平成21年改正金融商品取引法(26)


「非居住者から買い付けたユーロ円債のうち、転売制限が付いていたかどうかわからないものは、譲渡制限のない海外発行有価証券か」という質問を受けることがあります。つまり、国内で転売制限を付されて取引されたことがあるのかないのかわからないユーロ円債はどのように取り扱えば良いかという質問です。

<金融商品取引法の想定>
金融商品取引法は、このような外国証券が存在することを想定していません。転売制限がいったん付いた外国証券は、非居住者に売却されても、同じ転売制限が付いて回ることになっているからです。

例えば、証券会社が国内の投資家にユーロ円債を私募か私売出しで販売した場合、証券会社は必ず転売制限を付けて販売しなければならないことは皆さんご存知の通りです。

このユーロ円債を投資家が換金するために売却する場合、誰に売却しても、投資家は、購入したときに付いていた転売制限を付けて売却することが義務付けられています。その投資家からさらに買い付けた者も、誰であっても、売却する際には、同様に、転売制限を付けなければ売却できません。

結果として、転売制限がいったん付いたユーロ円債は、償還されるまでの間、ずっと最初に付けられた転売制限が付いて回ります。金融庁がパブリックコメントに回答しているように、途中で、外国法人(非居住者)が購入しても同じです。非居住者も、転売制限の付いたユーロ円債を別の非居住者に売却する際には、転売制限を付けて売却する義務があります。

そのユーロ円債が再び居住者に売却される場合には、当然ですが、転売制限が付いていることになりますので、初めて居住者が購入した際に転売制限が付いていた限り、転売制限が付いていたかどうかについて迷う場面を金融商品取引法は想定していないわけです。

<現実的な対応>
以上の規定は、金融商品取引法23条の13に明確に規定されていますが、国内の投資家の中で、自分が買った外国証券を売却するときに転売制限を付けて売却しなければ法令違反になるということを知っている投資家は、おそらく、ほとんどいないでしょう。ましてや、非居住者が金融商品取引法23条の13を知っているとはとても思えません。万一(?)、金融商品取引法23条の13を知っていた非居住者がいたとしても、まさか、他の非居住者に売却する際に「日本の法律で転売制限を付けることは求められているので、転売制限を付けて売却するよ」という者はいないでしょう。

この結果、いったん海外に売却されてしまうと、すべての外国証券について、転売制限が付されていたかいなかったかがわからなくなってしまうというのが現実です。

証券会社には、転売制限が付されたことがあったのかなかったのかを調査する義務はありませんが、証券会社は市場の仲介者であることから、調べられる範囲で調べるべきだと考えています。金融商品取引法は、市場の仲介者に、自身のみならず投資家にも金融商品取引法を遵守させる責任があるという前提で作られているからです。

ただ、どんなに努力してもわからなかったときは、仕方がありませんので、譲渡制限のない海外発行証券として取り扱わざるを得ないというのが現実的な対応だろうと考えます。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
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