証券化(6)
信託受益権や組合契約の出資持分は500名以上が所有しない限り募集にならない(売出しにもならない)理由については、前回お話したとおり、金融商品取引法が信託受益権や組合契約の出資持分は流動性が低いことを前提に作られているからという話をしました。
では、逆に、500名以上になるとどうして募集になるのでしょうか。
募集にくくられる最大の意味は、開示規制の適用があるかどうかという点です。ですから、一方の私募は、開示規制の適用を受けない取得勧誘という意味です。
開示規制は金融商品取引法の第2章に規定されています。信託受益権や組合契約の出資持分のような二項有価証券は、募集になったからと言って、直ちに開示規制が適用されるわけではありません。開示規制が適用されるのは、運用財産の50%超が有価証券で運用される場合に限ります。
なぜ、50%超を有価証券で運用する二項有価証券は開示規制が適用されるのか。
理由は、出資者はもちろん、第三者にも影響があるからだと説明されます。出資者は私募でも影響を受けますから、重要なのは第三者への影響です。想定されているのは上場企業の株主への影響だと考えられます。要するに、主要株主に変更があるかもしれないので、開示規制を適用するということです。
しかし、こう考えると、この規定は、実は意味がありません。5%ルールがあるからです。主要株主になるまでもなく、発行株式の議決権総数の5%超の株券を取得した者は、「大量保有報告書」を提出する義務があります。大量保有報告書とは、簡単に言えば、大量に株券等を取得した者に、名前や所有目的を開示させる制度です。主として、既存の株主に投資判断を与えるための制度です。
大量保有報告書の制度は、5%ルールと呼ばれますが、5%ルールがあるのですから、別途、信託受益権や組合契約の出資持分に開示規制を適用する意味がありません。
すると、二項有価証券を開示させる意味は、「有価証券報告書」を提出させることにあることになります。二項有価証券の発行者であっても、事業年度の所有者数が500名以上の有価証券を発行する者は、有価証券報告書の提出義務があります。有価証券報告書とは、発行者に関する情報提供の手段です。
実際に関連条文が適用される事例があるかどうか知りませんが、少なくても、法令上、二項有価証券であっても、運用財産の50%超を有価証券で運用しているモノで、事業年度末に500名以上に所有されているモノの発行者は、有価証券報告書の提出義務がありますので、注意だけは必要です。
ただ、こう考えても、50%超を有価証券で運用する二項有価証券に開示規制を適用するのは無意味です。500名以上もの所有者数になると、流動性があると認められることから、発行者に有価証券報告書を提出させることはわかります。だとすれば、運用対象を限定せず、事業年度末に500名以上の所有者がいる二項有価証券のすべてに開示規制を適用すべきだからです。
結局、二項有価証券の開示規制は、意味がないということがわかります。