検査の思い出3


一般企業は、すぐには使わないキャッシュを投資にまわすことがあります。今回は、そんな企業に投資商品を販売したときの指摘事項です。

<特別の利益の提供>
証券会社は、顧客に特別の利益の提供を約束したり、実際に提供したりすることを禁止されています。特別の利益の提供とは、「これがなければ取引なし」の関係に立つ行為を言います。

例えば、アセットマネジメント会社と取引する際に、アセットマネジメントが発行しているリサーチレポートを買うことを条件に取引をしてもらうとき、「リサーチレポートの購入がなければ取引なし」ですので、リサーチレポートの購入は、特別の利益の提供となることがあります。

実際、リサーチレポートを購入して、株式の売買注文を発注してもらっていた証券会社が、特別の利益を提供したとして、2日とか3日、営業停止になっています。

特別の利益の提供が禁止されている理由は、特別の利益の提供を受けると、顧客は安易に取引を行ってしまい、結果として、有価証券の価格がゆがめられたり、顧客との紛争の元になったりするからです。

本来はそういう意味ですが、検査実務ではさまざまな行為が特別の利益の提供として指摘されます。

私の経験では、ある会社に仕組債を販売したことが特別の利益の提供として指摘を受けたことがあります。とても単純な取引で、企業が余資運用として高い利回りの仕組債を購入したというものです。

仮に、仕組債について、購入金額が10億円、金利が20%、年1回の利払いだったとしましょう。すると、金利として受け取る額は、10億円×20%=2億円ということになります。この高いクーポンが特別の利益をみなされました。なぜか。この企業のその年の税引き前利益が約2億円だったからです。つまり、仕組債のクーポンがなければ、この企業のその年の利益はゼロで、配当もできなかったわけです。

このように、顧客の損益計算書に大きなプラスのインパクトを与える行為も、特別の利益の提供と認定されることがありますので、証券会社は、取引にあたって、顧客に対するマイナスのインパクト(適合性の検証)ばかりでなく、プラスのインパクトも考慮しなければなりません。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

コメント

非公開コメント

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

ブログの内容は個人的見解ですので、正確性は保証いたしません。また、ブログの内容に関する質問を含め、質問には一切回答いたしかねますので、ご了承ください。

プライバシーポリシー

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード