売出しと私売出し(1)


早いもので、私売出しの制度ができてから、1年以上が過ぎました。今日は、私売出しの復習をしておきたいと思います。

昨年、改正金融商品取引法を連載したときには詳しく触れませんでしたが、私売出しの導入に伴い、証券会社は、「少人数私売出しに報告書」(以下「報告書」)を日本証券業協会に提出し、日本証券業協会は1000名に達するまで、銘柄ごとに合算した数値を計算するようになっています。まずは、この報告書の書き方について、復習しておきましょう。

少人数私売出しの対象
報告書作成の話の前に、少人数私売出しの対象になる有価証券の種類について検討しておきますが、少人数私売出しの対象とは、外国証券(外国で発行・流通されている有価証券)に限ります。報告書は、国内証券も対象になる書きぶりになっていますが、外国証券に関する報告です。実際、根拠条文には「海外発行証券の売付け勧誘等を行う場合」に報告すべき義務があるとあります。

少人数私売出しの対象が外国証券に限定されると言えるのはなぜか。

これは、国内で発行されていれば、次のいずれかの方式で発行されることになることから、私売出しを考慮する余地がないからです。

(1) 不特定かつ多数の投資家に対する取得勧誘:募集であり、既に開示されているため、売出しを行っても、有価証券届出書の提出も不要であるし、目論見書の交付も不要であるから

(2) 特定の投資家に対する取得勧誘:プロ私募か特定投資家私募であり、転売制限が付されているか、譲渡制限契約が締結されているから

(3) 少人数の投資家に対する取得勧誘:少人数私募であり、転売制限が付されているから

したがって、外国で発行されたために、(1)から(3)のいずれにも該当しなかった場合が、少人数私売出しの対象になります。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・リスク管理コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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