コンプライアンス担当者不足のツケ


私は、私自身の机の他に、3つの机を確保しました。銀行の金融庁検査用、証券の金融庁検査用、証券の証券取引等監視委員会用に分けたのです。はじめは私の机、一つだけを使っていたのですが、途中から(まだ初日です)、どの検査官の質問だったかわからなくなってしまったからです。

昼過ぎになると、熱が上がってきました。そこで、会社を出て、クリニックに向かい、注射をうってもらい、戻って検査に対応しました。1週間近く、毎日、注射をうって熱を下げて検査にのぞみました。

2時間睡眠の毎日
検査時、私が会社を出るのは毎日夜中の3時とか4時になりました。4時といったら、むしろ朝です。どうしてこんなに遅くなってしまったかというと、朝から夜9時頃までは、検査官に質問されていたり、検査官から質問を受けた職員の相談にのっていたりしていたので、私が受けた質問に対する回答を作成するのが、夜9時過ぎになってしまっていたからです。

9時を過ぎると自分の時間が取れたので、会社の近くにあったスーパーにお弁当を買いに行き、ほとんど毎晩、そこのお弁当を食べて暮らしました。

毎朝、9時30分から検査官との定時ミーティングがありましたので、遅くても9時には会社に来ていなければなりません。結局、眠ることができたのは、毎晩2時間から3時間になってしまいました。

1週間を過ぎたとき、別の部署の人から「顔色悪いですよ」といわれました。そりゃそうです。ほとんど寝ていないのですから、フラフラでした。2週間目には本当に死を覚悟しました。頭はもうろうとするし、風邪も治らず息苦しいしで、生きている心地がしなかったからです。そのときは、死んでも良いと思いました。コンプライアンス担当者として、検査期間中に死ねれば本望と思いました。

毎晩、寝ると言っても、ベッドに入ってしまうと、「寝込んで」しまうので、2時間後に目覚まし時計をセットすると、壁に寄りかかって眠りました。朝起きると、ベッドにもたれていたことがあります。本当に眠い自分と起きていなければならないと思う自分とのせめぎあいの末、ベッドにもたれかかっていたのだと思います。

ちなみに、これほどまで体を酷使しなければならなかった原因は、当時の会社のコンプライアンス担当者が実質私だけだったからです。このとき、コンプライアンス担当者を増やさないとまずいということに気づかされました。

ベッド代わりの段ボール箱
帰る時間も惜しくなり、会社で寝たこともあります。当時の会社の床は硬い床でしたので、眠ろうと横になると、痛くて眠れません。近くにあった段ボール箱を広げて寝てみました。やっぱり痛いです。そこで、段ボール箱を2枚重ねてみました。すると、痛みがありません。寝返りもうてます。こうして、「段ボール箱は2枚敷くと眠れる」ということを初めて知りました。

救急車登場
そんなある日、昼間、デスクに座っていたとき、急に背中が痛くなり、ついに、動けなくなりました。それを見た、当時の秘書が、救急車を呼んだから大騒ぎです。はじめ、担架で私を運ぼうとしたのですが、背中が痛くて動かせなくなっていた私は、担架に横になることはできません。そこで、車椅子が用意され、私は車椅子に乗ったまま、救急車で病院に運ばれました。

CTスキャンその他の検査を受けましたが、どこも悪いところはないという診断でした。しばらく、病院で横になった後、どこも悪いところはないけれども、今日はこのまま帰宅した方がよいと医師から言われ、タクシーで帰りました。

葉桜
その夜、11時頃、会社から電話がありました。出てくる必要はないけれども、重要な質問を受けたというのです。重要な質問を受けたと聞いて寝ていることはできません。「タクシーですぐに向かいます」というと、すぐにタクシーで会社に向かいました。いつも通っていた道を走ったところ、途中の坂で桜の木がライトアップされていることに気づきました。葉桜でした。毎日、通っていた道ですが、桜の花が咲いていたことに気づいていなかったのです。

2月12日から始まった検査でしたが、4月に入っていました。桜はつぼみをつけ、花が咲き、散っていました。後でわかるのですが、検査は、終えん間近でした。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・リスク管理コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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