コンプライアンスをスタート


コンプライアンス担当
当時の住友信託銀行証券運用部は、大きく2つの部門に分かれていました。一つは、会社のお金で株券や社債を売買する部門、もう一つは、顧客をもって顧客の注文を受ける部門です。後者の仕事は、証券会社とまったく同じブローカーの仕事です。私は、後者に配属されました。つまり、銀行員というのは名ばかりで、銀行の中にある証券会社に勤めていたことになります。

私が担当した仕事は、当時の証券取引法に照らして、「これはやっていいのか」「あれはどうなのか」という社員の質問に答えたり、社員の行った取引が証券取引法上問題ないかを事後的にチェックしたり、証券取引法が改正されれば、改正された内容を上司に報告するなどの仕事でした。そうです。今でいうコンプライアンスの仕事です。

当時の証券運用部は、配属された者は、まず、コンプライアンスの仕事を数ヶ月体験し、法令遵守の基本を身につけ、その後で、株式や社債の運用担当者になるというのが普通でした。コンプライアンスは、腰掛だったわけです。私も、当然、そうなるところでした。ところが、この仕事、私にとっては面白くてなりませんでした。証券運用部がイヤだった私も「この仕事なら続けてもかまいません。他に回されるのやイヤです」と他の仕事を断って、つまり、今までの腰掛け的な部門にい続けるという選択をすると上司にいいました。上司は、二つ返事でOKでした。

二つ返事でOKだったのにはわけがあります。私は、イヤだといった証券運用部に配属させられたので、再び、人事部に文句の手紙を書き続けました。これが上司(部長)に伝わり、どうすれば川崎の気が済むのか上司が模索していたことにあります。

もう一つは、おかしな理由でした。証券運用部に配属された当時、私はファミコンで日本統一が目標の「信長の野望」(コーエー)を始めたところだったのですが、どうにも難しく、ある日、気がつくと朝5時になっていました。そこで、数時間仮眠をとった後で、会社に「1週間休みます」と連絡しました。会社を休んで徹底的にやらないと、ゲームに勝てなかったからです。ところが、この休みを、会社では、私の反抗(反乱?)ととらえ、何とか川崎が納得する仕事を見つけようと大騒ぎになっていたのです。ゲームに忙しくて会社に行っている時間などなかっただけなのですが、こんな理由で、私の希望は二つ返事でOKになりました。

こうして、証券業務のコンプライアンスを専門にするようになったのが、1992年(平成4年)でした。

吸収
私は証券業務が初めてで、コンプライアンスはもちろん、証券業務は何も知らないに等しい状態でした。ある日、何も知らなかった私に業を煮やした一般職の女性が私に「債券の常識」(大和証券当時)を「これを読んでください!」と突きつけました。その日、私はその本を家に持ち帰り、600ページくらいある本でしたが、全部読みました。それで、翌日、本を返すと「えっ、全部一晩で読んだの?おかしいんじゃない?」と言われてしまいました。

全部読んだといっても自己申告です。それを聞いた当時の直属の上司が本を見ながら私に質問しました。全問正解です。私が凄かったのではなく、「債券の常識」が面白かったのです。面白かったから、読んだことはすべて記憶に残っていただけなのですが、この上司は「こいつは使える」と思ったそうです。

それから、実務でも、コンプライアンスとは関係のないデュレーションやコンベクシティなど金利モノの性質やオプション取引の仕組やデルタ、ガンマ、ベータの意味などを吸収していきました。

今日、複雑化したデリバティブ取引を見ても、すぐに大まかな理解ができるのは、このとき吸収した知識が生きているからです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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