証券化(1)


今日は、久しぶりに、証券化の話をします。

信託の受益権は2007年の金融商品取引法の施行で有価証券になったと誤解されている方もいらっしゃいますが、信託の受益権が有価証券に指定されたのは、1992年の金融システム改革法(証券取引法の改正)においてです。当時、対応に追われたことを覚えています。

信託の受益権が金商法でも有価証券に指定され、一番大変だったのは、信託受益権販売業者の方でしょう。突然、金融商品取引法という証券会社と同じ土俵の上に乗せられたのですから、たまりません。

投資信託を除けば、信託の受益権の多くは不動産信託受益権です。要するに、信託受益権販売業者である不動産関連会社(宅建業者等)が、突然、金融商品取引法の適用を受けることになったわけです。金融商品取引法施行当時、よく不動産関連会社の方から、金融商品取引法が適用されて迷惑しているという声(苦情?)を聞きました。

もともと、信託の受益権のうち、銀行の貸付を信託財産とするものが、証券取引法で有価証券と定義されました。その後、信託財産の範囲が広がっていき、ついには信託財産の制限がなくなり、金融商品取引法に引き継がれています。

有価証券に初めて指定された信託の受益権の信託財産が銀行貸付からスタートしていることからわかるように、金融商品取引法は、信託の受益権は資産の流動化(証券化)スキームとして利用されるということを前提にしているようです。実際、信託の受益権は、不動産の証券化、売掛債権の証券化、事業の証券化と、キャッシュフローがあるあらゆる場面に登場しています。

用語の説明は後でしますが、以上から、金融商品取引法の「本質」というか「ターゲット」が見えてきます。金融商品取引法のターゲットは何でしょうか。

以前にも書きましたが、金融商品取引法と無関係の企業はありません。なぜなら、企業活動とは、資金を調達し、調達した資金で事業を行い収益を上げ、資金調達者に配当する一連の活動を指すところ、金融商品取引法は、この、企業の「資金調達」をターゲットにした法律だからです。

企業の資金調達方法は3つしかありません。何と何と何でしょうか。ちょっと考えてみてください。ヒントは、貸借対照表にあります。

貸借対照表は、向かって右側(貸方)に、資金の調達手段が記載され、左側(借方)に調達した資金の運用方法(資産)が記載されます。貸方は、さらに、借金で調達したのか(負債)、出資金で調達したのか(資本)とに分かれます。資金調達方法は、負債、資本、資産の活用の3つの方法があるというのが解答です。

負債のうち、社債が金融商品取引法で有価証券として指定されています。資本のうち株式が有価証券です。では、資産は?資産のうち、売掛債権が信託されたものが売掛債権の証券化、不動産が信託されたものが不動産の証券化、資産を活用して事業から上がる収益を信託したものが事業の証券化で、いずれも信託の受益権が有価証券に指定されています。

金融商品取引法は、負債、資本、資産の活用の3つの資金調達手段に関する法律です。このうち、社債と株式(金融商品取引法では株券)の説明は必要ないでしょう。残りの資産の活用による資金調達が、「証券化」です。この証券化と金融商品取引法の関係について、見ていくことにしましょう。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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