募集の取扱い(2)


「募集の取扱い」という外国語は「有価証券の取得の申込みの勧誘を50名以上の者に行おうとしている発行者のために、発行者に代わって、投資家を探す行為」を意味する、の続きです。

有価証券の取得の申込みの勧誘とは、「企業が発行しようとしている有価証券の取得の申込みをする気にさせようとする行為」を指す、簡単に言うと「お声がけすること」というところまで前回お話しました。

次に「50名以上」の意味です。

「50名以上は、文字通り、50名以上じゃないの?」

はい、ほぼその通りです。ただ、金融商品取引法は、勧誘(その気にさせる行為)の相手方の数ではなく、勧誘の回数を数える点に注意が必要です。つまり、同じ人に2回勧誘すれば、2名に対する勧誘になります。

ここは、微妙なところですが、ある有価証券の取得について、同じ人に何度か勧誘しているのだけれども、一連の勧誘行為が「一回」と評価されれば、1名として計算します。

一回と評価されない場合とはどういう場合か?

たとえば、企業が社債を発行することしました。第一回普通社債と第二回普通社債の2種類の社債を発行することにしました。第一回普通社債と第二回普通社債の円建てで、利率も、償還日も同じだった場合、勧誘するタイミングが異なっても、金融商品取引法は、第一回普通社債と第二回普通社債を「同一種類の有価証券」、要するに、同じものと評価します。

ですから、同じ人に第一回普通社債の取得の申込みの勧誘を行った後で、第二回普通社債の取得の申込みの勧誘をしたら、同じ有価証券について、2回の勧誘行為を行ったものと評価されることになり、勧誘の相手方の数は2名と数えます。

これも、普通の(?)感覚では理解できません。とにかく、金融商品取引法では、1名とは、1回を意味するということです。

1名とは1回を意味する外国語だと思ってください。ですから、50名以上に勧誘するとは、50回以上勧誘行為をすることを意味します。

次に、「発行者に代わって」の意味です。

発行者が有価証券の取得の申込みの勧誘を50名以上にする行為が「募集」です。ここ大事です。「募集」と、今説明しようとしている「募集の取扱い」とはまったく別の意味です。募集をするのは企業です。金融商品取引業者(証券会社)ではありません。企業が、有価証券を発行して資金調達する際、50名以上の者に取得の申込みの勧誘をする行為が募集です。いわゆる「自己募集」とはそういう意味です。

この自己募集に際して、つまり、企業が50名以上に取得の申込みの勧誘を行うに際して、企業自身が50名以上に声をかけることが難しいので、金融商品取引業者に「企業(発行者)に代わって」取得の申込みの勧誘をしてもらう、具体的には投資家を探してもらおうとするのが普通です。このときの金融商品取引業者の行為が、「取扱い」です。

以上から、募集の取扱いとは、「有価証券の取得の申込みの勧誘を50名以上の者に行おうとしている発行者のために、発行者に代わって、投資家を探す行為」を意味することになるわけです。実務に即して言い換えると、金融商品取引業者が、新たに有価証券を発行しようとしている企業に代わって、50回以上、投資家に対して、取得の申込みをする気にさせる行為が、「募集の取扱い」です。

ここまで、大丈夫でしょうか。

なお、金融商品取引法の「募集」と会社法の「募集」とは意味が違いますので、要注意です。会社法の募集は投資家の数が1名であっても、募集です。また、対象となる有価証券は、新発の有価証券であっても既発の有価証券であっても、会社法では募集です。これは、一般的な感覚に合うと思います。金融商品取引法は「外国語」でできています。ここは忘れないでください。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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