募集の取扱い(1)


金融商品取引法は、本当に難しいと思います。1条は目的規定。金融商品取引法の目的は、学問的には解釈がわかれるところですが、実務上、問題になることはほとんどありません。もっとも、目的を理解していないと、禁止行為を読んでも、なぜ禁止されているのかがわからない場合があります。

そして2条、定義です。まず、ここでつまずきます。20年近く前になりますが、私の場合、募集の取扱いの「取扱い」でつまずきました。

普通、「取扱う」という単語は、たとえば、「あの店は、この商品を取り扱っている」というように、取扱いの対象は「モノ」です。ところが、「募集の取扱い」という言葉をご覧になるとわかるように、金融商品取引法で「取扱い」と言った場合、取扱いの対象は「行為」です。

「募集」とは行為です。募集という行為を取り扱うことが「募集の取扱い」です。でも、これは日本語として変です。変なのですが、「募集」には定義規定があっても、「取扱い」の定義規定はありません。ですから、募集の取扱いを理解するためには、「募集の取扱いという外国語」と割り切って、理解しようとする心構えが必要です。

私募の取扱い、売出しの取扱いも同様です。

では、「募集の取扱い」という外国語はどういう意味かというと、「有価証券の取得の申込みの勧誘を50名以上の者に行おうとしている発行者のために、発行者に代わって、投資家を探す行為」を意味します。

「要するに何だ?」

ということですが、こういう説明しかできないのが現実ですので、一つ一つの単語の意味を見ていきましょう。

まず、有価証券。これはいいですね。次に、取得の申込みの勧誘。これは説明抜きではわからない外国語です。

「取得」とは、「発行」に対する言葉です。「買付け」とは意味が違います。買付けの反対語は売付けですね。買うという行為の反対には売るという行為があるわけで、買付けと売付けはセットです。一方、新発の有価証券の場合、「売る」という行為はありません。あるのは「発行」です。ですから、「買う」という行為もないというのが金融商品取引法の考え方です。

新発の有価証券の場合、売付けにあたるのは、「発行」です。発行の反対にあるのが「取得」です。買付けではありません。取得です。(ただし、金商法27条の32の2・2項他で、「取得」という単語が「買付け」の意味で使われる場合があります。少なくても、定義では「取得」は、発行に対する言葉として使われているということです。)

取得の申込みというのは、企業による有価証券の発行に対して「取得します」と申し込む行為を指します。問題は、「取得の申込みの勧誘」です。「勧誘」とは何でしょうか。さらに、この3つの単語からなる「取得の申込みの勧誘」とは?

大辞林第二版(三省堂)によると、勧誘とは「すすめ誘うこと」とあります。文字通りの説明です。金融商品取引法でもほとんど同じ意味で使われていますが、「勧」よりも「誘」に力点が置かれています。つまり、金融商品取引法で「勧誘」といえば、「誘うこと」です。別の言葉で言うと「その気にさせようとすること」です。取得の申込みの勧誘とは、「取得の申込みをする気にさせようとする行為」のことをいいます。

以上から、有価証券の取得の申込みの勧誘とは、「企業が発行しようとしている有価証券の取得の申込みをする気にさせようとする行為」ということになります。簡単にいえば、「お声がけすること」です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

コメント

非公開コメント

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

ブログの内容は個人的見解ですので、正確性は保証いたしません。また、ブログの内容に関する質問を含め、質問には一切回答いたしかねますので、ご了承ください。

プライバシーポリシー

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード