平成21年改正金融商品取引法(28)


売出し、私売出し、売出しに該当しない取引のそれぞれを、もう一度、おさらいしておきましょう。

<売出し>
1. 法定開示必要
売出しの原則は、有価証券届出書の提出か、発行登録制度を利用する方法かのいずれかです。つまり、法定開示が行われる場合です。

2. 法定開示不要・外国証券情報必要
次の3つの条件を満たした場合には、法定開示は不要で、外国証券情報の提供が必要になります。
① 価格(国内における売買価格が容易に取得できること)
② 取引(外国で継続的に売買されていること)
③ 情報(発行者が財務状況を日本語か英語で公表していること)

ただし、取引相手が適格機関投資家の場合で、取引相手が適格機関投資家か非居住者以外には売却しない場合には、外国証券情報の提供は不要です。

また、発行者が継続開示(有価証券報告書の提出)をしている場合には、発行者情報を提供する必要はなく、証券情報のみの提供で足ります。

3. 法定開示不要・外国証券情報不要
さらに、次の場合には外国証券情報の提供も必要ありません。
① 国債(対象が外国国債、外国地方債、外国政保債であること)
② 2社(2社以上の証券会社が同一発行者の発行する有価証券を継続的に売買していること)

これだけです。簡単ですよね。

<私売出し>
私売出しの種類は次の3つです。
① プロ私売出し
② 少人数私売出し
③ 特定投資家私売出し

いずれの場合も転売制限を付けなければなりませんが、これだけです。やはり、簡単ですよね。

<売出しに該当しない取引>
外国証券については、次の2つの場合を暗記しておけば十分でしょう。
① 外国証券業者の売付け(外国証券業者が直接金融機関に売り付ける行為)
② 卸し販売(証券会社が他の証券会社に外国証券を卸し販売する行為)

①について、取引相手が「適格機関投資家の場合」と記憶している方を見かけますが、それは間違いです。金商法58条の2のただし書きの範囲に属する適格機関投資家ですから、結局、金融機関に限られます。例えば、年金基金は、いくら適格機関投資家であっても、①は使えませんから、通常、プロ私売出しになります。

<外国決済取引>
話は違いますが、外国で決済されていれば金融商品取引法の適用がないと投資家に説明している証券会社があるとある大手適格機関投資家から聞きました。この考えは間違えです。

金融商品取引法が適用されるかどうかの基準は、「決済」時点ではなく、「勧誘」時点だからです。別の言い方をすると、金融商品取引法は、勧誘行為の規制であって、決済行為の規制ではないからです。

投資家に外国で決済すれば金融商品取引法の適用がないと説明している証券会社は、虚偽表示になりますから注意が必要です。

テーマ : 金融商品取引法
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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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