特別の利益の提供が禁止される理由


株式会社ウェスコ・ジャパンは、ファンドの私募の取扱いに関して、顧客に対し、「当社が取り扱っているファンドに出資をすれば、保有している未公開株を買い取る」又は「当社が取り扱っているファンドに出資をすれば、後日、10倍の値段で買い戻す。」といった通常のサービスと考えられる以上の特別の利益の提供を約して、ファンドの取得勧誘を行っていたことが認められたとして、3ヶ月の業務停止命令を受けました。

第二種金融商品取引業を行う会社が「特別の利益の提供」で処分勧告を受けたことは、私の知る限り、過去に例がないということは既にお話した通りですが、実際に処分が出たのも当然初めてです。過去の証券会社に対する処分事例では、「特別の利益の提供」は数日の業務停止が普通でしたので、3ヶ月の停止期間は長いです。ちなみに、業務停止は6ヶ月か最長です。

公表された資料でしかわかりませんので、なんともいえませんが、特別の利益の提供が「常態化」していたなど、よほど悪質だったのかもしれません。あるいは、会社の代表者がかかわっていたのかもしれません。いずれにしましても、3ヶ月の業務停止は大きな処分です。

「特別の利益の提供」とは、顧客に利益提供を約束したり、実際に利益提供を行ったりする行為です。どうして禁止されるかというと大きく分けて3つの理由が考えられます。

1. 特別の利益の提供を約束すると、約束した・しない、言った・言わないという苦情や紛争に発展し易い。

2. 特別の利益の提供があると、自己責任の原則で投資を行う投資家が安易に取引をする。その結果、市場がゆがめられる。

3. 特別の利益の提供は、金融商品取引業者の財務の健全性に問題を起こす。その結果、投資家保護に支障をきたすおそれがある。

では、特別の利益の提供とは、どのような行為を指すかというと、顧客に有利に働く行為はすべて特別の利益の提供になり得ます。今回は、「未公開株を買い取る」という行為が、顧客に有利に働いたとして、特別の利益の提供であると指摘されています。10倍で買い戻すという約束は、明らかに、特別の利益の提供です。

第二種金融商品取引業を行っている会社の中には、取引をしてもらえたのだから、お返しをすることは、普通の商慣習として当たり前、と思っている会社があるかもしれません。けれども、先ほどあげた3つの理由から、金融商品取引業の世界ではお返しは当たり前ではありません。この「意識改革」ができるかどうかが金融商品取引業者として生き残れるかどうかの鍵の一つになります。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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