被災地にみた最高のコンプライアンス


住友信託銀行に入社したところで、私の話はちょっと休憩。

先日、テレビを観ていました。震災関係のニュースです。場所もこれからお話しする小学校の名前も、一瞬流れただけでしたので忘れてしまいましたが、ある小学校が津波に襲われたそうです。たしかに、映像を見ると、4階建ての4階の校舎に車が突っ込んでいます。津波が小学校全体を襲ったことがわかります。ところが、幸いなことに、児童350人(だったと記憶しています)が、全員無事だったというニュースでした。

なぜか。理由は「おはしも」にあったそうです。

おはしも?もちろん、これは頭文字を並べたものです。ニュースは、「おはしも」の話の前に、児童に対するインタビューで始まりました。一人の男の子、多分、3年生くらいと思いますが、男の子が「(大きさが)どのくらいの津波が来るか勉強していました」というんです。

この小学校は、海岸から1km以上離れたところにあったようです。そこは「津波が届かない範囲」と想定された範囲だったらしいです。それだけ離れていても、この小学校では「いざ」というときのために、津波の「授業」を行っていたというのです。「子供が、とっさのインタビューに対し、津波の『大きさ』について触れるなんて、すごい!」と、まず、ここで、この学校の教育に感心しました。

さて、「おはしも」です。2年生くらいの女の子が、津波が来たときの話を聞かれたとき、「おはしも」と答えるんです。それから、その女の子が説明してくれました。

「お」は、押すな
「は」は、走るな
「し」は、しゃべるな
「も」は、戻るな

押すな!走るな!しゃべるな!戻るな!です。押したら倒されて逃げ遅れる子供が出てしまいます。走ると倒れる子供が出てくるでしょう。しゃべると足が止まってしまったり、はぐれたりしてしまいます。戻ると津波にのみこまれます。

低学年の児童も「おはしも」を守ったんです。高学年と思われる女の子が「走っちゃったけどね」と言っていましたが、この小学校は、守るべき指針を、わずか4文字にしたばかりでなく、児童に確実に記憶させていたのです。当然、何度も何度も、繰り返し児童に教えていたのでしょう。

これは、最高のコンプライアンスです。「コンプライアンスは法令遵守ではない」と、日本で最初に言ったのは私ですが、コンプライアンスは、法令遵守ではないのです。コンプライアンスとは、適切なリスク管理のことです。役職員が、法令はもちろん、社会規範や道徳を守らなかった場合に生じる会社のリスクを回避する手段です。

ここ、大切なのでもう一度いいます。

コンプライアンスとは、役職員が、法令はもちろん、社会規範や道徳を守らなかった場合に生じする会社のリスクを回避する手段

です。

350人の児童は、「おはしも」を守らなかった場合の命がけのリスクを十分に教えられ、そして守りました。その結果、全児童の尊い命は救われたのです。校長先生を初め、この小学校の先生方は、最高のコンプライアンス・オフィサー(コンプライアンス担当者)です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

コメント

非公開コメント

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

ブログの内容は個人的見解ですので、正確性は保証いたしません。また、ブログの内容に関する質問を含め、質問には一切回答いたしかねますので、ご了承ください。

プライバシーポリシー

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード