特例業務届出者に対する行政処分勧告


証券取引等監視委員会は、特例業務届出者の出資者に適格機関投資家が含まれていなかったとして、当該特例業務届出者に対して行政処分を行うように、金融庁長官に勧告しました。詳細は、こちらをご覧ください。

自己募集と自己運用
投資家から「出資」を受けて、出資金で「事業」を行い、出資者に「配当」する仕組みは、一部の例外を除いて、出資者を集める行為が第二種金融商品取引業、事業を行う(運用する)行為が投資運用業になりますので、仕組みを作った会社は、金融商品取引業者としての登録が必要になります。

「出資」「事業」「配当」の3つがそろうと、金融商品取引業になるというのは、拙著に書いた通りです。

このうち、金融商品取引業者が自ら出資者を集める行為は「自己募集」、自ら運用する行為は「自己運用」と一般的には呼ばれています。

特例業務届出者
自己募集と自己運用が金融商品取引業にならない例外の一つが、特例業務届出者による自己募集と自己運用です。

特例業務届出者は、1名以上の適格機関投資家と49名以下の一般投資家(適格機関投資家以外の投資家)が出資するという要件を満たせば、自己運用と自己募集を、金融商品取引業者の登録を受けなくても、行うことができます。特例業務届出者になるための手続きは、とても簡単で、数枚の届出書類に必要事項を記載して、財務局に届出を行うだけです。

簡易な手続きで事業を行うことができるために、要件である出資者の構成は厳格に遵守されなければなりません。

ここで、信じがたいことが2つ起きます。

一つは、今回の検査指摘事項である、「適格機関投資家がゼロだった」というものです。適格機関投資家であれば誰でも良かったのに、なぜ、ゼロだったのかは、サイトで公表された情報だけからはわかりません。特例業務届出者制度は、お金を合法的に集める隠れ蓑として悪用される可能性がありますので、私は制度自体に反対ですが、私の意見はともかく、どうして、適格機関投資家を1社入れることができなかったのか・しなかったのかがわかりません。

投資の基本
もう一つは、どうして、このファンドに一般投資家である出資者がいたのかです。結局、今回指摘を受けた特例業務届出者は、違法な運用をしていたことになりますが、適法であっても、大切なお金を、どうして出資する人がいるのかわかりません。

株式など相場があるモノに投資する場合、他人を出し抜いて、ずば抜けたリターンを得る方法は、一つしかありません。インサイダー情報を利用する方法です。他にも相場操縦という方法がありますが、インサイダー取引に比べ、相場操縦は成功する確率が高くはありません。

いずれにせよ、インサイダー取引も相場操縦も、日本では違法ですし、そもそもインサイダー情報を入手できる場面は限られますから、結局、他人を出し抜いて高い運用利回りを手に入れることは誰にもできないということです。つまり、相場があるモノは、自分で運用しても、他人に運用を任せても同じだということです。

大切なお金をどうして他人に運用を任せられるのか。時間がないから?投資できる資金が限られているから?もし、「自分よりも上手に運用してくれる(儲けてくれる)人が、世の中にいる」と思っていたら、それは間違いです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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