コンプライアンスの真の意味


今日は、号外で、コンプライアンスの実践の話です。

「コンプライアンスは法令遵守ではない」ということは、繰り返しお話しているとおりです。では、具体的に、コンプライアンスとは何なのか、どうあるべきかについてお話します。

コンプライアンスとは何か
コンプライアンスは法令遵守ではない、の真の意味は、法令を遵守して、会社を滅ぼすようではダメだということです。

コンプライアンスの究極の目的は、何でしょうか。「法令遵守ではない」と言っているのですから、会社(役員・社員)に、法令を遵守させることではないことは確かですね。では、何か。コンプライアンスの究極の目的は、会社を風評被害から守ること、レピュテーション・リスクを顕在化させないことです。(リスク・コントロール)

金融商品取引業者等の場合、レピュテーション・リスクは、当局の業務改善命令でもっともよく顕在化します。営業停止のような不利益処分を受けた場合、営業停止により逸失利益よりも、「当局から営業停止を受けた会社」として、評判を落としたことにより生じる逸失利益の方が甚大です。そこで、行政法規としての性格を有する金融商品取引法の業者規制に違反することがないように、会社の経営を行うことが大切になります。

コンプライアンスはどうあるべきか
「金融商品取引法の業者規制に違反することがないようにって、それって、法令遵守しろってことじゃないの?」

違います。法令遵守ではないのです。法令を完全な形で遵守しようとすることは、はっきり言ってバカげています。簡単な話、車が一台も通っていない田んぼのど真ん中にある信号機が赤のとき、あなたは、道路交通法(これも行政法規)違反だからといって、止まりますか?止まる必要はありません。実益がないからです。これに対して、交通量の多い都心の信号機が赤だったら、止まらなければ命の危険がありますから、道路交通法(正確には道路交通法施行令2条1項)に書いてあろうとなかろうと、イヤでも止まるでしょう。

この感覚を会社経営に適用した概念が「コンプライアンス」です。

断定的判断の提供の禁止は、消費者関連法令では、今では常識です。これを会社に徹底的に遵守させようとしたらどうしなければならないでしょうか。誰かが、社員の電話をすべて聞き、メールにはすべて目を通し、顧客訪問をする社員に必ずついていく必要があります。これは、バカげています。そんなことをしないで、社員研修で、顧客に断定的な判断を提供してはダメだということと、その理由をしっかりと教え、あとは、社員の自主性に任せるのが現実的ですし、それで十分です。

やたらと細かい社内規則を作り、実践している会社が見受けられますが、田んぼのど真ん中の信号機を守らせる社内規則は、有害無益です。社員が守れないからです。

厳しすぎる社内規則は、社内規則違反を多く生み出します。守れないのですから社員を責めることはできません。社内規則違反が多くなると、社員に社内規則を遵守しようとする意識が薄れていき、いずれ社員は社内規則を軽視するようになります。厳しすぎる社内規則も、コンプライアンスの失敗の典型的なパターンです。

コンプライアンスの失敗は、社内規則の失敗だけからくるものではありません。たいていは、社員研修が不十分なために、社員に法規制の意味・背景の理解が欠けていることが原因でコンプライアンスは失敗します。社員研修(それも意味のある社員研修に限りますが)は、コンプライアンス活動の中で、最大に重要なアクションです。

コンプライアンスは法令遵守ではない!

の真の意味を理解することが会社経営には大切です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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