する情報(日本語又は英語で記載されたものに限る)が当該親会社により公表されており、かつ、国内においてインターネットの利用その他の方法により当該情報を容易に取得することができるときは、当該海外発行債券について保証を受けている旨、当該保証を行っている親会社の名称及び発行者の事業の内容その他企業内容開示府令2条3項で定める情報)が発行者により公表されており、かつ、国内においてインターネットの利用その他の方法により当該情報を容易に取得することができること(当該発行者が有価証券報告書を提出している場合を除く)

(3) 海外発行株券
1 国内における当該海外発行株券の売買価格に関する情報をインターネットの利用その他の方法により容易に取得することができること
2 当該海外発行株券が指定外国金融商品取引所に上場されていること
3 当該海外発行株券が上場されている指定外国金融商品取引所の定める規則に基づき、当該海外発行株券の発行者の経理に関する情報その他の発行者に関する情報(日本語又は英語で記載されたものに限る)が発行者により公表されており、かつ、国内においてインターネットの利用その他の方法により当該情報を容易に取得することができること(当該発行者が有価証券報告書を提出している場合を除く)

(4) 海外発行受益証券・海外発行投資証券
1 国内における当該海外発行受益証券又は海外発行投資証券(当該海外発行受益証券等)に係る売買価格に関する情報をインターネットの利用その他の方法により容易に取得することができること
2 当該海外発行受益証券等が指定外国金融商品取引所に上場されていること
3 当該海外発行受益証券等が上場されている指定外国金融商品取引所の定める規則に基づき、当該海外発行受益証券等に関する情報(日本語又は英語で記載されたものに限る。)が当該海外発行受益証券等の発行者により公表されており、かつ、国内においてインターネットの利用その他の方法により当該情報を容易に取得することができること(当該発行者が有価証券報告書を提出している場合を除く)

<外国国債・外国地方債・外国特殊法人債(政保債に限る)の特別な取扱い>
上の要件を満たす外国国債、外国地方債、外国特殊法人債(政保債に限る)は、他社が取扱っていることを日本証券業協会が公表する情報で確認できた場合には、有価証券届出書の提出や目論見書の作成がなくても、また、外国証券情報を提供しなくても、売出しが可能です。

<外国証券業者による売付け>
外国証券業者が、金融商品取引業者等や適格機関投資家に対して既発外国証券(私売出しされているものを除く)を販売する行為は売出しに該当しないため(法58条の2ただし書き、令1条の7の3・5号)、有価証券届出書の提出や目論見書の作成も外国証券情報の提供も不要です。売出しに該当しないため、その代理行為も売出しの取扱にはならず、単なる外国証券の売買になります。

<仕組債の取扱い>
(1) 適格機関投資家のみに販売する場合(法23条1項)
1 新発債の場合、適格機関投資家以外の者に販売できないという転売制限を付けてプロ私募で販売(現行通り)
2 既発債の場合、適格機関投資家以外の者に販売できないという転売制限を付けてプロ私募私売出しで販売(新設)
3 いずれの場合も、日本証券業協会に銘柄や数量を報告する義務なし

(2) 少人数に販売する場合(法23条3項)
1 新発債の場合、一括譲渡制限か単位未満分割禁止制限を内容とする転売制限を付けて少人数私募で販売(一部現行通り)
2 既発債の場合、一括譲渡制限か単位未満分割禁止制限を内容とする転売制限を付けて少人数私売出しで販売(新設)
3 少人数私売出しで販売する場合、日本証券業協会に銘柄や数量を報告する義務あり

(3) 証券会社に販売する場合
1 既発債の場合(私売出しされる場合を除く)売出しに該当しない(令1条の7の3・6号)
2 転売制限なし
3 卸し販売した証券会社側に日本証券業協会に銘柄や数量を報告する義務あり

なお、転売制限は、日本証券業協会がサンプルの公表を止めましたので、平成21年改正金融商品取引法(14)をご覧ください。

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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