検査の思い出5


この時期は、毎年、金融庁の人事異動と夏季休暇の時期なので、当局検査はありません。以前にもお話したように、今年後半の検査は、おそらく8月24日にスタートすると見ています。

検査が本格的にスタートする前に、あらためて、業務の点検をしておくことをお勧めします。

<あらためて>
今「あらためて」と書きましたが、この言葉は、当初の金融商品取引業者等検査マニュアル(以前の証券検査マニュアル)の書き出しにあった言葉です。証券検査マニュアルができたのは、銀行検査マニュアルができた平成10年の翌年くらいだったと記憶しています。証券検査マニュアルが公表されたとき、説明会がありました。たしか、金融庁と証券取引等監視委員会の共同だったと思います。

このとき「あらためて」と書いた意味が説明されたのをはっきりと覚えています。検査マニュアルの出だしを「あらためて」とした理由は、「すべての証券会社は株式会社なのだから、コンプライアンス態勢ができていることは商法(当時)で担保されていますので、検査マニュアルにあるコンプライアンス態勢は整っていることが前提なので、『あらためて』と書いた」という説明でした。

このとき、行政文書は、細かい表現まで考えて考え抜かれて作成されていることをあらためて認識しました。それ以来、私も、「当然の前提がある」という意味を強調するときには、「あらためて」という言葉をよく使わせてもらっています。

ちなみに、このときの説明会は非常に興味があるもので、説明者(監視委員会だったと記憶しています)が、再三再四「私は証券会社が嫌いです」といい、証券会社はすべて悪人であるということを何度も強調していました。説明を聞きに来ていたのは、内部管理統括責任者でしたので、副社長など役員です。よくケンカにならなかったものです。今の時代なら、証券会社の抗議が殺到するでしょうけれども、当時は、証券会社は当局に対して圧倒的に弱い時代でしたから、何事もなかったようです。

<金融庁に脱帽した日>
この方の名前は忘れてしまいましたが、私は、数年後、金融庁で会うことになります。当時、ある事件があって、彼に金融庁検査局まで呼ばれ、事件についてかなり突っ込まれ、こちらからは返す言葉がなくなってきたとき、彼がバン!と机をたたき、「金融庁をなめちゃいけませんよ!」と怒鳴られたことも、よく覚えています。

なめていたわけではなかったのですが、事件とはまったく関係がないような質問を何度もされ、回答していくうちに、「ハッ!」とされたのは事実でした。自分では気づかなかったのですが、こちらの回答を総合すると、事件の本質に触れていたのに、そのことにまったく気がつかず、途中で「ハッ!」と気づいたのですが時既に遅し。その直後に「金融庁を・・・」をといわれたわけです。

サスペンスドラマさながらに、犯人が追い込まされていくような心境で、あの時は、金融庁に脱帽しました。当時、コンプライアンス担当者という立場上、会社を代表していた私でしたが、まだ30代前半のときでしたから、完全に参ってしまいました。自分が怒られているなら構いませんが、会社を代表して怒られていたのですから重かったです。

<コンプライアンス担当者の気構え>
今となっては懐かしい思い出ですが、コンプライアンス担当者は、一担当者であっても(当時の私はある証券会社の複数いたコンプライアンス担当者の一人でした)、常に会社を代表しているという気構えが常に必要です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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