証券化(5)


信託受益権に限りませんが、有価証券の発行方法は、募集か私募のいずれかです。500名以上が所有する場合が募集、それ以外は私募です。金融商品取引法の施行以降、募集も私募もひっくるめて、「自己募集」と呼ばれるようになりました。

私募の注意点
信託受益権の私募を行う際に注意しなければならないことは、他の有価証券もそうですが、「転売制限」と付けなければならないことです。自由に転売されてしまうと、私募(500名未満)で発行されたはずなのに、いつの間にやら、500名以上の者が所有していた、ということがありえるため、私募を行う際には、一部の例外を除いて、転売制限をつけて発行することが、金融商品取引法の義務になっています。

信託受益権の転売制限
転売制限とは、要するに、500名以上が所有することがないように、投資家に注意喚起することです。具体的には、書面に記載して、投資家が取得する前までに、投資家に転売制限を記載した書面を交付しなければなりません。

転売制限をつけないと、500名未満に自己募集を行っても、「募集」になってしまい、もし、信託財産が主として有価証券で運用されている場合、有価証券届出書の提出義務違反となり、5年以下の懲役刑の対象になりますので、要注意です。

転売制限の書き方は、法令の要件を満たしていれば自由です。以下は例です。

<例>
今般、弊社が取得勧誘(金融商品取引法(以下「法」といいます。)第2条第3項に規定するものをいいます。)又は売付け勧誘等(法第2条第4項に規定するものをいいます。)を行う信託受益権につきましては、当該信託受益権の有価証券発行勧誘等(法第4条第2項に規定するものをいいます。)又は有価証券交付勧誘等(法第4条第2項に規定するものをいいます。)が少人数向け勧誘(法第23条の13第4項に規定するものをいいます。)に該当することにより、当該有価証券発行勧誘等又は有価証券交付勧誘等に際し法第4条第1項の規定による届出は行われていないこと、また、当該信託受益権が法第2条第2項第1号に規定する信託受益権であることを通知いたします。

受益証券
なお、信託受益権であっても、受益証券発行信託の受益証券は、一項有価証券になりますので、注意してください。金融商品取引法施行当時、この意味についてよく質問を受けました。

受益証券発行信託の受益証券については、受益証券が発行される、つまり、モノが存在することになるため、流通が容易になることから、できる限り、開示規制(有価証券届出書の提出義務など)を課すために、一項有価証券に区分されたのだと思います。

受益証券が一項有価証券に区分された理由が、本当に流通性・流動性の観点であるとすれば、おかしなことです。なぜなら、金融商品取引法2条2項本文で、受益証券が発行されない場合の権利を有価証券とみなすと規定しているからです。一項有価証券である受益証券発行信託の受益証券に表示される権利と、二項有価証券である信託の受益権との間に、違いがないからです。

ただ、法律に規定されている以上、受益証券発行信託の受益証券は一項有価証券として扱わなければなりませんから、私募の勧誘制限は50名未満となり、取扱いが可能なのは第一種金融商品取引業の登録を受けた者にかぎる点は、要注意です。前者の違反は5年以下の懲役、後者の違反は3年以下の懲役です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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