手数料の表示・名義貸し


第二種金融商品取引業者に対する検査も本格的にすすみ、その結果、複数の会社が当局手検査で指摘されています。規模の大小にかかわりなく当局検査はありますので、同業者が、どのような指摘を受けているかを研究して、同じ指摘を受けないように万全な対策をしておくことは、とても大切なことです。

<手数料の表示>
金融商品取引業者等は一般投資家を対象に広告をする際、また、一般投資家と契約を結ぶ際に、「手数料」を正確に表示しなければなりません。広告段階で、手数料は決まっていない場合であっても、手数料の計算方法や上限を表示する義務があります。また、表示できない場合には理由を表示することになっています。手数料について、第二種金融商品取引業を行う会社が以下の指摘を受けていることが公表されています。


当社は、出資金一口50万円のうち20万円を販促費用として徴取しているが、その募集に際して販売勧誘資料等において、当社が出資金から徴取する出資者負担費用として申込手数料25,000円等を記載するにとどまり、販促費用を徴取する旨の表示・説明を行わなかった。

要するに、手数料の表示として、申込手数料の25,000円は販売資料に書いてあったけれども、顧客にとっては手数料と同じ出資金の一部を手数料として表示していなかったという指摘です。

「金融庁の考え方」(いわゆるパブリックコメント回答)の中で、金融庁は「手数料とは外枠の手数料ばかりでなく、実質的に業者の手数料となるものはすべて表示すること」と回答しています。このケースは、販促費用であっても、つまり、「収益科目」ではなく「費用科目」であっても、顧客にとっては手数料と同じであるから、出資金の一部を手数料として表示すべきであったという、パブリックコメントよりも踏み込んだ指摘です。

<他社に委託した出資者の募集>
匿名組合契約を締結することは、「自己募集」と呼ばれる金融商品取引業ですので、第二種金融商品取引業の登録を受けた者以外はできません。また、自己募集をしている金融商品取引業者のために、出資者を集める行為は「募集の取扱い」または私募の取扱い」という金融商品取引業になりますので、やはり、第二種金融商品取引業の登録が必要です。以下の指摘は、この件に関する指摘です。


当社は、金融商品取引業の登録を受けていないA社及びその社員に対して、当社の名義を貸し、本匿名契約に係る出資の募集を行わせた。

A社の行った行為は「募集の取扱い」か「私募の取扱い」のいずれかです。いずれにしても、第二種金融商品取引業の登録を受けた者以外はすることができません。この指摘は、自己募集をしていた匿名組合契約の営業者が、金融商品取引業者でないA社に、出資者を集める手伝いをしてもらっていたという指摘です。

第二種金融商品取引業の登録を受けていない者は、どんな形であっても、不動産信託受益権の募集や販売にかかわることは金融商品取引法上不可能です。このケースではA社はお咎めなしであったようですが、金融商品取引法を厳格に適用すれば、A社の代表者は3年以下の懲役です。指摘を受けた匿名組合の営業者は、A社の違反を幇助したという捉え方も可能ですが、証券取引等監視委員会は、「名義貸しの禁止」に違反したという行政処分の対象として捉えたものです。

この結果、同社は6ヶ月間の営業停止になりました。

不動産信託受益権の販売において、金融商品取引業者として登録されてない宅建業者に依頼して、買い手を探してもらったと同じことです。このような依頼をすることは、金融商品取引法の「名義貸しの禁止」に違反しているという形で、法令違反を問われたケースです。

第二種金融商品取引業の登録を受けていない者は、不動産信託受益権の募集や販売に、どんな形にせよ、関与することはできないということは金融商品取引法上明らかですが、第二種金融商品取引業の登録を受けていない者に、不動産信託受益権の募集や販売に関与させる行為は、「名義貸しの禁止」という金融商品取引法の規定に違反するということが、この指摘で明らかになりました。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・リスク管理コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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