有価証券の私募(1)


新たに発行する有価証券の取得の申し込みの勧誘、つまり、株式会社が新たに発行する株券を「取得しませんか?」と声をかける行為には、有価証券の募集と有価証券の私募の2つの種類があります。それ以外はありません。前回は、有価証券の募集を確認しましたよね。今回は、有価証券の私募について解説します。

<募集と私募を区別する意味>
募集と私募を区別する意味は、有価証券の募集は「開示規制」の対象になり、私募は開示規制の対象にならないという点です。開示規制については、別の機会に詳しく説明しますが、開示規制の対象になると株券を発行する株式会社などは、有価証券届出書を内閣総理大臣に提出したり、毎年、有価証券報告書を提出したりする必要があります。一方、私募の場合は、開示規制の対象にはなりませんので、有価証券を発行する発行者にとっては、資金調達の機動性とコストがまったく違ってきます。

<有価証券の私募の種類>
有価証券の私募には3つの種類があります。「適格機関投資家向け勧誘」「少人数向け勧誘」「特定投資家向け取得勧誘」の3つです。一つ一つみて行きましょう。

<適格機関投資家向け勧誘>
文字通り、適格機関投資家を対象として行う取得の申込みの勧誘です。通常、プロ私募と呼ばれます。証券会社、銀行、保険会社などの適格機関投資家を対象として行う取得の申込みの勧誘は、すべて「私募」となります。ですから、100社の適格機関投資家に対して勧誘を行っても、募集となって開示規制が適用されることはありません。

<少人数向け勧誘>
少人数向け勧誘とは、新たに発行する有価証券を50名未満、つまり、49名以下に取得の申込みの勧誘をすることです。通常、少人数私募と呼ばれます。2010年4月に改正されますが、現時点では、勧誘ができる数は49名までです。

「勧誘」であって、取得した者の数ではないことに注意してください。取得した者の数が最終的に1名であったとしても、50名以上に「勧誘」していれば、それは少人数向け勧誘ではなく「募集」になってしまい、開示規制が適用されます。なお、金融庁の検査において、「勧誘とは顧客と口をきくこと、電話でひとことでも話したら勧誘」と指摘された経験があります。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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