検査初日


震災で中断していた証券取引等監視委員会の検査が再開されました。これから書くことは、私の履歴者の中で、忘れることが絶対にできない検査にまつわる話になります。

検査当日
2000年(平成12年)2月12日。その日の朝、私は熱が39度以上ありました。いつもだったら、絶対に会社を休んでいます。ただ、理由は思い出せませんが、その日は、会社に「病院に寄って解熱剤の注射をしてもらってから行く」と連絡してクリニックに寄ってから会社に行きました。

診断は風邪だったと思います。高熱なので注射ではダメで、点滴をするように言われ、点滴を始めました。点滴をしているとき、9時30分くらいだったと思います、会社から携帯に電話が入りました。クリニックにいるし、点滴もしているので、出ることはできません。

「遅れるって言ったのに、何だよ」と思って、やり過ごしました。点滴をしていると横になっているせいもあって眠くなります。私は、看護師さんに起こされるまで、眠ってしまいました。起き上がっても、まだ体が熱く、フラフラします。それでも、会社に向かうことにしました。クリニックを出て携帯を見ると、なんと10回以上も会社から電話が入っていました。異常です。

会社に着くと、受付の女性が「おはようございます。大変ですね」と私に言いました。私は、秘書か誰かを通じて、私の病状が受付に伝わったのかと思いました。「でも、急でしたね」と女性は続けます。確かに39度以上の熱が出たのは急です。でも、会話としてなんかおかしな感じがしました。女性はニコニコしていました。「大変」というわりにはまったく大変そうには見えません。すぐに思い浮かんだのは「当局検査」でした。どうしてそう思ったのかわかりません。何となく、検査が入ったと思いました。

当時、私のデスクは6階建てのビルの6階にありました。部屋に入ると、緊迫したムードを感じました。本当に、緊迫したムードは伝わるんですね。でも、まだ、誰からも検査が入ったと聞いたわけではありません。

そのとき、私の電話がなりました。「検査官から質問を受けているのですぐに来てください」ということでした。「あ、やっぱり、検査か」という程度に思い、私はバックをおいて、呼ばれた人のところに向かおうとしました。すると、別の社員から電話です。「川崎さん、すぐ来てください!」というのです。「ちょっと先に呼ばれているので後で」というと「今すぐお願いします!」と悲痛な叫びです。それで、悲痛な方を先にと向かおうとすると、また、まったく別の人から電話です。「すぐ来てください」

「これは大変なことになった」私は、ここにきて、ようやく非常事態であることに気づきました。

当時の私は、ある外資系の証券会社のコンプライアンス担当者でした。グループ会社に銀行もあり、そちらにも検査が入っていました。銀行には金融庁、証券には金融庁と証券取引等監視委員会が入っていましたから、グループとしては合計3つの検査を同時に受けたことになります。

銀行は私の管轄外でしたので完全に油断していたところ、銀行の職員からも「こちらに来てください!」と電話が入ってきました。なんで私が銀行に呼ばれたのか聞くと、銀行のコンプライアンス担当者が病気で休みだというのです。他に担当者はいません。こうして私は、3つの検査を同時にこなすことになりました。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・リスク管理コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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