売出しと私売出し(2)


少人数私売出しの報告義務の根拠条文は、金商法施行令1条の8の4・4号です。認可金融商品取引業協会の会員である金融商品取引業者等は、譲渡制限のない海外発行証券の売付け勧誘等を行った場合には、当該譲渡制限のない海外発行証券の銘柄や所有者数などを認可金融商品取引業協会に報告することが義務付けられています。

読みにくいですが、要するに、外国証券の私売出しを行った証券会社は、日本証券業協会に銘柄や所有者数を日本証券業協会に報告しなさい、ということです。

この条文を受けて、日本証券業協会は、外国証券の取引に関する規則32条3項で、会員である証券会社に、外国証券の少人数私売出しを行った場合は、日本証券業協会に報告することを義務付けています。

所有者制限規定
報告を受けた日本証券業協会は、銘柄ごとに所有者数を合算して公表しています。そして、所有者数が1000に達すると、証券会社は同じ銘柄を少人数私売出しで売付けることができなくなります。

規定が想定しているのは、海外で大量に発行され、流通している外国証券です。そのような外国証券があった場合、各証券会社は、少人数私売出しの制限を遵守して49名までしか勧誘していなくても、他社が同じ銘柄を49名に勧誘していれば、結局、50名以上が所有することになってしまうことがあるから、日本証券業協会に監視させようという規定です。

ただ、少人数私売出しの要件の一つが、なぜ、同じ銘柄の所有者数が1000に達するまでであるのか、意味はわかりません。金商法施行令1条の8の3・4号ハに、そう書いてあるからとしかいえません。

経験則では、国内の所有者数が1000名に及ぶ場合は、売出しが行われた場合に限られます。ですから、この規定は、実務上は、意味を持ちません。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
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