平成21年改正金融商品取引法(22)


ご質問が多いので、もう少し改正金融商品取引法の実務についてお話します。今回は、特にご質問の数が多い「開示不要の有価証券」についてのまとめです。なお、いただいたご質問にはできるだけ早く回答するようにしていますが、数が多いため遅れています。その点は、ご容赦ください。

<開示不要の有価証券>
開示不要の有価証券は、改正金融商品取引法とは関係がないのですが、ご質問が多いのであらためてここでまとめておきます。

現行でも金融商品取引法3条5号、金融商品取引法施行令2条の11で、日本の加盟する条約により設立された機関が発行する債券で、国内での募集又は売出しについて政府の同意を得ているものは、開示が不要です。(正確にいうと金融商品取引法第2章は適用されません。)

国際復興開発銀行(IBRD、いわゆる世銀債)、国際金融公社(IFC)、アジア開発銀行(ADB)、米州開発銀行(IDB)、アフリカ開発銀行(AfDB)、欧州復興開発銀行(EBRD)が発行する債券がそうです。売出しの定義が変わっても、私売出しの定義が追加されても、これらの発行者が発行する債券の売買には影響がありません。改正金融商品取引法でも、これらの発行者が発行する債券は、金融商品取引法第2章、つまり、開示規制は一切適用されません。

逆にいうと、有価証券届出書や有価証券報告書が提出されている機関は、いくら国際機関であっても、開示規制の対象になります。そもそも、有価証券届出書や有価証券報告書が提出されているということは、金融商品取引法第2章、つまり、開示規制の対象になっている証拠だからです。ですから、国際機関であっても、有価証券届出書や有価証券報告書を提出している債券は、外国企業が発行する債券とまったく変わらない規定が適用され、売出しの定義の改正や私売出しの追加の影響を受けます。

<開示が行われている有価証券の売出し>
開示が行われている有価証券の売出しも改正金融商品取引法とは無関係ですが、ご質問が多いのでまとめます。

開示が行われている有価証券の売出しについては、再度開示する必要がありません。これも開示不要の有価証券ということです。これは、金融商品取引法4条1項3号と同7項から、募集や売出しを通じて既に有価証券届出書が提出されて効力が生じている有価証券は、あらためて有価証券届出書を提出することなく売出しが可能とあるからです。ただし、有価証券報告書が提出されていない、つまり、継続開示が行われていない場合は除かれます。

ただ、金融商品取引法24条1項3号から、原則として、募集や売出しを行った発行者は有価証券報告書を提出して継続開示をすることが義務付けられていますから、募集や売出しを通じて既に有価証券届出書が提出されている有価証券については、再度売出しとなっても、有価証券届出書の提出が不要です。別の言い方をすると、バンバン売ってくださいということです。ただし、一部の有価証券については、金融商品取引法13条1項から目論見書の作成が必要であることに注意が必要です。

<有価証券届出書の提出が不要な外国証券>
前回まで説明してきた平成21年改正金融商品取引法の中で触れたことを言い換えるだけですが、開示不要の有価証券として、改正金融商品取引法4条4号の外国で発行された(外国で流通している)外国証券は、一定の要件を満たしていれば、有価証券届出書を提出することなく売出しが可能、つまり、開示不要の有価証券の一つです。

この一定の要件が、何度か繰り返しました3つの基本要件、1.国内で売買価格が容易に取得できること、2.外国で継続的に取引されていること、3.発行者の財政・経理情報が日本語か英語で公表されていることです。

また、改正金融商品取引法27条の32の2から、これらの外国証券を私売出し以外の方法で売付ける場合、つまり、売出しを行う場合には、これも何度か繰り返しました外国証券情報の提供または公表が必要というのが「開示不要の有価証券」の全貌です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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