転職


歩く証取法
私は、仕事柄、毎日、証券取引法を紐解いていました。そして、目を通すうちに、証券取引法の魅力に取り付かれていきました。毎晩、2時、3時まで証取法を熟読するようになりました。証取法ばかりでなく、東京証券取引所の規則や日本証券業協会の規則もすべて読みました。

2年経った1994年(平成6年)頃には、会社で起きる証取法に関連する質問は私のところに集中するようになりました。ある日、「歩く証取法」と呼ばれました。証取法のことなら、政令、省令まで、すべて読んでいましたので、質問に回答するとき、いちいち法令を広げる必要もなくなっていました。

これができたのは、当時は、証取法の改正があまり行われなかった時代だったからです。1992年(平成4年)の金融制度改革法は実務に大きな影響がありましたが、暗記できる程度でした。暗記できないほど激変を始めたのは1998年(平成10年)の金融システム改革法からです。

失敗
法令諸規則は暗記していても失敗はいくつもありました。たとえば、新店舗を開設するときには、事前に申請することが必要だったのですが、「後でやろう」と思っていてそのままにしておいたところ、開店を迎えてから手続きをしていなかったことに気づいて、しまった!と思ったときは、「ときすでに遅し」だったことがあります。当時、監督官庁は大蔵省の証券局でしたが、良い時代で、先方の係長から「お互いの平和のために」ということで、バックデートで書面を提出すれば何とかするといってもらえました。

一番焦った失敗は、社長が変わったのに、必要な事前申請をしていなかったときです。これはさすがに焦りました。社長は変わってしまっているのです。でも、対当局上は、前社長が社長のままだったわけです。このとき、私がとった行動は、上司はもちろん誰にも相談せず、淡々と必要書類を作成し、総務部に「わけは聞かないで!」と社長印を押してもらい、当局にそっと送るという、今思えば、とんでもないことをしてしまいました。27歳の春だったと記憶しています。年齢と時期を記憶しているくらい、焦ったということです。こうして、新社長は、対当局上は、就任から3日間は(承認が3日で下りました)、社長ではありませんでした・・・

転職
私は、失敗もたくさんありましたが、会社内で証券コンプライアンスの地位を確立し、とても頼りにされるようになっていきました。1998年(平成10年)、金融システム改革法、大蔵省の解体、金融庁(当時は金融監督庁)の設立と、コンプライアンスの面からも激変が起きました。

金融システム改革法は、証取法の大改正でした。改正の一つに、店頭デリバティブ取引の合法化がありました。それ以前、店頭デリバティブ取引は、条文上、賭博罪だったので、国内では取引ができませんでした。

金融システム改革法で初めて店頭デリバティブ取引が合法化されたとき、私は、シカゴでデリバティブを勉強して帰国したばかりの同期と一緒に、合法的な「デリバティブ預金」を設計し、当時の部長に二人で提案しました。部長の反応は、「面白いが、まだ早い」でした。ところが、金融システム改革法施行直後に、当時の富士銀行がデリバティブ預金を販売すると日経新聞1面に報じられました。仕組みは、同期と考えたものとまったく同じです。

このとき、「こんな古いカルチャーの会社にいてはダメだ」と思い、当時、デリバティブの先端を行っていると思われた外資系証券会社に転職することを決めました。住友信託銀行で1992年(平成4年)から証券コンプライアンスを担当していた私は、こうして住友信託銀行をやめ、外資系にコンプライアンス・オフィサーとして転職しました。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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